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聖印×妖の共闘戦記―神話乃書―  作者: 愛崎 四葉
第十四章 覚醒と式神
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第百八十五話 君の声

 光焔の声が聞こえる。

 先ほどまでいた彼の声が。


――柚月は、こんなところで、負ける人間じゃないのだ!!


 光焔は、柚月を励ます。

 彼は、生きているのだ。

 光黎の中で。

 共に生き、共に戦っている。

 柚月は、改めて、そう、感じた。


――そうだったな……。勝たないとな。


――頑張るのだ!!わらわは、ずっと、ずっと、見守ってるぞ!


――ああ。


 光焔に励まされた柚月は、こぶしを握りしめる。

 光焔の為にも、勝たなければならないと。

 柚月は、力を込めて、起き上がろうとしていた。



 柚月も、朧も重傷を負ってしまった。

 だが、景時、夏乃、和泉は、あきらめていない。

 柚月と朧が立ち上がるまで、時間を稼ぐつもりだ。

 九十九と千里も、傷を負っているが、二人を守るために、一度、朧の中から、出て、死掩達と戦いを繰り広げている。

 光黎も、柚月から出て、死掩と戦いを繰り広げていた。

 要に柚月と朧の事を託して。


「柚月殿……朧殿……」


 要は、海竜之雨を発動し、柚月と朧の傷を癒そうとする。

 だが、千草が、強引に九十九達を吹き飛ばし、柚月と朧に襲い掛かろうとしていた。

 要は、二人を守るために、前に立つ。

 その時であった。

 空巴が、技を発動し、千草を檻で取り囲んで、切り裂いたのは。


「うがああああぁっ!!」


 千草は、雄たけびを上げ、後退する。

 空巴は、技を発動したのだ。

 その名は、空中楼閣(くうちゅうろうかく)

 空気の檻を生み出して斬りかかる技だ。


「空巴!!」


『私も、戦わせてもらうぞ』


「頼んだよぜ!」


 空巴は、綾姫と瑠璃のおかげで、回復し、復帰したようだ。

 それにより、戦力が拡大したようだ。

 心強い仲間が、増え、九十九達は、気を引き締める。

 柚月と朧を、必ず、守ると誓って。

 その時だ。


「うっ……」


「朧」


 朧は、意識を取り戻す。

 要のおかげで、傷も、癒えたからであろう。

 まだ、痛みは、残っているものの、耐えて、起き上がる。

 九十九と千里は、死掩達の事を光黎達に任せ、朧の元へ駆けよった。


「大丈夫だ。ごめん……」


「無理すんなよ」


「お前は、一人じゃないんだからな」


「うん、ありがとう」


 朧は、九十九と千里に謝罪する。

 九十九達は、朧の身を闇しているようだ。

 無理をさせてしまったと感じているのだろう。

 九十九は、朧に手を差し伸べ、朧は、九十九の手をつかみ、起き上がる。 

 すると、千里は、朧の腕を自分の肩に回し、支えた。

 九十九と千里に、支えられていると、感じた朧は、再び、憑依の力を発動する。

 これで、何度目の憑依になるだろうか。

 朧の限界は、とっくに超えている。

 だが、九十九と千里が、支えてくれるならば、何度だって、発動できる。

 朧は、そう感じたのだ。

 一気に、死掩達の元へ向かっていった。


「復活しちゃったんだ。うっとうしいな」


 朧が、復活したことにより、苛立ちを隠せない村正。

 せっかく、優位に立っていたのにと感じていたのだろう。 

 朧は、千草と死闘を繰り広げるが、以前よりも、動きが、早くなっている。

 空巴も、復活したことにより、千草は、追い詰められそうになっていた。

 そのため、村正が、朧達に襲い掛かり、朧達は、後退した。


「でも、もう、無理だよ。君のお兄さんは、倒れちゃったから」


「それは、どうだろうな」


「え?」


 村正は、朧達が勝てるはずがないと思っているようだ。

 なぜなら、柚月が、倒れてしまった。

 彼は、朧達にとっては、切り札であろう。

 ゆえに、自分達が負けるわけがないと思っているようだ。

 しかし、突如、柚月の声が聞こえる。

 これには、さすがの村正も、驚きを隠せないようだ。

 村正は、恐る恐る、柚月の方を見ると、柚月は、激痛にこらえ、立ち上がっていた。


「兄さん!!」


『な、なぜ……』


 朧達は、驚きを隠せないようだ。

 だが、それは、彼らだけではない。

 死掩達も、驚いているようだ。

 死掩の発動した酔生夢死は、確実に、死を迎える技。

 光黎が、神の光を発動したせいで、完全ではなかったが、柚月は、重傷を負ったはずなのだ。

 それなのに、なぜ、柚月は、立ち上がっているのか、理解できなかった。


「光焔のおかげだ」


「光焔の?」


「あいつが、俺を励ましてくれた」


 柚月は、光焔が、励ましてくれたおかげで、立ち上がれたと説明する。

 それを聞いた朧達は、察した。

 光焔が、側にいてくれているのだと。

 今も、自分達と共に戦っているのだと。

 そう思うと、負けるわけにはいかない。

 柚月は、再び、神懸かりを発動し、構えた。


「さあ、やるぞ!!」


「うん!!」


 柚月達は、死掩達に向かっていく。

 死掩達は、柚月達に襲い掛かろうとするが、柚月達は、抗っていく。

 何度、傷ついたとしても、あきらめなどしないのだ。 

 死掩達の猛攻を受けても、柚月達は、立ち上がり、向かっていった。


――そうだ。ここで、勝たないと。静居を止める事はできない。光焔は、俺達の為に、光黎の所に還っていったんだ。ここで、負けてどうする!!絶対に、勝つんだ!!


