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聖印×妖の共闘戦記―神話乃書―  作者: 愛崎 四葉
第六章 聖妖大戦
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第七十三話 獣じみた男と鬼の少年

 戦いは、激しさを増している。

 静居は、聖印一族を向かわせたが、依然として、互角と言ったところであろう。

 これには、静居も、予想外のようだ。

 戦力を見誤ったのだろう。

 将軍達の実力は、計り知れない。

 そのはずなのだが、静居は、冷静だ。

 焦燥に駆られた様子もない。

 まだ、何か、秘策があるというのだろうか。


「さて、そろそろ、頃合いかもしれんな」


 静居は、様子をうかがっていたが、ふと、笑みをこぼし始めた。

 やはり、何か、企んでいるようだ。


「夜深、次の指示を」


「とうとうね。わかったわ」


 静居が、夜深に告げる。

 指示をしろと。

 夜深は、妖艶な笑みを浮かべ、まずは、深淵の鍵の力を発動させる。

 深淵の門を完全に閉じるためだ。

 柚月達を閉じ込めようとしているのだろう。

 深淵の鍵の力が発動されたのを感じ取った夜深は、笑みを浮かべたまま、指を鳴らし始める。

 すると、光が空へと放たれ、爆発した。

 何か、合図を送ったようだ。

 その光を見上げた静居は、笑みを浮かべていた。

 まるで、自分達が、勝利すると確信を得ているように。


「ねぇ、ボク達は、まだなの?」


「ハヤク……アバレタイ……」


「そうですね。あれが、終わってから暴れてもらいましょうか」


 少年は、静居の前に出て、ふくれっ面で、駄々をこねるように尋ねる。

 獣じみた男も、ゆっくりと静居の前に立ち、急かすように呟く。

 待ちきれないようだ。

 自分達も、暴れたいと思っているようだ。

 だが、静居は、まだ、彼らに指示を出さない。

 準備が整ってから、彼らを戦場に投入させるようであった。



 空で光が爆発した事に気付いた両軍の隊士達は、空を見上げている。

 何が、起こったのかと思考を巡らせながら。

 藤代も、空を見上げていた。

 ただ、呆然と。


「……」


「と、藤代将軍?」


 隊士達は、おずおずと尋ねる。

 どうしたのだろうか。

 あの光が爆発した意味を藤代は、知っているのではないかと考えたようだ。 

 だが、藤代は、隊士達に背を向け、そのまま、引き下がり始めてしまった。

 

「ど、どちらへ、向かわれるのですか!?」


「術の準備に入ります。君達は、このまま、戦いを続けてください」


「え?」


 藤代が、無言のまま、下がり始めてしまい、隊士達は戸惑い始める。

 このまま、逃げてしまうのではないかと不安に駆られて。

 だが、藤代は、予想外の言葉を口にする。

 術の準備に入るというのだ。

 やはり、彼は、あの光が爆発した意味を悟ったらしい。

 対抗するために、術を発動するつもりなのだろうか。

 しかし、彼は、何を知ったのだろう。

 なぜ、自分達に、告げてくれないのだろうか。

 困惑する隊士達であったが、藤代は、目を閉じ、集中し始める。

 準備に取り掛かってしまったようだ。

 そうこうしているうちに、敵軍の隊士達が、再び迫っている。

 もはや、自分達だけで乗り切るしかなかった。


「お、おおおおおおっ!!」


 隊士達は、斬り込むように向かっていく。

 ここからは、藤代の力なしで、乗りきらなければならない。

 正直、震えそうになる。

 なぜなら、今まで、藤代のおかげで、生き延びることができたと言っても、過言ではないからだ。

 その恐怖を強引に押しのけるように、隊士達は、雄たけびを上げながら敵軍と戦闘を始めた。



「ねぇ、静居、そろそろかなっ!」


「さあな」


 少年は、無邪気に、跳ねながら静居に問いかける。

 静居は、少年に見向きもしないで、返答した。

 少年の事をうっとうしいと思ってはいないようだが、極力、淡々とした返答を繰り返す静居。

 彼を冷たくあしらうように。

 それでも、少年は、気にも留めていない。

 自分達が、戦争に介入で斬る時を今か今かと待ちわびていた。

 だが、その時だ。

 少年が、何かに気付き、空を見上げたのは。


「ねぇ、静居、あれ、何?」


 少年は、指を指し、静居に尋ねる。

 静居も、夜深も、眉をひそめ、空を見上げた。

 彼らの目に映ったのは、空巴、泉那、李桜が、静居の元へ向かっている様子だ。

 ついに、神々が、大戦に身を投じたのだ。


「ちっ。突破したか。夜深!」


「わかってるわよ!」


 静居は、苛立ったように、舌打ちをし、夜深に指示をする。

 空巴達が、戦場に姿を現さなかったのは、静居と夜深が、仕掛けていたからのようだ。

 夜深は、空巴達を迎え撃つべく、神の姿に戻り、空を飛び始め、一瞬のうちに、空巴達と激突し始める。

 神々の激突により、大地が揺れ始める。

 まるで、天変地異が起こったかのようだ。

 それほどの衝撃を与えたのだろう。

 ただ、神々が激突したというのに。

 夜深は、空巴に無の力で切り刻む技・天下無双(てんかむそう)を発動しようとするが、泉那が、水鏡を出現させ、幻を生み出して貫く技・明鏡止水(めいきょうしすい)を、李桜が、桜の花が渦を巻き、敵を取り囲んで攻撃する技・百花繚乱(ひゃっかりょうらん)を繰り出したため、とっさに、引き下がった。


