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聖印×妖の共闘戦記―神話乃書―  作者: 愛崎 四葉
第七章 魂を導く乙女達
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第八十七話 幻想的な樹海

 九十九達は、樹海を見回す。

 木々が入り組み、奥が見えない。

 そのまま、入り込めば、迷ってしまいそうだ。

 樹海は不気味だと言う説もあったらしいが、どちらかと言うと幻想的に見ていた。


「綺麗な場所ね……」


「ここだけ、別世界みたい」


「うむ」


 綾姫と瑠璃は、その幻想的な景色に見とれているようだ。

 美しすぎて見入ってしまいそうに。

 別世界に迷い込んだ錯覚に陥っているのだろう。


「九十九、千里。柚月と朧は、どうだ?」


「ぐっすり眠ってるよ」


「こっちもだ」


 光焔は振り返る柚月と朧の様子を九十九と千里にうかがう。

 九十九と千里は、柚月と朧を背負っているようだ。

 二人は、眠ったままだと答える。

 だが、その寝顔は、美しく、凛々しい。

 安堵しているかのようだ。

 今だけは、眠ってほしいと思う反面、早く、目覚めてほしいと願ってもいる。

 この矛盾した願いを抱え込んだ九十九達。

 それほど、彼らを大事に思っているのだろう。


「それで、樹海に住む妖や夢で会った者はどこにいるか知ってるですかい?」


「それが、わからぬのだ……。すまぬ……」


 高清は、光焔に樹海に住む妖、または、夢で会った人物がどこにいるのか尋ねるが、わからないらしい。

 光焔は、申し訳なさそうに謝罪した。

 力になれない事を悔やんでいるのだろう。

 もちろん、高清は、彼を咎めるつもりはない。

 ここまで、導いてくれただけでも、十分であったからだ。


「まぁ、詳しい事を知ってる奴なんて、そういないだろうからね」


「うむ、わしらで、探せばよい」


「うむ、ありがとう」


 和泉と春日が、光焔を励ます。

 樹海の事は、知っている者は、少なかったのだ。

 樹海に住む妖や、夢で会った人物がどこにいるか知らないのもうなずけるのだろう。

 ここまで来たら、探すだけだ。

 光焔は、うなずき、お礼を言った。


「ここは、手分けして探すってのは、どうっすか?」


「その方がいいかもしれませんね」


「ですが、本当に、大丈夫でしょうか?迷ったりしませんの?」


 しかし、問題は、ここからだ。

 この入り組んだ樹海の中をどうやって進むかだが、透馬と夏乃は、手分けして探したほうがいいのではと提案する。

 その方が効率がいいからであろう。

 だが、初瀬姫は、心配しているようだ。

 この入り組んだ樹海の中を歩けば、たちまち、迷ってしまうのではないかと。

 それほど、奥が見えない。

 ゆえに、初瀬姫は心配したのだ。

 九十九達は、思考を巡らせる。

 どちらの方が、安全かつ、早く、探せるのか。

 その時であった。


――光焔。


「この声は!?」


 どこからか声が聞こえる。

 それも、こだまする様に。

 九十九達は、誰の声がするかわからずに、あたりを見回す。

 その声の主は、光焔が夢で会ったあの謎の人物だ。

 光焔は、その声に気付き、あたりを見回した。

 どこかにいるのではないかと期待して。

 だが、見回しても、誰もいなかった。

 一体、どこから声が聞こえるのだろうか。


「どうしたでござるか?光焔殿」


「声の主を知っているのですか?」


「うむ、夢で会った者の声がするのだ!」


「え?」


 要、美鬼が光焔に問いかける。

 この声に主が誰なのか。

 光焔が、答えると九十九達は、驚愕する。

 まさか、思ってもみなかったのであろう。

 光焔と会った者が、語りかけてくるとは。


「へぇ。確かに、男性の声にも聞こえるし女性の声にも聞こえるね~」


「本当、不思議な感じがするね」


 思い返せば、確かに、中性的な声だ。

 男のようにも聞こえるし、女のようにも聞こえる。

 だが、光焔の名を呼ぶとき、どこか、優しい感じがした。

 まるで、友のように、家族のように。

 居心地がいいと思ってしまうほどだ。

 ゆえに、柘榴は、不思議だと感じたのだろう。


――彼らを連れてきたようだね。


「うむ」


――私がどこにいるか知りたいかな?