 柚月が、あきらめず、何度でも、立ち上がる理由。

 それは、光焔の為だ。

 光焔は、柚月達の為に、光黎の中へ還っていった。

 本当は、ずっと、一緒にいたかったはずだ。 

 共に笑いあい、語りあい、過ごしたかったはずだ。

 だが、光焔は、自分の願いよりも、柚月達を守る事を選んだ。

 だからこそ、柚月達は、負けられないのだ。

 柚月達は、次第に、死掩達を追い詰めた。


『こうなれば!!』


 死掩は、再び、酔生夢死を発動しようとする。

 だが、その時だ。

 酔生夢死を発動する前に、瀬戸が、術を発動し、防いだのは。

 鬼と対峙しながらも、瀬戸は、柚月を守った。

 魂を傷つけられながらも。


「父上!!」


――柚月、行け!!


「ありがとう!!」


 瀬戸に支えられ、守れた柚月は、地面を蹴り、死掩に向かっていく。

 死掩は、酔生夢死を発動しようとするが、柚月が、すぐさま、間合いを詰め、死掩を切り裂いた。

 死掩は、仰向けになって、倒れかける。

 だが、まだ、終わってなどいない。

 柚月は、力を込めていたのだ。

 神の光を発動するために。


「おおおおおおおっ!!!」


『ぎゃあああああああっ!!!』


 柚月は、神の光を直接、死掩に打ち込む。

 死掩は、内側から、神の光に照らされ始め、絶叫を上げた。

 だが、消滅はしなかった。

 なぜなら、酔生夢死を自分の内側に発動して、かき消したからだ。

 それでも、死掩は、重傷を負い、倒れ込んだ。


「ちっ。死掩の奴、やられたか……」


 死掩が倒れた事を悟り、村正は、舌打ちをして呟く。

 それも、低い声で。

 村正は、苛立っているのだろう。

 柚月は、今度こそ、死掩を消滅させるために、向かっていき、神の光を発動しようとした。

 しかし……。


『き、消えるわけには、いかぬ……。ここで、消えるのならば……』


 死掩は、そう呟き、力を発動した。

 まがまがしい力を。

 それも、神の力と言うよりも、妖気のようだ。

 柚月は、その力に行く手を阻まれ、後退する。

 危険と感じたからだ。

 笠斎は、その力を感じ取り、血相を変えて、死掩の方へと視線を移した。


「あれは、まずいぞ!!」


「え?」


「笠斎、死掩は、何をしようとしてるんだ!?」


 笠斎は、死掩が、何をするつもりなのか、気付いたようだ。

 柚月は、笠斎に問いかける。

 だが、その前に、死掩が、起き上がり、不敵な笑みを浮かべていた。

 柚月達は、その笑みを目にして、背筋に悪寒が走る。

 死掩は、何か、恐ろしい事をしようとしているのだと察したからだ。


『ここで、全員、巻き添えにしてやる!!』


「待て!!」


 死掩は、柚月達を巻き添えにすると宣言して、力を発動し始めた。

 まがまがしい気が、死掩を取り囲んでいく。

 笠斎は、死掩を食い止めようと向かうが、時すでに遅し。

 まがまがしい気が、一気に爆発し、笠斎を吹き飛ばした。


「くっ!!」


「笠斎!!」


 柚月が、とっさに、吹き飛ばされそうになる笠斎を受け止める。

 まがまがしい気に覆われ、死掩は、姿が見えなくなってしまった。

 柚月達は、あっけにとられてしまっている。

 何が起こるのかもわからず。

 柚月は、神の光を発動し、まがまがしい気をかき消そうとするが、逆にはじかれてしまった。

 これでは、誰も、死掩を止める事はできない。

 柚月達は、そう察した。

 その時であった。


「あははは!そう来たか」


「何がおかしい!!」


 突如、村正が、高笑いをし始める。

 まるで、この状況を楽しんでいるかのように。

 朧は、怒りを露わにし、村正を問い詰めた。


「だって、死掩の奴、自爆しようとしてるんだもの」


「何!?」


 村正が、衝撃的な言葉を口にする。

 それも、無邪気に。

 なんと、死掩は、自爆するつもりなのだ。

 柚月達を確実に殺すために。

 柚月達は、衝撃を受け、驚いていた。


「あいつは、皆、殺すつもりだよ。あれじゃあ、君でも止められないよ」


 村正は、不敵な笑みを浮かべる。

 もう、柚月達に勝ち目はないと、悟って。

 まがまがしい気は、一気に膨れ上がり、柚月達を覆い尽くそうと迫ってきていた。


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