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聖印×妖の共闘戦記―神話乃書―  作者: 愛崎 四葉
第四章 炎と闇の復活
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第五十二話 荒ぶる龍神王

 龍神は、今も、雄たけびを上げながら、荒れ狂うように暴れまわっている。

 ただ、やみくもに、柚月達に襲い掛かっているようだ。

 だが、なぜ、龍神は、自分達に襲い掛かったのか、見当もつかず、柚月達は、困惑した。


「な、何が起こってるんだい!?」


「まさか、俺達を追い払うつもりなのか!?」


 和泉と透馬が、口々に叫ぶ。

 考えられる理由は、一つ。

 龍神達も、妖狐同様、人間を信じておらず、自分達を目にして、追い払おうとしているか、殺そうとしているかだ。

 集落で、ひっそりと過ごしてきた龍神達だ。

 人間を信じていない可能性もある。

 龍神に襲われるのも、無理はなかった。


「まずいですね」


「うん、さすがにね……」


「歓迎されてないってことか、参ったね」


 美鬼、景時、和巳も困惑した様子で呟く。

 やはり、自分達は、歓迎されてはいないのだろう。

 どうにかして、自分達が敵ではない事を話せればいいのだが、龍神は、暴れまわっている。 

 とても、話せる状態ではない。

 しかも、目の前にいる龍神から、発せられる力は、妖気と言うよりも、神に近い力だ。

 柚月達だけでは、敵いそうになかった。

 だが、その時だ。

 千里のように、丸みを帯びた二本の角と龍のような尻尾を生やし、人の姿をした妖達が、駆け付けに来たのは。


「龍神王!?どうされたのですか!?」


「ど、どうか、お静まりください!!」


 彼らは、龍神に向かって、静まるよう促す。

 この妖達は、龍神のようだ。

 どうやら、目の前にいる龍神は、龍神王のようだ。

 おそらく、龍神達を束ねているのであろう。

 どうやら、自分達を襲いに来たというわけではないらしい。

 しかし、何が起こったというのであろうか。


「お前達、何かあったのか!?」


「お、お前達こそなんだ?なぜ、人間が?」


 光焔は、龍神達に問いかける。

 だが、龍神は、驚いた様子で、光焔に聞き返した。

 人が、この山を登って龍神の集落にたどり着くとは、想ってもみなかったのであろう。

 龍神は、動揺を隠せなかった。


「そ、そんな事は、今は、どうでもいいだろう!龍神王様が、突然、ご乱心になってしまったんだ!あんたらは、逃げた方がいいぞ!」


 もう一人の龍神が、慌てた様子で説明する。

 なんと、龍神王が、突然、暴れ始めたようだ。

 そこに、柚月達が、出くわしたらしい。

 だが、龍神達は、なぜ、龍神王が暴れ始めたのか、見当もつかない。

 龍神は、柚月達の身を案じ、逃げるよう促した。


「そういう事でござったか!」


「何とかして、鎮めるしかない!」


 ここで、柚月達が、逃げる事は、まずありえない。

 なにせ、龍神と話をしなければならないのだ。

 千里を復活させるためには、闇の力が必要だ。

 龍神王に頼まなければ、闇の力は、手に入らないだろう。

 となれば、柚月達の選択は、ただ一つだ。

 戦って、鎮めるしかない。

 要も、瑠璃も、覚悟を決め、構えた。


「餡里、私の後ろに下がりなさい!」


「わ、分かった!」


 高清は、餡里に自分の後ろに下がるよう促す。

 今の餡里を戦いの前線に出すわけにはいかない。

 となれば、後ろへと下がらせるしかないのだ。

 本当は、安全な場所で身を隠してほしいのだが、餡里が、そのような事をするはずがない。

 なぜなら、彼も、聖印一族であり、聖印隊士として、戦ってきたのだから。

 自分だけ逃げるわけにはいかないのだろう。

 それゆえに、高清は、餡里を下がらせた。


「行くぞ!」


「うん!」


 柚月達は、地面を蹴り、龍神王へと向かっていった。

 彼を鎮める為に。

 柚月達の行動を目にした龍神達は、あっけにとられている。

 まさか、龍神王を鎮めようと戦ってくれるとは、想ってもみなかったのであろう。


「美鬼!」


「仰せのままに」


 瑠璃は、聖印能力を発動し、美鬼を憑依させる。

 鬼と化した瑠璃は、跳躍し、龍神王に迫ろうとする。

 だが、彼女よりも、早く、龍神王は、反応し、尻尾を振り回し、瑠璃は、とっさに回避するが、風圧により、吹き飛ばされてしまった。


「瑠璃!」

 

 地面にたたきつけられそうになる瑠璃を朧は、抱きかかえる。

 間一髪だ。

 もし、朧が、瑠璃を助けなければ、瑠璃は、地面にたたきつけられていただろう。

 なんという威力だろうか。

 瑠璃が憑依化した状態であっても、龍神王に近づくことすらできないのだ。

 困惑する朧と瑠璃。

 だが、龍神王は、容赦なく、朧達に襲い掛かった。

 彼らを守るために、和泉が、麗線を駆使して、防衛線を生み出し、防ごうとする。

 だが、龍神王は、それすらも、引きちぎろうとしている。

 ここで、要が、朧達の前に出て、防御態勢に入り、守ろうとするが、要でさえも、押し潰されてしまいそうなほどの威力を龍神王は持っていた。


「天次君!」


 景時が、天次を呼びだし、天次は、天狗嵐を発動する。

 少しでも、吹き飛ばすことができればと。

 やはり、龍神王を押し返す事は至難の業のようだ。

 だが、柚月達は、あきらめてなどいない。

 続いて、透馬が岩壁を、和巳が聖生・色彩器を、高清も、陸虎ノ盾を発動して、防御壁を生み出す。

 三壁の前では、龍神王も適わないはず。

 誰もがそう思っていた。

 しかし、龍神王は、雄たけびを上げながら、防御壁に向かって頭突きをし始める。

 それも、激しく。

 

