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聖印×妖の共闘戦記―神話乃書―  作者: 愛崎 四葉
第十四章 覚醒と式神
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第百八十四話 死をつかさどる神の猛攻

「残念だったね。光焔、いなくなっちゃった」


「貴様!!」


 村正は、柚月達をあざ笑う。

 光焔との別れを見ていたかのようだ。

 柚月は、怒りに駆られ、草薙の剣を鞘から引き抜き、村正に、斬りかかろうと、向かっていった。


――奏、待て!!


 瀬戸が、術を発動して、柚月を引き戻す。

 なぜなら、村正の前に、千草が出て、柚月を切り裂こうとしたからだ。

 瀬戸のおかげで、柚月は、傷を負わず、冷静さを取り戻した。

 だが、千草は、柚月を見て、唸っているようだ。

 まるで、怒りを露わにしているかのように。

 葵によく似た柚月を見て、感情が抑えきれなくなっているのであろう。


――千草様……。

 

 瀬戸は、千草に対して、複雑な感情を抱いている。

 千草は、葵の父親だ。

 そして、自分が、封印したと言っても、過言ではない。

 葵の気持ちを無視して。

 ゆえに、妖人と化してしまった千草をどうするべきなのか、迷っていた。


「オマエ……セト……?」


――そうです。私です。鳳城瀬戸です!千草様、どうか、怒りを……。


「せとぉおおおおおおっ!!」


 柚月の隣にいる人物が、瀬戸だと気付いた千草。

 瀬戸は、怒りを鎮めるよう説得を試みるが、千草は、怒りを露わにし、感情に任せて、爪で、瀬戸に斬りかかった。

 今度は、柚月が、八咫鏡で、防ぎ、瀬戸を後退させたのだ。 

 千草は、唸り声を上げて、瀬戸をにらみつけた。


「無駄だよ。君の事も憎んでるんだから。君も、僕達を封印したんだよ?」


――……。


 村正は、無邪気に瀬戸に告げる。

 瀬戸も、封印に加担した者。

 千草は、葵だけでなく、瀬戸の事も憎んでいるのだ。

 ゆえに、瀬戸の言葉を聞くわけがなかった。

 瀬戸も、反論することができず、言葉を失った。

 

