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聖印×妖の共闘戦記―神話乃書―  作者: 愛崎 四葉
第三章 三種の神器を求めて
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第三十八話 大胆な行動

 召喚された妖達は、柚月達の元へと迫っていく。

 泉那が、再び、水で押し流し、李桜が、花吹雪を発動して、妖を切り刻めば、一気に、妖達を討伐できる。

 だが、それでは、意味がない。

 勝吏は、再び、妖を召喚してしまうだろう。

 召喚すれば、するほど、勝吏の身に悪影響を及ぼしてしまう。

 最悪の場合、死に至るだろう。

 柚月達は、それだけは、避けたかった。


「さあ、やってしまえ!」


 妖達と戦うことをためらってしまった柚月達。

 勝吏は、容赦なく、妖達に柚月達を殺すよう命じる。

 妖達は、一斉に、柚月達に、襲い掛かった。

 だが、その時であった。


『柚月、これを!』


「これは、八咫鏡!」


 泉那は、柚月にある物を授ける。

 それは、三種の神器の一つ、八咫鏡だ。

 柚月は、手に取っただけで、それが、神器だと察した。

 なぜなら、力があふれ出てくるのを感じたからだ。


『これを使えば、妖を浄化できるはずよ。召喚の力もね』


「ありがとう!」


 柚月は、八咫鏡の力を発動させる。

 八咫鏡は、妖を浄化する能力を持っているようだ。

 その上、盾としても、活用できる。

 万能な神器と言ったところであろう。

 八咫鏡は、光を放ち、妖達を一気に、浄化し始めた。


「あ、妖達が!」


 妖達を浄化され、勝吏は、愕然としてしまう。

 自分が召喚した妖達が一気に、浄化されてしまうとは、思いもよらなかったのであろう。

 だが、驚くのは、それだけではなかった。


「うぐっ!」


「勝吏様!」


「しょ、召喚の力が……」


 勝吏は、うめき声をあげ、苦悶の表情を浮かべてうずくまる。

 月読は、驚愕し、勝吏の元へ駆け寄っていった。

 勝吏は、気付いてしまったのだ。

 召喚の力さえも、かき消されてしまった事に。

 それが、八咫鏡の力なのであろう。

 神の力さえも、かき消してしまうほどの。


「ならば、これで、どうだ!」


『させません!』


 月読は、力任せに、術を発動する。

 召喚の力を消されてしまい、冷静な判断ができなくなってしまったのだろう。

 だが、術は、柚月達に、迫っていく。

 李桜は、柚月達の前に出て、ある物を出現させた。

 それは……。


「あれは、八尺瓊勾玉!」


 李桜が出現させたのは、三種の神器の一つ、八尺瓊勾玉だ。

 小さな純白の勾玉だが、力を感じる。

 それも、神秘的な。

 だからこそ、朧は、一目見て、その勾玉が、神器であると察したのであろう。

 李桜は、八尺瓊勾玉の力を発動させ、月読が、発動した術を一気に吸い取った。


「ち、力が……」


 月読は、愕然としてしまう。

 まさか、術を吸い取られるとは、思ってもみなかったのであろう。

 これこそが、八尺瓊勾玉の力なのだ。

 持ち主の身を守る力が込められているのであろう。

 陰陽術、聖印の力、妖気であっても、吸い取ることができ、神秘的な力へと変換することができた。


『力を吸い取りました。今なら、ここを出れるはずです』


「わかった。皆、行くぞ!」


 李桜が、ここから脱出できると促す。

 二柱の神を相手にすることもできず、最終手段である妖を召喚する力さえも、失ってしまった。

 これで、勝吏達は、戦う手段を失ってしまったと言っても過言ではない。

 今なら、逃げ切れることができるだろう。

 柚月は、うなずき、朧達と共に、逃げ始めた。


「待て!柚月!朧!」


 勝吏は、叫ぶが、柚月達は、一瞥もせず、そのまま、勝吏達から遠ざかっていく。

 両親に背を向けて逃げなければならないのは、柚月と朧にとっては、辛い事だ。

 だが、今は、そうするしかなかった。

 彼らから、逃げ切るしか……。



 なんとか、聖印京を脱出することに成功した柚月達。

 ひとまずは、湖まで、たどり着き、振り返る。

 隊士も、妖の気配もない。

 どうやら、逃げ切れたようだ。


「何とか、逃げ切れたようだな」


「うん」


 逃げ切れたことを確信し、柚月達は、ほっと胸をなでおろし、少しの間、体を休める事にした。


「餡里、大丈夫?」


「あ、はい……」


 朧は、餡里を気遣う。

 調子は良くないというのに、無理に走らせてしまった事に対して、責任を感じているようだ。

 餡里は、息を切らしながらも、笑ってうなずくが、顔色は、あまりよくない。

 朧は、餡里のみを案じていた。


「大丈夫よ、朧君、餡里は、私に任せて」


「はい、お願いします」


 綾姫は、餡里の元へと歩み寄る。

 治癒術を使って、餡里の体力を回復させるようだ。

 もちろん、気休めにしかならないが、何もしないよりはいいのだろう。

 朧は、うなずき、綾姫に、任せることにする。

 綾姫は、治癒術を発動して、餡里の体を治し始めた。


「瑠璃、聞かせてほしいんだ。矢代様の別邸から出た後の事を」


「うん」


 朧は、瑠璃に、問いかける。

 綾姫と瑠璃は、矢代の別邸から出た後、どのような行動をしていたのか、気になっていたのだろう。

 瑠璃は、静かにうなずき、説明し始めた。


「あの後、私は、私の先祖・茜と藍を復活させるために、術を発動した」


「うん」


「それからは、宝玉を探してた。桜の神の宝玉は、峰藍寺に祭ってあったから、すぐ見つかったけど、水の神の宝玉は、西地方にある祠に祭ってあった。だから、時間がかかった」


