いばりんぼオオカミのヒミツ
お子様に読み聞かせられるお話を意識しております。
ある森に、とても強そうなオオカミがおりました。
鋭いキバとツメを持った大きな体で、こわい顔をしています。
そしてこのオオカミは困った事に、とってもいばりんぼなのです。
何かあるとすぐに、「オレ様に逆らうと、怖いぞ」と言ってキバを見せます。
そう言われた森の動物たちは、みんな言うことを聞くしかありません。
茂みがガサリと音を立てれば、近くにいたキツネにこう言います。
「おい、ちょっと様子を見てこい」
おいしい木の実がなっている場所を見つけたリスには、こう言います。
「おい、ちょっと行ってオレ様の分を取ってこい」
大きなハチが出たと聞けば、フクロウにこう言います。
「おい、今すぐ追い払ってこい」
オオカミは大きな木のウロにふんぞり返って、ちっとも動きません。
でもこのオオカミには、誰にも言えないヒミツがありました。
実はこのオオカミ、とっても怖がりで臆病なのです。
オオカミが怖がりなんて、格好がつきません。
このヒミツを守るため、オオカミはいつも強がって、みんなにいばり散らしておりました。
ある日、となりの森から大きなクマがやって来ました。
「今日からこの森はオレのナワバリだ。逆らう奴は、こうしてやるぞ」
クマは森で大暴れ。
怯えた動物たちは慌てて逃げ回ります。
「大変だぁ」
「助けてぇ」
クマは丸太を投げつけて言います。
「お前たち、森中の食べ物を持って来い」
みんな困ってしまいました。
その様子をコッソリ見ていたオオカミも、とても困っていました。
「なんてこった。あんな乱暴なクマに、誰も勝てっこないぞ」
動物たちは逃げてばかりで、なかなか食べ物を持って来ません。
とうとうクマは怒ってしまいました。
「オレの言うことが聞けないのか!」
クマが大きな腕を振り上げました。
その先には、逃げ遅れた一匹の子ダヌキがいます。
「あぶない!」
オオカミは飛び出し、クマの腕にガブリ! と噛みつきました。
「いてててて、なんだ、お前は」
クマはブンブンと腕を振って、オオカミを振り払います。
オオカミはヒラリとかわし、今度はクマの足に噛みつきました。
「ここはみんなの森だ。悪さをするな!」
「いてててて、なんて奴だ」
クマはたまらず、元いた森に逃げ帰っていきました。
森の動物たちは大喜び。
「やったぁ、怖がりオオカミが、悪いクマを追い払ったぞ」
「すごい、すごい。もう臆病オオカミとは言えないな」
「ありがとう、オオカミ! もう弱虫じゃないね」
なんと、本当はみんな、オオカミが怖がりな事を知っていたのです。
わざと知らないふりをして、いばっているオオカミを助けてくれていたのです。
恥ずかしくなったオオカミは、今までいばっていた事を謝りました。
そして、もういばらないと約束しました。
ある森に、とても怖がりなオオカミがいました。
何かあるとすぐに、他の動物たちに助けてもらうのです。
でも森のみんなは、オオカミがいざという時はとても強くて、頼りになる事を知っています。
動物たちは、互いに支え合って、今日も元気に暮らしているそうです。