『そうだ。貴様らに、いいものを見せてやろう』


 死掩は、力を発動する。

 すると、傷だらけになった空巴が、柚月達の前に現れ、倒れ込んだ。


『空巴!!』


 柚月達は、空巴の元へと駆け付ける。

 消滅しかけているわけではないようだ。

 だが、重傷を負っている。

 光黎は、すぐさま、心地光明(しんちこうめい)を発動し、空巴の傷を癒し始めた。


『すまない、光黎……』


 空巴は、光黎に謝罪する。

 申し訳なく感じているようだ。

 空巴は、静居達の行方を探っていたが、突如、死掩と千草、村正が、空巴に襲い掛かったのだ。

 空巴は、死掩達と死闘を繰り広げていたが、猛攻を受け、倒れてしまう。

 そして、そのまま、死掩達に、ここまで連れてこられたようだ。

 死掩達は、柚月達を殺すつもりなのだろう。

 静居達の野望を叶える為に。


「憎い?僕達の事が、憎いの?」


「そうだな。だから、お前達を倒す」


「強がっちゃって。弱いくせに」


 村正は、柚月に問いかける。

 それも、無邪気にだ。 

 柚月は、こぶしを握りしめ、村正をにらみつける。

 許せないのだ。

 光焔の事をあざ笑い、空巴を傷つけたことを。

 ゆえに、柚月は、立ち上がり、構えた。

 村正は、癪に障ったのか、柚月達をにらみつけて、低い声で罵る。

 そして、村正は、突如、鬼を一斉に生み出したのであった。


「鬼!?」


「なぜ、鬼を生み出せるのです!?」


 突如、鬼が現れ、瑠璃も、美鬼も、動揺を隠せないようだ。

 特に、美鬼は、なぜ、鬼を生み出せるのか理解できない。 

 一体、村正は、何者なのだろうか。


「さあ、皆殺しだよ!!千草!!」


 村正は、千草に命令し、千草は、雄たけびを上げながら、柚月達に突進するように向かっていく。

 鬼達も、一斉に、柚月達に襲い掛かり、綾姫達は、鬼と交戦しなければならなくなった。


「光黎!!」


『承知!!』


 柚月は、聖印能力・神懸りを発動し、光黎を取り込む。

 だが、彼の力を持ってしても、千草は、柚月を追い詰めようとする。 

 まだ、力が完全に目覚めていないのだろうか。

 それとも、千草が、全ての聖印を取り込んだがゆえに、その能力が異常なのか。

 千草は、爪で、柚月を切り裂こうとした。

 その時であった。

 朧が、九十九と千里を憑依させ、千草の前に立ち、攻撃を防いだのは。


「朧!!」


「兄さん、行って!!」


 朧は、柚月に死掩の元へ行くよう促す。

 死掩に対抗できるのは、柚月だけだからだ。

 朧も、柚月の援護をしたい。

 だが、今は、千草を食い止めなければ、どうにもならないであろう。

 千草は、朧が手にしている餡枇をはじき、爪で、朧に斬りかかる。

 だが、要が、千草の腕をつかみ、動きを止めた。


「海親!」


「拙者も助太刀するでござるよ、朧殿!!」


 千草は、暴れまわるが、要は、必死に千草にしがみつく。

 ここで、村正が、要に襲い掛かろうとするが、朧が、斬りかかる。

 だが、要が、ついに、耐え切れなくなりそうになり、体勢を崩しかけた。

 柚月は、要を助ける為に、千草に斬りかかろうとするが、和泉が、麗線を使って、千草の腕を捕らえた。


「和泉!!」


「なんとか、食い止めてやるさ。ほら、行きな!!」


「すまない」


 和泉も、柚月に先に行くよう促す。

 柚月は、申し訳なく感じながらも、死掩の元へ向かった。

 その時だ。

 夏乃と景時が、柚月の後を追ったのは。


「私も、行きます。柚月様」


「何とか、しないとね!!」


「ありがとう、夏乃、景時」


 柚月だけに背負わせるつもりはない。

 ゆえに、夏乃と景時も、柚月と共に戦うつもりでいた。

 相手が神であり、どれほど強敵であろうともだ。 

 仲間が、支えてくれると感じた柚月は、感謝し、ついに、死掩の元へたどり着き、構えた。


「行くぞ、死掩!!」


『いい、実にいいぞ!この力を、つぶしてやろう!!』


 死掩は、この状況に対して、喜びをかみしめているようだ。

 柚月達を殺すつもりなのだろう。

 いや、彼らが、勝てるわけないと踏んでいるようだ。

 柚月は、死掩に斬りかかろうとするが、死掩の前に、人々が立つ。

 それも、生気を失った姿で。

 彼らは、命を落とした者達であるが、死掩が、発動した技により、復活してしまったのだ。

 その名は、死灰復然(しかいふくねん)

 死体を復活させて戦わせる技であり、残酷な技であった。


「こ、こいつらは……」


『私が、殺した者達だ。どうだ?実にいいだろう?』


「こいつ……」


 いくら、死したと言えど、再び、命を奪えるわけもなく、困惑する柚月達。

 死掩は、不敵な笑みを浮かべている。

 この戦いの傍観者になろうとしているようだ。

 人の命を奪えるのか、試しているようにも思える。

 なんとも、卑劣なやり方であろうか。

 柚月達は、憤りを覚えた。

 しかし……。


――案ずるな。柚月。私に任せろ。


 光黎は、困惑する柚月達に対して、任せるよう告げる。

 すると、光黎は、光と炎を発動し、復活させられたものは、光と炎に包まれ消滅した。

 これは、光黎が、発動できる技だ。

 その名は、光焔万丈(こうえんばんじょう)