『ふふふ、私の領域を突破で来たのね。やっと』


『見くびらないでもらいたいな。私達は、神だぞ?』


『私より、格下のね』


 三対一であっても、余裕の笑みを見せている夜深。

 しかも、空巴達の事を格下と罵って。

 空巴が、空気を刃にした技を次々に繰り出す技・天空海闊(てんくうかいかつ)を発動する。

 夜深は、それをあっさりと、かわすが、続けて、泉那と李桜が、攻撃を仕掛ける。

 これでは、回避も間に合いそうにない。

 夜深は、とっさに、天下無双を発動し、空巴達の技を相殺させた。

 それでも、夜深は、焦った様子を見せない。

 よほど、空巴達に勝つ自信があるようだ。


「いいの?光の神の下僕が来ちゃったよ?」


「……本来なら、夜深だけで、事足りるのだが、我が軍の真の力を見せねばなるまいな。あの神々共にも」


 少年が、無邪気な表情で静居に問いかける。

 夜深を心配しているそぶりを全く見せない。

 だが、少年は、あの戦いに混ざりたいようだ。

 夜深の実力なら問題ない事を知っていながら。

 静居も、夜深が、空巴達に後れをとることなどあり得ない事は、わかっている。

 だが、彼らは、知らない。

 まだ、静居軍の真の力を。

 静居は、獣じみた男の前へと立ち、獣じみた男は、静居を見下ろした。


「あ奴らの相手を頼めますか?」


「……ワカッタ」


 静居が、獣じみた男に懇願する。

 いよいよ、彼を戦いの場に、向かわせようとしているようだ。

 しかも、撫子の元へではなく、空巴達の元へと。

 この男なら、神々と互角に渡り合えると思っているのだろうか。

 獣じみた男は静かにうなずいた。


「お願いしますよ。父上」


 静居は、獣じみた男に背を向ける。

 しかも、彼の事を「父上」と呼んで。

 この男は、静居の肉親なのだろうか。

 静居に全く似ていないというのに。

 少年は、嬉しそうに、獣じみた男の肩に乗る。

 彼も、戦いの場に向かうようだ。

 おそらく、獣じみた男を制御するためであろう。


「いっくよぉ!」


 少年が、笑みを浮かべて、空へと指を指す。

 すると、呼応するように獣じみた男が、唸り声を上げながら、跳躍する。 

 もはや、人間とは思えない。

 本当に、獣や妖のようだ。

 獣じみた男は、神々に突進するように向かっていった。



 夜深は、空巴達と死闘を繰り広げている。

 だが、珍しく劣勢を強いられているようだ。

 やはり、三対一では、不利なのだろうか。


『ちっ!』


 夜深が、苛立つように舌打ちをし、後退した。


『いくら、貴方でも、私達、三人を相手では、苦戦するようですね』


『さあ、覚悟しなさい!』


 追い詰められた夜深に対して、容赦なく、迫っていく空巴達。

 ここで、彼女を殺そうとしているようだ。

 この大戦の要となっているのは、間違いなく彼女だ。

 夜深を消滅させれば、大戦に勝利できると言っても過言ではないだろう。

 静居は、夜深の力で、聖印京を掌握したのだから。


『驕るな!』


 夜深は、怒りを露わにして、形相の顔で、構える。

 彼らに追い詰められたことに対して、屈辱と感じているのだろう。

 格下と思っていた神々が、ここまで、自分を追い詰めたのだ。

 夜深は、力を解放し、彼らを待ち受けようとする。

 だが、その時であった。

 あの獣じみた男が、唸り声を上げながら、神々に襲い掛かったのは。


『っ!』


 獣じみた男の殺気を感じたのか、神々は、とっさに、回避する。

 獣じみた男は、威嚇するようににらみつけていた。

 彼の肩に乗っている少年は、笑みを浮かべたままだ。

 まるで、この状況を楽しんでいるかのように。


『あら、とんでもない助っ人をよこしてくれたものね』


 獣じみた男と少年が、助太刀に現れた事は、夜深にとって予想外の出来事のようだ。

 だが、夜深にとっては、都合がいいのだろう。

 先ほどとは、違って妖艶な笑みを浮かべている。

 それほど、彼の力は絶大のようだ。

 神々と互角に戦えるのかもしれない。


『まさか、お前は……』


 空巴は、察したようだ。

 目の前にいる獣じみた男が何者なのかを。

 その時だ。

 獣じみた男が、雄たけびを上げたのは。

 その雄たけびは、音圧となって、柘榴達の元へと押し寄せていった。


「な、なんだ!?」


「何が起こってますの?」


 柘榴も、初瀬姫も、戸惑いを隠せない。

 雄たけびだけで、彼らは、殺気を感じてしまったのだ。

 獣じみた男の恐ろしさを肌で感じたように。

 獣じみた男は、唸り声を上げて、神々に迫っていった。


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