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聖印×妖の共闘戦記―神話乃書―  作者: 愛崎 四葉
第七章 魂を導く乙女達
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第八十三話 空戦

 妖が光城に迫っている。

 夏乃の言葉を聞いた綾姫は、驚愕し、慌てて柚月の部屋を飛び出す。

 そして、九十九達がいる大広間へと入った。


「綾姫!夏乃!」


 光焔が、綾姫と夏乃に駆け寄る。

 その表情は深刻そうだ。

 当然であろう。

 光城へ妖が攻め入ろうとしたのは、初めてだ。

 いや、攻め入る事など不可能だったのだ。

 なぜなら、光焔が、結界を張っていたから。

 しかも、居場所がわからないように、姿まで消して。

 だが、それすらも看破されてしまったのだろう。

 それほど、夜深の力が強くなってしまったのだ。

 死掩達が、復活してしまった事により。

 綾姫は、格子窓から、外を見る。

 すると、数十匹の妖達が、迫ろうとしていた。


「そんな、あんなに……」


「さすがに、まずいですね……」


 妖達の大群を目にした綾姫は、愕然とする。

 予想以上の数だったからであろう。

 夏乃も、困惑した様子だ。

 危機を感じている。

 もし、ここまで、到達すれば、一気に、攻め入られてしまうだろう。


「ど、どうすればいいんですのよ……」


「こりゃあ、参ったね……」


 初瀬姫も、和巳も、焦燥に駆られている。

 城での戦いは、不利だからだ。

 光城から出る事は不可能。

 景時のような飛び道具、または、春日や要のように飛べる者でなければ、戦えない。

 ゆえに、光焔は、結界を張っていたのだ。

 だが、それも、効果がなくなったとなると、彼らは、追い詰められた状況であった。

 柘榴も、こればかりは、判断がつかない。

 どう戦えばいいのか……。

 だが、その時だ。

 九十九と千里が前に出たのは。


「つ、つくもん?千里?」


「お前らは、中に入ってろ。ここは、俺達がやる」


「なに言ってんだよ!あれだけの数、二人で……」


 九十九は、柘榴達に告げる。

 彼は、千里とたった二人で、妖を退けようとしているようだ。

 だが、透馬は、二人の身を案じ、反論する。

 どう考えても、二人だけで、あの大群を退ける事は、容易ではない。

 ましてや、あれだけとは言い切れない。

 静居の事だ。

 妖達を九十九達が、倒したところで、新たな妖達を召喚するつもりであろう。

 そうなれば、九十九達も、体力を奪われるだけであり、解決策は見当たらなかった。


「案ずるな。俺は、龍になれる。九十九も、九尾の炎があれば、一気に焼き尽くせるはずだ」


 千里は、柘榴達を安心させるために、告げる。

 自分は龍の姿に戻り、九十九は、彼の背に乗り、九尾の炎で一掃するつもりだ。

 もちろん、千里も、闇の力を発動し、妖達を一気に討伐するつもりでいる。

 一気に数を減らすことは可能であろう。

 これなら、光城に攻め入ることはない。

 だが、それでも、綾姫達の不安は、ぬぐいきれなかった。


「わらわも行くぞ」


「光焔」


「わらわも、戦う。少しくらいなら、役に立てるはずだ」


 光焔が、九十九と千里の前に出て、戦うことを宣言する。

 彼も、光の力を発動できる。

 微弱ではあるが、妖達を討伐する事は可能なはずだ。

 光焔は、そう考えているのだろう。

 少ししか、役に立たないのを悔しく思いながら……。

 だが、九十九は、大きな手で、光焔の頭をわしわしと撫でた。

 不器用ながらも。


「十分、戦力になるっての!」


 九十九は、にっと笑みを浮かべる。 

 ありがたい事だ。

 光焔が、いてくれるだけで、心強い。

 光焔は、嬉しそうにうなずいた。

 彼も、守りたいのだ。 

 柚月と朧の為にも。


「あ、あっしらも、行くでごぜぇやす」


「拙者と春日は、空を飛べるでござる」


「二人だけに、背負わせぬわ」


 高清、春日、要が、出撃すると宣言する。

 春日と要は、妖に変化することができる。

 もちろん、妖人の姿に戻ることができるが、妖に変化すれば、高清を乗せて飛ぶことができるのだ。

 妖の状態でも、十分な戦力となるだろう。


「ありがとな。というわけだ。ここは、俺達が、守る。お前らは、あいつらが、入ってこねぇように守ってろ」


 九十九は、綾姫達に指示する。

 もちろん、中に入らせるつもりは一切ない。

 だが、万が一と言う事もある。

 そのため、綾姫達に、中を任せることにしたのだ。

 綾姫達なら、柚月と朧を守ってくれると信じて。


「行くぜ!」


「ああ!」


 九十九達は、光焔の力で、外に出た。

 すると、千里が竜の姿に戻り、春日と要が、妖の姿、空蘭と海親の姿に戻り巨大化する。

 九十九が、千里の背に、光焔が空蘭の背に、高清が海親の背に乗り、妖達の大群へと突っ込むように、向かっていった。


「おらぁっ!」


 先陣を来たのは、九十九だ。

 九十九が、九尾の炎で、妖達を焼き殺していく。

 やはり、広範囲の威力だ。

 だが、綾姫達の予想通り、静居と夜深は、すぐさま、妖達を召喚し、妖達は、九十九に襲い掛かった。

 だが、光焔が、光を発動し、千里も闇の力を発動して、妖達を一気に消していく。

 高清は、妖達の背に飛び移り、爪で、妖達を貫きながら、他の妖へと飛び移っていく。

 海親は、高清が、落ちないように、高清の下を通りながら、尻尾で妖達を薙ぎ払い、空蘭は、空鳥の空鳥乃天を発動し、空間転移を行いながら、妖達の攻撃をいとも簡単に、かわし、妖達を吹き飛ばしていった。

