表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖印×妖の共闘戦記―神話乃書―  作者: 愛崎 四葉
第十四章 覚醒と式神
179/204

第百七十八話 神聖なる力とは

 柚月達は、奥へと進む。

 笠斎曰く、光黎は、千草が、封印されていた場所よりも奥で眠っているというのだ。

 それも、何重もの結界を張っているらしい。

 それほど、厳重に封印されていたという事であろう。

 目覚める時まで。


「もう少しだ。もう少しで、光黎に会えるぞ」


「うむ」


 笠斎に言われ、光焔は、足早になりそうになる。

 早く、光黎に会いたいのであろう。

 自分の半身であり、自分を生み出してくれた光黎に。

 そう思うと、急いでしまうのだ。


「笠斎、一つ、聞きたいことがあるのだ」


「なんだ?」


「わらわは、本当は、今まで笠斎と会ったことがないのだ。でも、あった気がしたのは……」


「そりゃあ、お前が、光黎の半身だからだ。だから、わしも、知ってたんだよ」


「そうか……」


 光焔は、気になっていたことがあったようだ。

 それは、千草を殺しに行くとき、深淵の界の場所を知っていたことや、笠斎と始めて会ったというのに、始めて会った気がしなかったのは、自分が、光黎の半身だったからではないだろうかと。