「そういう事か……」


 瑠璃曰く、茜と藍を復活させてから、宝玉を手に入れるために、綾姫と旅をしていたらしい。

 と言っても、桜の神の宝玉は、峰藍寺にあったようだ。

 だからこそ、安城家が、峰藍寺を管理していたのだろう。

 だが、水の神の宝玉は西地方にあったらしい。

 そのため、綾姫と瑠璃は、何日もかけて、旅をし、聖印京に戻ってきたようだ。

 説明を聞いた朧は、納得した。


「宝玉を手にした後は、聖印京へ戻ったわ。あんなに、変わってしまったのは、驚いたけど、逆にこの状況を利用できるとも思ったのよ」


「どういう意味だ?」


 静居が聖印京を支配してしまったとは、知らないで、綾姫と瑠璃は、聖印京に帰還してしまったらしい。

 さぞかし、驚いたことであろう。

 あの牢獄のような聖印京を目にして。

 だが、綾姫は、この状況を逆手に取ろうとしていたらしい。

 どういう意味なのだろうか。

 柚月は、綾姫に問いかけた。


「潜入したとしても、すぐに、捕まってしまう。だから、わざと静居に捕まったのよ。あの男は、私達を殺せないとわかっていたから」


「うん、神と心を通わせていたから」


 綾姫と瑠璃曰く、身をひそめて、行動していたとしても、すぐに捕まってしまうと察したのだろう。 

 当然だ。

 静居は、街の人々、一般隊士、そして、聖印一族さえも、操っていたのだから。

 二人にとっては、敵陣に乗り込むような状況だったに違いない。

 だからこそ、二人は、わざと静居に、捕まろうと考えたのだ。

 静居は、神と心を通わせている自分達を殺すことができないと知っていたから。


「静居に捕まって、あなた達が来るのを待っていたのよ。その方が、手っ取り早く合流できるでしょ?あなた達も、目的は同じだんたんだし」


「恐ろしい考えだな。敵に回したくない」


 静居に、捕まった理由は、なんと、柚月達を合流するためだというのだ。

 柚月達は、必ず、聖印京に戻るはず。

 しかも、何らかの方法で潜入するはずだと踏んでいたのだろう。

 そして、静居が、柚月達が、聖印京に戻ってきたことをうっかり、漏らしたがために、綾姫達は、行動に出たのだ。

 本堂を脱出して、柚月達と合流することを。

 まんまと、綾姫達の策略に動かされていた柚月と朧。

 そう思うと、綾姫は、やはり、断端な姫君だ。

 しかも、瑠璃も、度胸がある。

 柚月達は、絶対に、二人を敵に回したくないと、内心、あきれていたのであった。


「いいじゃない。結果的に、泉那も、李桜も、復活できたんだから」


「まぁ、確かにな」


「だが、問題は、空の神だ。どこに封印されているかもわからないし……」


 確かに、柚月達は、綾姫達と合流することに成功し、泉那も李桜も、復活させることに成功した。

 しかし、問題は、ここからだ。

 空の神が、どこに封印されているのか、柚月達は、見当もつかない。

 宝玉を探しに行った柘榴達と合流もできていないのだ。

 そうなると、空の神を復活させるには、まだ、時間ががかるのではないかと柚月は、内心、途方に暮れていた。


『それなら、問題ないわ』


『はい。七つの宝玉は、すでに、神聖山に向かっていますから』


「え?神聖山?ってことは、空の神は、神聖山で眠っているってことか?」


『はい』


 ここで、泉那と李桜が、意外な言葉を口にする。

 なんと、七つの宝玉は、神聖山に向かっているというのだ。

 つまり、空の神は、神聖山で封印されていることになる。

 しかも、二人の説明かすると七つの宝玉が、そろっているという事だ。


「これは、驚いたな」


「うん」


 柚月も、朧も、あっけにとられている。

 まさか、こうも、順調に事が運ぶとは、思いもよらなかったのであろう。

 これは、綾姫達が宝玉を探しに行ってくれたおかげだ。

 自分達では、時間がかかってしまったであろう。

 柚月達は、綾姫達に感謝していたのであった。


「けど、柘榴達も、神聖山にいるってことだよね?」


「うん」


 七つの宝玉がそろっているという事は、柘榴達も、全員、合流しているという事だ。

 朧の問いに、瑠璃は、嬉しそうに答える。

 兄である柘榴と再会できる事が嬉しいのであろう。


「なら、行くぞ。神聖山に」


 こうして、柚月達は、柘榴達と合流し、空の神を復活させるために、神聖山に向かう事を決意したのであった。



 静居は、夜深と共に、綾姫達を捜索し、聖水の泉へたどり着いた。

 だが、彼らが、たどり着いた時には、もぬけの殻状態だ。

 残っていたのは、召喚の力を失った勝吏と、術を吸い取られた月読の姿だけであった。


「も、申し訳ございません!取り逃がしました……」


 勝吏と月読は、地べたに手をつき、首を垂れて、謝罪する。

 綾姫と瑠璃、そして、柚月達と交戦したが、水の神と桜の神を復活させてしまい、逃がしてしまった事を話して。

 静居は、ただ、黙って、勝吏達を見下ろしていた。


「あらあら、どうするの?」


「……決まっていよう。全員、捕らえて、殺すのみだ」


 静居は、冷酷なまなざしで、そう、夜深に告げたのであった。

 静かに、憎悪を宿して。


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