表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖印×妖の共闘戦記―神話乃書―  作者: 愛崎 四葉
第十五章 聖印神話の終結と新たな始まり
199/204

第百九十八話 光と炎と闇の刃が重なった瞬間

 聖印能力を発動した柚月と朧は、静居と死闘を始めた。

 やはり、刀がぶつかり合い、激しさが増す。

 静居の方が、優勢にたっており、柚月達は、やや押され気味ではあるが、食らいついているようだ。

 静居は、夜深の悲しみを発動して、魂を消滅させようとするが、柚月と朧が、危険を察し、後退して、回避した。


――朧、大丈夫か?


――怪我は、ねぇか?


「うん、ありがとう。俺は、大丈夫だ」


――そうか。


 九十九と千里は、朧の身を案じる。

 だが、朧は、怪我を負っていないようだ。

 それを聞いた千里は、安堵した。

 激しい戦いだ。

 ゆえに、朧が、無理をしていないか、心配になったのだろう。


――柚月。


「大丈夫だ。静居と夜深を止めるぞ!!」


 光黎は、柚月の身を案じるが、柚月は、答える。

 まだ、戦えると。

 柚月と朧は、構え、静居に向かっていった。


「させぬぞ!!」


 静居は、一瞬のうちに、柚月達に迫り、何度も刀を振るう。

 それも、狂ったように。

 これは、静居が発動できる技の一つだ。

 その名は、夜深の怒り(よみのいかり)

 無の力で光速移動し、相手を何度も斬りつける技だ。

 柚月達は、追い詰められそうになるが、柚月は、異能・光刀を発動し、防ぎきる。

 朧も、守られてばかりではない。

 静居の背後に迫り、静居に斬りかかるが、静居は、それすらも、反応し、防ぐ。

 静居は、後退し、柚月達と距離をとった。


「行くぞ、静居!!」


 朧が、前に出て、炎と闇の刃を静居に向けて放つ。

 技の名は、九尾ノ覇刀(きゅうびのはとう)

 九尾の火と竜神の闇の力を併せ持ち、敵を討つ技だ。

 餡枇との相性も抜群であり、静居は、神刀・深淵で防ぎきる。

 だが、柚月が、一瞬のうちに、静居の背後に回り込んだ。

 静居は、柚月の気配に気付いたが、反応がわずかに遅れた。


「どこを見ている!!」


「ぐっ!!」


 柚月は、光の刃を静居に向けて放つ。

 技の名は、光焔神浄・光刀こうえんしんじょう・こうとう

 異能・光刀で、光速移動し、光の刃で、敵を斬る。

 静居は、腕を斬られ、柚月達から、距離をとった。


「中々、やるな。だが……」


 静居は、技を発動して、一瞬にして、傷を癒した。

 その名は、夜深の恨み(よみのうらみ)

 無の力で傷を回復することができるのだ。

 これにより、静居は、幾度となく、傷つけられても、無傷にしてしまう。

 まさに、不死身と言ったところであろう。


「傷が、癒えた!?」


――まじかよ……。


 朧も、九十九も、愕然としてしまう。

 柚月と朧の連携は、完璧であった。

 ゆえに、静居に、一矢報いることができたのだ。

 だが、静居は、いとも簡単に傷を癒してしまう。

 これでは、静居を止める事は、困難を極めるであろう。

 静居は、自分が勝ったと確信を得たのか、不敵な笑みを浮かべていた。


――夜深の力を使ったのだろうな。


「どうすればいい?」


 光黎は、推測する。

 静居が、再生能力を持つのは、夜深と融合しているからであり、夜深が、創造主の力を奪ってしまったからだ。

 だが、これでは、どうすることもできなくなる。

 手の施しようがない。

 柚月は、どのようにして、静居達をとめればいいか、見当もつかず、困惑していた。


――お前達が、同時に、技を発動し、私が、神の光を奴らに放てば……。


――勝機はあるという事か。


――そういう事だ。


 光黎が、提案する。

 先ほど、柚月の光焔神浄・光刀と九尾ノ覇刀を同時に発動し、すぐさま、光黎が、神の光を発動すれば、静居を重傷に追い込むことができる。

 それも、再生能力ができないほど、命を削ることができるであろう。

 つまり、静居に討つ勝つ可能性があるというわけだ。

 千里の問いに、光黎が、うなずいた。


「やってみるしかないな!!」


「うん!!」


 柚月と朧は、構える。

 光黎の提案にかけるしかない。

 勝算はあるかどうかは、不明だろう。

 だが、勝機がわずかにあるのなら。

 それで、静居を止められるならば、やってみる価値はあるという事だ。

 柚月と朧は、光黎を信じ、地面を蹴る。

 静居に、向かっていくために。


「させぬぞ!!」

 

 柚月と朧は、同時に、技を発動する。

 だが、静居は、深淵で薙ぎ払い。

 柚月と朧は、あえなく、技を中断。

 どうやら、わずかな隙を生み出さなければ、同時に技を発動する事は、困難のようだ。

 柚月と朧は、連携して、静居に斬りかかる。

 隙を生み出すために。

 だが、静居は、ここで、無の力の弾を発動して柚月達に向けて放った。

 技を発動したのだ。

 その名は、夜深の嘆き(よみのなげき)