 夜深が、妖ではないと言ってたいたのは、自分が、光の神だったからだと理解した。

 笠斎も、光焔の正体を知っていたようだ。

 だからこそ、何も言わず、迎え入れてくれたのであろう。


「ほら、着いたぜ」


 笠斎は、立ち止まる。

 光黎は、千草が封印されていた場所よりも、さらに奥で眠っていたのだ。

 笠斎は、結界を全て解き放つ。

 すると、圧倒的な力を柚月達は、感じ取った。


「すごい、力っす……」


「夜深もすごかったでごぜぇやすけど、光の神の力も、圧倒的でごぜぇやすね」


「そうっすね」


 真登も、高清も、その圧倒的な力を感じ取り、身震いしている。

 それほどの強さを肌で感じているという事なのであろう。

 なにせ、光の神は、創造主から生まれた神だ。

 それも、黄泉の神と互角に渡り合った。

 相当の力を持っていてもおかしくはないだろう。


「そりゃあ、そうだ。光黎は、神聖な力を宿したんだからな」


「けど、その神聖な力って何だい?」


「確かによくわかりませんわね。創造主の力と違いでもあるんですの?」


 笠斎は、その力の正体を語る。

 光黎は、神聖な力を宿したのだ。

 夜深を封印する時に、神聖な力を吸収したのであろう。

 だが、葵達の過去でも出てきた神聖な力とは、いったい何なのだろうか。

 自分達がその身に宿している聖印や創造主の力とは、異なった力なのだろうか。

 和泉も、初瀬姫も、思考を巡らせるが、見当もつかないようだ。

 それも、なぜ、地獄と化した獄央山に神聖な力が宿っていたのだろうかと。


「獄央山は、神の一族が、暮らしてた場所なのさ」


「あ、あの獄央山で、ですか!?」


「そうさ。しかも、神とだ」


 笠斎は、説明し始める。

 なんと、柚月達の先祖である神の一族は、獄央山で暮らしていたらしい。

 時雨は、驚きを隠せず、笠斎に問いかける。

 これは、おそらく、誰も、聞いたことのない話だ。

 ゆえに、信じられなかったのであろう。

 しかも、笠斎は、神の一族は、神々と暮らしていたという。


「これは、恐れいったね。俺達の先祖は、神様と暮らしてたんだ」


「僕も、知らなかったよ~。さすがは、神の一族ってところなのかな?」


「まぁ、そんなところだろうな。神の一族ってのは、創造主が生み出した特別な人間達の事だからな」


 柘榴も、景時も、信じれないようだ。

 神の一族についても、葵達の過去を見なければ、知らなかった事だからだ。

 笠斎曰く、神の一族とは、創造主が生み出した特別な力を持つ人間たちの事らしい。

 神の一族を生み出した理由は、和ノ国を守らせるためだったという。

 その特別な力こそが、聖印だったのだ。

 その聖印は、妖ではなく、災いから守るために、生みだされたものだという。


「神の一族は、供物や祈りを捧げていたんだ。毎日な。神を信じてたんだよ。信じたからこそ、新たな力が生まれた。それが、神聖な力ってことだ」


「信じてたから、力が生まれた?」


「そういうこった」


 その時代は、人間たちは、神様を信じていなかったようだ。

 だが、神の一族だけは、神を信じていた。

 当然であろう。

 神々と暮らしていたのだ。

 神々に守られている事を実感したのかもしれない。

 ゆえに、神の一族は、供物や祈りを神にささげた。

 信じたからこそ、新たな力が生まれたらしい。

 その力こそ、神聖なる力だというのだ。

 透馬は、笠斎の言葉を繰り返すかのように呟いた。


「それって、聖印とは違うって事?」


「おうよ。神聖な力は、神の一族、人々の信仰心から生まれたものだ。まぁ、人の心から生まれた力ってやつだな」


 和巳は、笠斎に問いかける。

 神聖なる力は、聖印とは、異なるようだ。

 笠斎曰く、神聖な力は、信仰心から生まれた為、神が生み出した物ではないようだ。

 つまり、人々の心から生まれた。

 人々が生み出したと言っても過言ではないのだろう。


「よく、わかんねぇんだけど」


「詳しく聞かせてくれないか?」


 九十九も、思考を巡らせるが、やはり、まだ、よくわかっていないらしい。

 それほど、神聖なる力は、謎に満ちているという事だろう。

 千里でさえも、まだ、わからない部分があるようだ。

 ゆえに、笠斎に、頼んだ。

 神聖な力について、詳しく教えてほしいと。

 これは、柚月達にとっても、武器になりうるからだ。

 静居に打ち勝つことができるかもしれない。 

 そう考えたのだろう。


「人は、心の強さに左右される。聖印もそうだろ?」


「確かに、そうですね」


「信じる心は、強き心だったんだよ」


 笠斎は、心について語る。

 心が強ければ強いほど、人の力も強くなる。

 それは、聖印にも同じことが言えるのだ。

 聖印も、心の強さで、制御できる。

 夏乃は、納得したようだ。

 笠斎が言うには、信じる心は、強い心を持っているからだという。

 信じれば信じるほど、強い心を持っていたことになるのだろう。


「祈りを捧げるってことは、神様を信じてるってことだ。祈りが、力に変わったんだよ」


「なんとも、興味深い話じゃ」


「調べたくなってでござるな」


 神の一族が、祈りを捧げたのは、神を信じていたからだ。

 その祈りが、いつしか、神聖なる力に変わったのだろう。

 神の一族は、特別な力をその身に宿していたのだ。

 祈りが力に変わっても不思議ではない。

 神聖なる力とは、神の一族が残した置き土産だったのかもしれない。

 春日も、要も、元研究者であるがゆえに、調べたくなったようだ。


「それで、神聖なる力とは、具体的に、どのような力なのでしょうか?」


「奇跡の力、ってところかもしれねぇな」


 美鬼は、笠斎に、問いかける。

 まだ、神聖なる力についてわかっていないことがあるからだ。

 神聖なる力が生まれた過程は理解できたものの。

 神聖なる力とは、どのような力なのかは、見当もつかない。

 聖印のように神の力なのか、それとも、別なのか。

 笠斎は、神聖なる力を奇跡の力と思っているらしい。

 それも、あくまで推測でしかないようだ。


「抽象的だな」


「まぁ、わしも、実の所よくわかってないんだよ。神聖なる力が生まれたのも、予想外だったからな」


 柚月も、意外だったようだ。

 笠斎は、和ノ国に関して熟知している。

 妖の事も、神々の事もだ。

 ゆえに、神聖なる力についても、熟知しているものだと思っていた。

 だが、笠斎も、神聖なる力に関しては、あまり、わかっていないようだ。

 人々から、力が生まれたのは、笠斎にとっても、予想外だったらしい。

 ゆえに、生まれた過程は、知っていても、力の正体については、憶測でしか語れないようだ。


「さて、話は、終わりだ」


「ほら、光焔」


「う、うむ」


 神聖なる力について、話を終えた笠斎は、歩き始める。

 光焔も、後を追うように歩きだし、柚月達も、ゆっくりと進み始めた。

 奥では、光黎が、静かに眠っている。

 ついに、光焔は、光黎と再会を果たしたのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