「知りたい。教えてほしいのだ」


 謎の人物は、光焔に問いかける。

 どうやら、彼らの事を見ているようだ。

 それも、遠くから。

 教えてほしいかどうかを問いかけたが、意地悪をしているわけではない。

 そういう口調なのだろう。 

 九十九達は、そう感じていた。

 なぜなら、優しさが含まれているように思えてならなかったから。

 光焔は、問いかける。

 会いたいのだろう。

 そして、柚月と朧を助けたいと願っているのだ。


――私は、異空間にいる。


「異空間?」


――そうだよ。こことは、別の世界にいるといった方が正しいかな。


 謎の人物は、答えた。

 だが、異空間と言われても、ピンと来ない。

 樹海にいるわけではなさそうなのだが……。

 光焔が、首をかしげて問いかけると、謎の人物は、説明し始める。

 どうやら、九十九達は、別の世界、いや、次元にいると言っているのだろう。

 深淵の界のような世界なのかもしれない。

 ゆえに、謎の人物に会うのは、容易ではなさそうだ。


「どうすれば、会えるのだ?」


――この先に樹海の乙女と呼ばれる三人の娘たちがいる。彼女達に会えば、異空間へと導いてくれるはずだよ。


「樹海の乙女……」


 光焔が、尋ねると謎の人物は答えてくれる。

 どうやら、樹海の乙女と呼ばれる三人の娘に会うことで、道は開かれるようだ。

 彼女達が、樹海と異空間を繋げてくれるのであろう。

 まずは、彼女達を探すしかなさそうだ。

 しかし、彼女達は、樹海のどこにいるのだろうか。

 それに、彼女達は、どういった姿をしているのだろうか。


――どこにいるかは、私にも分らない。けど、必ずいるはずだ。探してごらん。彼女達がどんな姿をしているのか、君達ならきっとわかるはずだよ。


「うむ。わかった」


 謎の人物は、説明はしてくれるものの、詳細までは語らない。

 まるで、自分達を試しているかのようにも思えてくる。

 それでも、方法を教えてくれるだけでもありがたいところだ。


――気をつけてね。樹海は、いくつもの幻に包まれてる。幻にとらわれてはいけないよ。


「うむ。ありがとうなのだ!」


 謎の人物は、最後に、忠告する。

 どうやら、一筋縄ではいかないようだ。

 樹海が幻に包まれているというのだ。

 つまりは、幻の術がかけられているという事なのだろう。

 意味深な言葉を告げるだけで、多くは語らない。

 だが、それだけでも、十分だ。

 光焔は、謎の人物に感謝した。

 すると、謎の人物の声が聞こえなくなる。

 必要な情報を九十九達に、与えたからであろう。


「これで、行先はわかったな」


「うむ。だが、どこにいるかはわからないようだ」


 透馬は、嬉しそうに語りかける。

 だが、樹海の乙女達については、光焔でさえも、知らない。

 ゆえに、探すのは、一苦労と言ったところであろう。

 あまり、時間をかけられないため、光焔は、うつむいてしまった。

 だが、九十九が、光焔の頭を撫でる。

 いつものように、不器用に。


「皆で探せばいいだけだ」


「ああ。そうだな」


 九十九と千里は、励ます。

 目的が不明なわけではない。

 どうすれば、謎の人物に会えるかは、わかっている。

 ならば、知恵を絞って、探しだせばいいだけの事だ。

 二人に励まされた光焔は笑みを浮かべて、うなずく。

 改めて決意したのであろう。


「とりあえず、皆で行ったほうがいいわね」


「うん。幻にとらわれないように」


 手分けして探すかどうか、悩んでいた九十九達であったが、全員で行動したほうがいいと綾姫と瑠璃は、判断した。

 謎の人物が残した幻にとらわれないようにと言う言葉が引っ掛かっているようだ。

 忠告するほどだ。

 幻にとらわれたら、幻から抜けられない危険性もある。

 ゆえに、綾姫達は、全員で進んだほうがいいと判断したのであった。


「よし、行くぞ!」


 九十九達は、樹海へと入っていった。



 やはり、樹海は入り組んでいる。

 少しでも遅れたら迷子になってしまってもおかしくはない。

 しかも、先へ進んでも、樹海の乙女達は見当たらないのだ。

 やはり、この妖の樹海は、一筋縄ではいかないようだ。


「やっぱり、簡単には、見つからねぇな」


「そうみたいだな」


 しばらく、歩き続けた九十九達であったが、彼女達を見つけるのに、時間がかかると推測する。

 幸い妖達に遭遇しないのが唯一の救いであろう。

 おそらく、何らかの結界が張られているようなのだ。

 謎の人物が張ったのか、樹海の乙女が張ったのかは、定かではないが。


「幻ってどんなのが来るのかしら……」


「わからない。どうして、幻がかけられてるのかも……」


 幻について、思考を巡らせる綾姫と瑠璃。

 やはり、懸念しているようだ。

 当然なのかもしれない。

 どのような幻なのか。

 それとも、もう、幻にとらわれているのかは、不明だ。

 綾姫達は、不安に駆られた。


「ま、俺達なら、問題ねぇよ」


「だといいんだがな……」


 九十九は、幻にとらわれるわけがないと言い切るが、千里も、不安に駆られているようだ。

 幻がどのような類なのかが、わかれば、まだ、対処できるのだが。

 思考を巡らせながら、先に進む九十九達。

 だが、その時であった。


「っ!」


 突如、九十九と千里が、目を見開いて、立ち止まる。

 何かを見つけたようだ。

 樹海の乙女なのだろうか。

 光焔は、二人の様子をうかがうが、二人は、体を硬直させたままだ。

 二人は、何を見たというのだろうか。


「九十九、千里、どうしたのだ?」


「あれは……」


「うそ……だろ?」


 光焔は、尋ねるが、九十九も千里も、答えようとしない。

 なぜなら、彼らが、目にしたのは、椿、茜と藍であったからだ。

 もう、この世にいないはずの愛しい者達が。


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