表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖印×妖の共闘戦記―神話乃書―  作者: 愛崎 四葉
第七章 魂を導く乙女達
92/204

第九十一話 黄泉の乙女

「えっと、貴方は……」


「失礼。私は、樹海に住む妖だ。名はない」


 謎の人物が、出迎えてくれたのは、うれしいことなのだが、何と呼べばいいのかが、不明だ。

 綾姫が、戸惑いながらも、問いかけると、謎の人物は、正体を明かす。

 やはり、樹海の住む妖と呼ばれていたようだ。

 だが、不思議な事だ。

 異空間にいるのに、なぜ、樹海に住む妖と言われているのだろうか。 

 しかも、名もなき妖らしい。


「だが、黄泉の乙女とも言われているようだ。魂を黄泉へ導くからそう呼ばれたのかもしれないね」


 謎の人物は、さらに、話を続ける。

 「黄泉の乙女」と呼ばれているという事は、謎の人物は、女性のようだ。

 しかも、冥界へ導くがゆえに、その名で、呼ばれたという。

 それも、噂のようなのだが。


「あ、貴方は、女性なのですね」


「そうだよ。驚いたかな?」


「す、すみません」


 綾姫は、驚きのあまり、声に出してしまう。

 男とも、女とも思える容姿であり、どちらなのか、九十九達も、不明であったからだ。

 話し方で、男ではないかと思っている者もいたようだが。

 しかし、誰が、彼女の事を女だと見抜いたのだろうか。

 ますます、謎が深まるばかりだ。

 彼女は、紳士的に尋ねてみせると、綾姫は、慌てて、謝罪し、首を垂れた。


「いいよ。皆、同じように、驚くから、もう、慣れてしまったよ」


 黄泉の乙女は、微笑みながら、綾姫に語りかける。

 やはり、性別については、判別できないものも居たようだ。

 それゆえに、黄泉の乙女が、女性であると知った時は、大層驚かれたという。

 だが、それでも、その反応を責めることなく、受け入れる彼女は、懐が大きいのだろう。

 紳士的ではあるが、母親のようにも思えてきた。


「黄泉の乙女」


「何かな?」


「こいつらを助けてやってくれねぇか?」


 九十九は、黄泉の乙女に懇願する。

 柚月と朧を助けてほしいと。

 そのために、彼らは、ここへ来たのだ。

 黄泉の乙女は、柚月と朧に歩み寄り、彼らの頬に振れ、目を閉じる。

 魂を感じ取っているかのようだ。

 黄泉の乙女は、ゆっくりと目を開けた。

 何かを察したように。


「魂が傷ついているようだね。特に、この子は」


「朧をかばったからだ。だから、柚月は……」


 黄泉の乙女は、二人の魂が傷ついていることを見抜く。

 特に、柚月の方が重傷のようだ。

 光焔は、黄泉の乙女に説明する。

 あの大戦時に、目の当たりにした光景を思い返すように。

 柚月は、朧を守るように静居の前に立った。

 静居が、夜深の悲しみを柚月は、もろに受けている。

 ゆえに、柚月は、朧よりも、重傷であった。

 黄泉の乙女の様子をうかがっていた光焔は、うつむき始める。

 彼女の力を持ってしても、柚月を救えないのかと推測してしまったようだ。

 だが、光焔の心情を察したのか、黄泉の乙女は、優しく光焔の頭を撫でた。


「光焔、安心して。彼らは、私が助ける。約束するよ」


「うむ」


 黄泉の乙女は、光焔に約束する。

 自分が、二人を助けると。

 光焔は、静かにうなずいた。

 彼女の事を信じているようだ。

 それは、九十九達も同じ。

 彼女が、何者なのかは、まだ、不明だ。

 だが、彼女の力を感じ取る事はできる。

 妖だと彼女は、名乗ったが、普通の妖ではない。

 何か、特別な力を持った妖であると察する。

 それゆえに、黄泉へ導くことができるのであろう。


「さて、まずは、鳳城朧の魂を癒すとしよう」


「頼む」


 黄泉の乙女は、朧の魂から、癒そうと決意する。

 千里は、彼女に朧の事を託した。

 黄泉の乙女は、温かく、優しい光を発動する。

 その光は、とても小さい。

 両手で隠れてしまうほどだ。

 だが、その光は、朧の中に静かに入っていき、朧の体から光が発せられる。 

 どうやら、その光によって、魂が癒されているようだ。

 光が止むと、朧は目をキュッと閉じ始めた。

 ついに、朧は、意識を取り戻したのだ。


「ん……」


「朧!」


 朧は、ゆっくりと目を開ける。

 まだ、意識が、ぼんやりとしている。

 だが、彼が、目を開けた瞬間、瑠璃は、朧の名を呼び、喜んだ。

 綾姫達も、朧の元へと駆け寄る。

 まるで、記憶を取り戻したかのように。


「あ、私達……」


「そうよ、なんで、忘れてしまってたのかしら。朧君は、私達にとって大事な仲間なのに……」


「それも、静居と黄泉の神の仕業だよ。自分を責める必要はない」


 瑠璃は、朧に関する記憶を取り戻したことに気付く。

 綾姫が、ずっと、大事だった彼をどうして、忘れてしまったのかと、嘆くほどに。

 自分を責める綾姫達に対して、黄泉の乙女は、優しく語りかける。

 全ては、夜深の神と静居の仕業なのだと。