 光と炎で敵を討つことも、浄化することもできる。

 今回は、浄化したのであろう。

 復活させられた者達の魂を黄泉へ導くために。


『なっ!!』


――残念だったな。これで、死体を復活させることは、できないだろう。


 あっけなく、技を破られ、死掩は、動揺する。

 もう、死灰復然を発動した所で、柚月達を殺すことはできないだろう。

 ゆえに、封じられたと言っても過言ではなかった。


『さすがだな。光の神。なら、こいつは、どうだ!!』


 死掩は、柚月に襲い掛かろうとするが、夏乃が、時限・時留めを発動し、一瞬の時を止める。

 その間に、景時が、天次に天狗嵐を発動させ、柚月と死掩の間に、風を巻き起こし、死掩の行く手を阻んだ。

 

『人間風情が!!』


 死掩は、夏乃と景時に向かって、襲い掛かる。

 だが、柚月が、前に出て、死掩の攻撃を防ぎきった。

 死掩は、苛立ったようだ。

 柚月は、死掩にとって邪魔な存在でしかない。

 だが、柚月は、未だ、体が、慣れていないのか、思うように、行動ができないようだ。

 完全に覚醒していないと悟った死掩は、どうにかして、覚醒する前に、柚月を殺そうと、襲い掛かるが、柚月は、何とか、その場をしのごうと攻撃を防ぎきった。

 しかし……。


「ぐっ!!」


「朧!!」


 朧のうめき声が聞こえ、柚月は、振り向く。

 朧は、怪我を負ってしまったようだ。

 朧の体力は、限界を超えているのかもしれない。

 当然であろう。

 朧は、波長を合わせ、何度も、憑依を発動してきたのだ。

 無理をしているのだろう。

 それでも、朧は、体に鞭を打って、構えた。

 朧の様子を死掩が目にし、不敵な笑みを浮かべた。


『いい、実にいいぞ!!』


 死掩は、天を仰ぐ。

 まるで、何か企んでいるかのようだ。

 柚月達は、警戒し、構えた。


『千草、そいつを捕らえろ』


「っ!!」


「朧!!」


 死掩は、千草に命令する。

 すると、千草は、すぐさま、朧の首を腕で絞め始めた。

 朧は、きつく目を閉じ、もがこうとするが、千草の力の方が強く、もがけばもがくほど、絞められてしまう。

 要と和泉は、朧を助けようと千草に向かっていくが、村正が、二人に襲いかかり、行く手を阻んだ。


「ほらほら、どうしたの?これじゃあ、助けられないね?」


 村正は、柚月達をあざ笑う。

 柚月達は、すぐさま、朧の救出に向かおうとするが、ここで、柚月は、ある事に気付いた。

 死掩が、術を唱え始めたのだ。

 それも、自分に向かってではなく、朧を対象としている。

 柚月は、死掩が、発動する前に、朧を助けようとするが、死掩が、術を発動してしまったのだ。

 黒い塊が、朧の方へと向かっていく。

 柚月は、朧の前に出て、朧をかばい、黒い塊が、柚月を覆い尽くしてしまった。


「があああああああっ!!」


「兄さん!!」


 柚月は、絶叫を上げる。

 その時だ。

 神の光が、発動され、黒い塊が、消滅したのは。

 黒い塊が、消えさえると柚月は、傷を負って倒れてしまった。

 死掩が発動したのは、酔生夢死(すいせいむし)と言う技だ。

 黒い塊の中に、相手を捕らえ、滅ぼす技だが、光黎が、神の光を発動し、柚月を救出したのだ。

 だが、柚月は、重傷を負ってしまった。 

 朧は、手を伸ばすが、突如、千草が、朧を離し、朧の腹を殴りつける。

 朧のあばらが、何本も折れる音が響いた。


「ああああああぁっ!!」


「朧君!!」


 朧も、絶叫を上げ、倒れ込む。

 柚月も、朧も、戦闘不能となってしまったのだ。


――神懸りの力を発動したというのに、駄目なのか……。


 柚月は、力を込めようとするが、激痛により、込めることさえ叶わない。

 神懸りの力を持ってしても、死掩達に勝つことができないのだ。

 そう思うと、柚月は、あきらめかけてしまった。

 しかし……。


――しっかりするのだ!!


 突如、光焔の声が、柚月の頭の中に響いてきた。


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