「まずいな……」


 これには、柚月達も動揺を隠せない。

 仲間達が、龍神王の攻撃から防ごうとしても、龍神王の力が、強すぎる為、適わないのだ。

 このままでは、防御壁も破壊されてしまう。

 柚月達は、窮地に陥っていた。

 だが、その時であった。

 光焔が、何かに気付いたのは。


「なんだ?何か、邪気が入ってきてるのか?」


「そ、そうみたいなんだ。そのせいで、龍神王様は……」


 光焔は、集落の奥から、邪気が入り込んでいる事に気付く。

 それも、闇の力や妖気ではない。

 龍神王ですらも、抵抗できないほどの。

 そのせいで、龍神王は、暴れ始めたらしい。

 だが、邪気の正体がつかめず、龍神王を鎮める手段も見つからない為、龍神達は、困惑していたようであった。


「ならば、ここの邪気を取り除こう」


「で、できるのか?」


「無論、わらわは光の妖だ。問題ない」


「光の妖?」


 光焔は、邪気を取り除こうと名乗り出る。

 龍神は、半信半疑のまま、光焔に尋ねた。

 彼のような妖が、あの邪気を取り除けるとは、到底思えなかったからだ。

 だが、光焔は自身の正体を告げる。

 龍神は、目を見開き、驚くが、光焔は、龍神王に背を向け、光の力を放つ。

 すると、龍神の集落を覆っていた邪気が取り除かれるのを光焔は、感じ取った。


「これで、邪気は取り除いたぞ!うまく、鎮められるはずだ!」


「簡単に言うけど、どうやってやれって言うんだい!?」


「こんな暴れまわる龍をどうにかできたら、とっくにやってるよ!」


 柚月達に、邪気を取り除いたと伝える光焔。

 だが、龍神王は、未だ、暴れまわっている。

 まるで、もがき苦しんでいるようだ。

 この状態では、鎮める事は、容易ではないだろう。

 それに、今にも、防御壁が破壊されそうである。

 和泉も、和巳も、半ば、嘆いた状態で、光焔に反論した。

 しかし……。


「そうだ。聖印能力だ。蓮城家の聖印能力があれば……」


「一度、操って、鎮めるということでござるな!」


「うん!」


 餡里は、あることを思いつく。

 それは、蓮城家の聖印能力だ。

 蓮城家の聖印能力は、妖と契約し、使役する事。

 今、蓮城家の聖印能力を身に宿しているのは、朧、景時、餡里の三人だ。

 だが、餡里に、聖印能力を発動させると、体に悪影響を及ぼしかねない。

 となれば、朧と景時の二人で、龍神を無理やり、使役して、鎮めるしかないだろう。


「兄さん!一瞬だけ、動きを止められるか?一瞬だけでいいんだ!!」


「わかった、やってみる!皆、行くぞ!」


 朧は、柚月に頼む。

 龍神の動きを一瞬だけ止めてほしいと。

 そうすれば、隙が生まれ、朧と景時は、龍神を使役し、鎮める事が可能となるだろう。

 柚月は、承諾し、朧達は、バラバラになって、行動し始めた。

 その直後、防御壁が破壊されてしまう。

 だが、柚月が、異能・光刀を発動し、龍神王をほんろうする。

 龍神王は、暴れまわるが、被害を最小限に抑える為に、瑠璃と要が、龍神王にしがみつき、取り押さえる。

 龍神王は、暴れまわるが、和泉が、麗線を駆使して龍神王を捕らえる。

 さらには、透馬が岩壁を、和巳が聖生・色彩器を、高清も、陸虎ノ盾を発動して、龍神王を囲むように、防御壁を生み出し、龍神王は、身動きが取れなくなった。


「朧!景時!今だ!」


「うん!先生!」


「了解!」


 わずかな隙を生み出した柚月達は、朧と景時に合図を送る。

 朧と景時は、聖印能力を発動し、龍神王の使役を試みた。


――鎮められましたか?


「駄目、龍神王の力が強すぎて……」


 美鬼は、瑠璃に問いかけるが、瑠璃は、不安に駆られた様子で、首を横に振る。

 聖印能力を発動し続ける朧と景時。

 だが、龍神王の力が強すぎる為、うまく、使役ができないのだ。

 このままでは、朧も、景時も、身を滅ぼしてしまう。

 防御壁も、破壊されてしまったら、今度こそ、柚月達の身に危険が迫るだろう。


「僕も、聖印能力を発動できれば……」


 餡里は、呟く。

 彼も、聖印能力を発動すれば、龍神王を使役することができるのではないかと。

 だが、そうすれば、必ずや、体に影響を及ぼしてしまうだろう。

 葛藤し続ける餡里であったが、朧と景時の苦しそうな表情を目にして、意を決した。

 聖印能力を発動する事を。

 餡里は、覚悟を決め、地面を蹴った。


「待ちなさい、餡里!」


 餡里が、走りだしたのを目にした高清は、制止させようとするが、餡里は、ついに、聖印能力を発動した。


「餡里!」


 餡里が、聖印能力を発動したことに気付いた朧は、餡里の名を呼び、制止させようとする。

 だが、餡里は、聖印能力を発動し続けた。

 苦悶の表情を浮かべ、額に汗をにじませながら。

 効果があったのか、龍神王の動きが鈍くなり始め、ついには、目を閉じ、地面に倒れ込む。

 柚月達は、ようやく、龍神王を、鎮めることができた。


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