 それでも、静居と夜深は、妖達を召喚していく。

 これでは、キリがなかった。


「まだ、来るのかい!」


「まずいね……」


 各々、格子窓のそばで待機していた和泉と景時は、息を飲む。

 これでは、九十九達の体力が尽きてしまう。

 かといって、自分達には、光城で戦う手段がない。

 何もできずに、九十九達が、倒れるのを黙ってみるしかできないのかと、こぶしを握り、悔しさをにじませた柘榴達であった。

 それでも、九十九達は、戦い続ける。

 意識が途切れそうになろうとも、体中切り裂かれそうになろうとも。

 光城で、眠っている柚月と朧を守り抜くために。


「ちっ。多いな」


「ああ、だが、守り通すぞ!」


「おうよ!」


 次第に、数の多さに圧倒される九十九。

 だが、千里の意思は固く、再び、妖の群れに突っ込んでいく。

 妖達を殲滅するために。

 九十九も、気合を入れなおすように、うなずき、再び、九尾の炎を発動し、妖達を焼き殺した。

 だが、妖達は、増えていくばかりだ。

 終わりが見えないほどに。


「このままじゃ……」


 九十九達を見ていた瑠璃は、不安に駆られ、呟く。

 このままでは、九十九達が、いずれ、殺されてしまうと恐れを抱いたのだろう。

 目をきつく閉じ、葛藤する瑠璃。

 だが、その時だ。

 ある光景が浮かんできたのは。

 それは、名も知らない青年。

 同じ銀髪をなびかせ、太陽のように微笑む青年の姿を。

 はっとしたように、急に目を開けた瑠璃。

 そして、瑠璃は、向きを変え走り始めた。


「瑠璃!」


「どこへ行くのです!」


 柘榴と美鬼は、慌てた様子で、瑠璃を呼び止める。

 予想していなかったのだろう。 

 瑠璃が、突然、走り始めるなど。

 瑠璃は、振り向く。

 その表情は、何かを決意したかのようで、真剣なまなざしを柘榴達に向けていた。


「私も戦う」


「だが、どうやって……」


「屋根に登ればいい。そこなら、戦える」


 瑠璃は、宣言する。

 自分も戦うと。

 だが、戦うすべは見つかっていない。

 空を飛ぶことができなければ、戦えないのだから。

 戸惑う柘榴に対して、瑠璃は、指を指して答える。

 それも、上に向かって。

 なんと、瑠璃は、入口から外に出て屋根の上に登って戦えばいいと提案したのだ。


「なに言ってんだよ、危険だって!」


「駄目です、瑠璃!」


 透馬も、美鬼も、瑠璃の提案に反対する。

 危険だからだ。

 もし、妖が襲い掛かって来たら。

 瑠璃は、屋根から落とされる可能性だってある。

 そうなれば、地面に真っ逆さまだ。

 それに、妖が、来なければ、妖に攻撃することすら不可能に等しい。 

 ゆえに、危険すぎる。

 柘榴達は、瑠璃の身を案じ、提案を受け入れなかった。

 しかし……。


「でも、守りたい。そうじゃなきゃ……」


「彼は、目覚めない。そう思っているね」


「うん」


 瑠璃は、意思を変えなかった。

 その理由は、朧の為だ。

 もし、光城が、襲われることになれば、朧にも危険が及ぶ。

 柚月も、命を落としてしまうだろう。

 瑠璃は、彼を守るために、戦おうとしていたのだ。

 綾姫は、瑠璃の気持ちを理解していた。

 なぜなら、自分も同じ気持ちであったから。


「私も同意見よ」


「綾姫様!」


 綾姫は、瑠璃の提案を受け入れる。

 それを夏乃が、承諾するはずがなかった。


「あの彼らだけに、背負わせるわけにはいかないでしょ?」


「やるしかなさそうだね」


 綾姫は、説得を試みる。

 九十九達だけに、背負わせてはならないと。

 ここを乗り切らなければならない。

 柘榴は、いくら止めたところで、彼女達の意志は変わらないと察し、承諾した。

 自分達も、戦うことを決意して。


「出撃するよ!」


 柘榴は、先陣を切って、走り始める。

 綾姫達も、彼についていった。



 九十九達は、妖達と戦いを繰り広げている。

 だが、妖達の数は、一向に減らない。

 倒しても、倒しても、静居が召喚してしまうからだ。


「くそっ、このままじゃ……」


 千里は、終わりが見えない戦いに対して、舌打ちをし始める。

 苛立ちを隠せず。

 それほど、ほんろうされているからだ。

 もはや、余裕すら見えない。

 追い詰められる一方だ。 

 九十九は、何度も、九尾の炎を発動するが、妖は、増えるばかりだ。

 彼らの体力も、次第に削られていく。

 息を切らし始めた。

 その時だ。

 妖達が、九十九の九尾の炎をかいくぐり、光城に向かってしまったのは。


「あ、待て!そっちに行くな!」


 九十九は、とっさに、振り返り、九尾の炎を発動するが、妖は、逃げ切ってしまう。

 もうすぐ、光城に妖が到達する。

 千里は、妖に追いつこうと速度を上げた。

 だが、その時だ。

 桜の花びらの刃や水の札が、宙を舞い、妖を切り刻んだのは。


「お、お前ら……」


「来てくれたのだな!」


 九十九達は、希望を取り戻したかのように、表情が明るくなる。

 なんと、綾姫達が、屋根の上に乗り、妖を討伐したのであった。


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