 だから、綾姫達のせいではないのだと。

 朧は、目を瞬きさせ、あたりを見回す。

 瑠璃は、目に涙を浮かべている。

 心配させてしまったようだ。

 だが、状況を把握できていないようだ。


「俺、どうして……。姉さんたちも、なんで……」


「魂が、傷ついていたんだ。だから、ずっと、眠ってた。お前達の魂を癒すために、ここへ来たんだ」


「椿達がここにいるのは、妖に転生したからだ。俺達を支えるために」


「そうだったのか」


 朧は、問いかける。

 自分の身に何があったのか。

 なぜ、ここにいるのかを。

 そして、なぜ、椿達がいるのかを。

 千里は、朧に告げる。

 魂が傷ついていたがために、眠りにつき、魂を癒すために、ここにいるのだと。

 大体、状況を把握した朧。 

 本当に、心配をかけてしまったのだと、感じ取っていた。


「だが、彼女が、助けてくれた」


「彼女?」


 千里は、続けて話す。

 朧を助けてくれたのは、目の前にいる彼女だと。

 朧は、千里から降り、冥界の乙女は、朧に歩み寄る。

 優しく、微笑みながら。

 朧も、彼女が、女性か、男性かは、判断できなかったようで、戸惑いながらも、理解する。

 彼女は、女性であり、彼女のおかげで、自分は、救われたのだと。


「ありがとうございます。でも、どうやって……」


「私は、光の神から神の力をほんの少し授かったんだ。だから、魂を導くことも、転生させることも、癒すこともできる。それだけだよ」


「光の神の力を……」


 朧は、黄泉の乙女に、感謝の言葉を告げるが、気になっていたことがあったようだ。

 それは、どうやって、魂を癒したか。

 朧は、黄泉の乙女が、妖である事は見抜いた。

 だが、普通の妖とは違う事も。

 と言っても、妖が魂を癒すことができるとは、思いもよらなかったようだ。

 黄泉の乙女は、ようやく、自身について、詳しく説明する。

 光の神の力を授かったがゆえに、なせることだったのだ。

 神のごとく。

 光焔は、驚愕し、呟く。

 まさか、光の神が、関与しているとは、思ってもみなかったようだ。


「さて、次は……」


 黄泉の乙女は、柚月に歩み寄る。

 柚月は、今も眠り続けている。

 朧は、柚月の顔を覗き込むように見ていた。

 もしかしたら、朧も、柚月に関する記憶を失っているのかもしれない。

 なぜなら、柚月と朧は魂の共存がなされていない可能性があるからだ。

 黄泉の乙女は、柚月の頬に、そっと触れた。


「鳳城柚月の、魂を癒すとしよう。私の全ての力を使って」


「え?」


 黄泉の乙女は、衝撃的な言葉を口にする。

 なんと、自身の全ての力を使って、柚月をの魂を癒すというのだ。

 朧達は、驚愕する。

 全ての力とは、いったい何なのだろうか。

 もし、全ての力を使用したら、彼女は、どうなってしまうのであろうか。


「彼の魂は、君より、ひどく傷ついている。だから、全ての力を使わないと、癒すことはできないんだよ」


 柚月の魂は、朧よりも、重傷だ。

 ゆえに、先ほどのような力では、魂を癒すことは不可能に等しいのだろう。

 だからこそ、黄泉の乙女は、自分の力をすべて使う事で、柚月の魂を癒そうとしているのだ。

 だが、それは、自身を犠牲にすると、告げているようにしか聞こえなかった。


「全ての力を使ったら、貴方は、どうなるの?」


 瑠璃は、黄泉の乙女に問いかける。

 もし、全ての力を使用したら彼女は、どうなってしまうのか、気がかりでならない。

 もちろん、柚月には、目覚めてほしい。

 だが、朧達は、彼女の身を案じていた。


「……わからない。でも、助けるよ。そのために、私は妖に転生したのだからね」


「え?」


 もし、全ての力を使用したらどうなってしまうのかは、彼女自身もわからないようだ。

 だが、彼女の決意は固い。

 なぜなら、この時の為に、妖に転生したのだから。

 戸惑いを隠せない朧達。

 彼女が、何者なのかは、ますます、不明だ。

 黄泉の乙女は、目を閉じ、吸い込まれるように、柚月の中へ入っていった。



 柚月は、真っ白な世界の中で、宙に浮いたまま、目を閉じている。

 夢の中のようだ。

 柚月は、未だ、眠り続けているのだろう。

 だが、その時であった。


「柚月、起きなさい」


「ん……」


 黄泉の乙女は、柚月に語りかける。

 まるで、母親のようだ。

 柚月は、ゆっくりと目を開け、地に降り立つ。

 だが、まだ、体が浮いている感覚がしている。

 柚月は、目を瞬きさせると、目の前に、黄泉の乙女が、立っているのを目にした。


「ようやく、目覚めたようだね」


「あ、貴方は?」


「私は、樹海に住む妖、または、黄泉の乙女と呼ばれている者だ。ようやく、会えたね……柚月」


 黄泉の乙女は、柚月に微笑み、語りかける。

 柚月は、戸惑いながらも、彼女を見ていた。

 なぜ、自分の名前を知っているのかと疑問を抱きながら。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