 無の力の弾は、柚月達に襲い掛かり、柚月達は、一旦、後退して、距離を置く。

 だが、全てを回避することはできず。

 柚月達は、傷を負った。


「兄さん、大丈夫か!?」


「ああ、朧は?」


「俺は、大丈夫だ。でも……」


 柚月と朧は、互いの身を案じる。

 どうやら、軽症で済んだようだ。

 だが、朧は、息を整え、静居を見る。

 静居は、深淵を構えており、柚月達をにらんでいる。 

 全く、隙を見せない。

 これでは、同時に、技を発動するのは、容易ではなかった。


「中々、うまくはいかないものだな」


「そうだな……」


 柚月も、朧も、思わず舌を巻く。

 静居は、手ごわいと改めて思い知らされたからだ。

 それでも、負けるわけにはいかない。

 和ノ国の運命が、かかっているのだから。

 柚月と朧は、全ての命を背負っていると言っても過言ではない。

 ゆえに、ひるむことなく、柚月と朧は、静居に向かっていった。


「まだだ。お前達が、後悔するのは、ここからだ!!」


 静居は、技を発動する。

 まがまがしい妖気のようだ。

 柚月と朧は、危険を察知して、回避しようとするが、まがまがしい妖気は、瞬く間に、柚月と朧を覆い尽くす。

 柚月と朧は、体勢を整えて、着地した。

 しかし……。


「うっ!!」


「ぐっ!!」


 柚月と朧は、うめき声をあげ、苦悶の表情を浮かべる。

 突然、全身に痛みが走ったのだ。

 それも、激しい痛みが。

 光黎や九十九と千里も、うめき声を上げる。

 どうやら、彼らも、全身に痛みが走っているようだ。


「こ、これは……」


「痛覚を増幅させられたか……」


 柚月達は、静居が、何をしたのか、察してしまう。

 静居は、痛みを増幅させる技を発動したようだ。

 技の名は、夜深の苦しみ(よみのくるしみ)

 ようやく、痛みが治まった二人であったが、静居は、すぐさま、柚月達に迫り、襲い掛かろうとしていた。


――柚月!朧!来るぞ!!


 光黎が、柚月達に警戒するよう警告する。

 だが、先ほどの技を受け、柚月達は、注意力が散漫してしまったようだ。

 静居は、柚月と朧に迫り、夜深の嘆きを発動する。

 柚月達は、無の力の弾を切り裂き、傷を負うことはなかった。

 だが、その時だ。

 柚月達の足元から、術陣が、出現したのは。


「しまった!!」


 柚月と朧は、回避しようとするが、術陣が、すぐさま、柚月達の足元を捕らえる。

 これでは、逃げる事も不可能だ。

 術陣は、檻と化し、柚月達を捕らえ、無の刃で、切り裂いた。

 静居は、夜深の憎悪(よみのぞうお)と呼ばれる技を発動したのだ。

 虚無の地獄に閉じ込め、無の刃で、相手を切り裂く。

 逃れる術はない。

 八尺瓊勾玉でさえも、吸収は不可能なのだ。

 檻が消え、柚月達は、血を流し、倒れてしまった。


「ふはははは!!やはり、お前達では、無理だったな。私を殺せるはずがない。止められるはずがない!!」


 静居は、高笑いをし始める。

 勝ったと、確信を得たのだろう。

 もう、立ち上がる事すら、不可能だと察して。

 静居の言う通り、柚月と朧は、起き上がろうとしない。

 気を失ってしまったのだろうか。

 だが、そんな事は、静居にとって、どうでもよかった。

 静居は、柚月に迫っていった。


「では、そろそろ、殺してやろう。なぁ?夜深」


――ええ、光黎も、一緒にね。


 静居は、深淵を振り上げる。

 まずは、柚月から、殺すつもりだ。

 柚月は、神懸かりを発動している。

 ゆえに、静居にとって、厄介な相手なのだろう。

 夜深も、賛同しているようで、光黎さえも、殺そうとしているようだ。

 静居は、不敵な笑みを浮かべ、深淵を振り下ろした。

 しかし、柚月が、静居の足をつかみ、静居の体勢を崩した。


「なっ!!」


 無様に、仰向けになって倒れる静居。 

 静居は、すぐさま、起き上がるが、柚月と朧は、いつの間にか、視界から、姿を消してしまっている。

 あれほどの傷を受けたというのに、なぜ、立ち上がれたのであろうか。

 静居は、理解ができず、あたりを見回す。 

 その時だ。


「今だ!!朧!!」


 柚月の声が、後ろから聞こえる。

 静居は、振り返ると、柚月と朧が、静居に斬りかかろうとしていた。

 だが、静居は、いとも簡単に、二人の刃をはじき返す。

 動きが、鈍かったからだ。

 柚月と朧は、体勢を崩され、静居は、二人に斬りかかった。

 だが、柚月と朧は、強引に、踏ん張り、構える。

 この時を待っていたのだ。

 静居は、今、刀を振り上げている。

 と言う事は、防ぐことは、不可能のはずだ。

 静居は、その事を予想できなかったようで、目を見開いていた。


「まだ、終わりじゃない!!」


「これで勝ったと思うな!!静居!!」


 柚月は光焔神浄・光刀を、朧は九尾ノ覇刀を同時に発動。

 光の刃と炎と闇の刃が、静居を襲った。

 静居は、防ぐこともできず、二人の刃をその身に受ける。

 さらに、柚月が、神の光を発動した。


「ぐはああっ!!」


 静居は、うめき声をあげ、血を流し、倒れる。

 ついに、二人が、静居に勝った瞬間であった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