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聖印×妖の共闘戦記―神話乃書―  作者: 愛崎 四葉
第十三章 皇城家の双子の兄弟
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第百五十九話 聖印一族の誕生

「葵、私は、どうすれば……どうすれば、君を助けられる……」


 瀬戸は、葵を助ける方法を模索し始める。

 どうすれば、葵を助けられるのか。

 ここは、静居に懇願したほうがいいのではないかと考えるが、もし、葵と同じ能力を身に着けたとしても、神と契約しない限り、意味がない。

 そう思うと、瀬戸は、躊躇していた。

 しかし……。


「貴方は、力が欲しいのか?」


「え?」


 静居は、瀬戸に問いかける。

 瀬戸は、驚き、戸惑いを隠せなかった。


「妖と戦う力が欲しいのかと聞いているんだ」


 静居は、改めて、瀬戸に問いかける。

 確かめているのだろう。

 瀬戸が、戦う力を欲しているのかどうか。

 もちろん、静居も、瀬戸の心情を察している。

 だが、彼の言葉を聞きたい。

 そう、願っていたのであった。


「はい。葵を、助けたいんです」


「ならば、私の代わりに頼めるか?」


「それは、どういう意味ですか?」


 瀬戸は、自身の想いを静居に告げる。

 葵を助ける為に、力が欲しいと。

 静居は、瀬戸に葵の事を託した。

 だが、瀬戸は、どういう意味なのか、分かっていないようだ。

 混乱しているのであろう。 

 静居の代わりと言うのは、一体、どういう意味なのか。


「聖印を授けるという事だ」


「いいのですか?」


 静居は、瀬戸に聖印を授けようとしているのだ。

 今、彼は、体を動かせても、戦う力は、残っていない。 

 だが、このままでは、葵の命が危うい。

 瀬戸なら、葵を助けてくれるであろう。

 愛しい妹の為に、静居は、瀬戸に聖印を授ける事を決意したのだ。

 瀬戸は、驚きながらも、静居に尋ねる。

 本当に、聖印を授かってもよいのか、迷っているのだろう。


「もちろんだ。瀬戸、頼んでもよいか?」


「はい!もちろんです!!」


 静居は、改めて、瀬戸に懇願した。

 葵を助けてほしいと。

 もちろん、瀬戸は、断るはずがない。

 葵を守るために、力を欲していたのだから。

 ついに、瀬戸も、決意を固めたのだ。

 妖達との戦いに身を投じる事を。


「夜深」


「ええ」


 静居は、夜深に指示する。

 瀬戸に聖印を与えるようにと。

 夜深は、うなずき、瀬戸に迫った。

 そして、瀬戸に力を与えたのだ。


「っ!!」


 瀬戸も、葵と同様、体に衝撃が走ったのか、目を見開く。

 苦しそうに、呼吸を繰り返しながら。

 だが、体が、神の力に馴染んできたらしい。

 瀬戸は、ゆっくりと、呼吸を整えると、首筋に違和感を覚えた。

 まるで、力が、込められているような感覚があったのだ。

 瀬戸は、首筋に触れると、力を感じ取っていた。


「こ、これは……」


「それが、貴方の聖印。鳳城家の聖印よ。鳳城家の能力は、異能。異なる能力を持つわ」


「異能……」


 夜深曰く、瀬戸の聖印、鳳城家の聖印は、異能らしい。

 静居や葵のように同じ能力ではなく、異なる能力を持っているようだ。

 確かに、瀬戸は、鳳城家は、異なる自然を纏う力があったと聞いたことがある。

 それも、昔話であり、その力を発現で来た者はいなかったため、信じてなどいなかったのだが、夜深の話を聞いた時、確信を得た。

 鳳城家も、微弱ながら、神の一族の力を授かっていたのだと。


「さあ、あの子を助けてあげて」


「わかった」


 夜深は、瀬戸に頼む。

 葵を助けてほしいと。

 もちろん、それは、うわべだけの言葉だ。

 夜深は、葵を助けようとは、微塵も思っていない。

 瀬戸に聖印を授けたくもなかったのだ。

 だが、静居の前で、静居の頼みを拒絶することもできず、指示通りに、瀬戸に聖印を託した。

 そうとも知らない瀬戸は、刀を鞘から抜いて、すぐさま、聖印能力を発動する。

 彼の聖印能力は、異能・空羅(いのう・くうら)

 空を飛ぶ事が、可能となったのだ。

 だが、それだけではない。

 それと同時に、空気の刃を身に纏い、妖達を切り刻むことができる。

 ゆえに、瀬戸は、葵の前に、出現し、妖達を切り裂いた。


「瀬戸!!」


「さあ、やろう。葵!!」


「うん!!」


 瀬戸が駆け付けた事に対して、葵は、驚いているようだ。

 だが、すぐさま、気付いた。

 瀬戸も、聖印能力を授かったのだと。

 瀬戸は、葵に、共に戦おうと背中を押す。

 葵は、うなずき、瀬戸と共に、妖と戦闘を繰り広げた。

 瀬戸には、まだ、伝えていない。

 葵が、妖達の事をどう思っているのか。

 だからこそ、瀬戸が、妖を討伐してしまった事に、心が痛んだ。

 だが、静居が、ひそかに、葵に教える。

 瀬戸も、浄化の力を手に入れたのだと。

 聖印は、妖を浄化する力が備わっているのだからと。

 つまり、瀬戸が、聖印能力を発動する事により、妖達は、浄化され、救われているというのだ。

 それを聞いた葵は、安堵し、神の光を発動して、妖達を浄化した。


「すごい」


「あの力を私達も、授かれば……」


 葵達の戦いを見ていた城家の者は、驚いてはいるものの、気付いたようだ。

 瀬戸が、聖印を授かったという事は、自分達も、聖印を授かることができるのではないかと。

 つまり、自分達も、妖と戦う力を身に着けられるというのだ。

 彼らは、その力を授かりたいと心から願っていた。

 葵と瀬戸は、戦い続け、ようやく、妖達は、出現しなくなる。

 彼らを恐れたのかもしれない。

 そして、ついに、戦いは、終わった。

 全ての妖達を浄化する事に成功したのだ。


「なんとか、倒せたみたいだな」


「うん、でも……」


 妖達を討伐できたと感じ、安堵する瀬戸。

 正直、命を奪われてもおかしくない状況であった。

 だが、葵が、いたから、勝てた。

 瀬戸は、そう、感じているようだ。

 葵も、素直に喜びたいところではあるが、内心は、複雑だ。

 妖達を浄化する事でしか、救えないのだから。


「気にすることではない。お前のおかげで、彼らは、救われた。感謝する」


「光黎。ありがとう」


 葵の心情を察したのか、光黎は、葵に告げる。

 葵達のおかげで、妖達は、救われたのだと。

 葵も、光黎の言葉で救われた。

 そして、妖達の事を知りたいと願うようになったのだ。

 どうすれば、浄化しなくとも、妖達を救えるのか、知りたいと。

 葵と瀬戸は、ゆっくりと、地に降り立ち、葵は、神懸かりを解除し、光黎が、葵から出る。

 すると、静居と夜深が、葵達へと歩み寄った。


「ありがとう、二人とも。おかげで、助かった」


「こちらこそ、ありがとう。この力のおかげで、葵を助けられた」


 静居は、葵と瀬戸に感謝の言葉を述べる。

 二人が、力を授からなければ、静居も、城家の者も、命を落とし、全滅していたかもしれないからだ。

 瀬戸も、静居が、力を授けるように夜深に指示してくれたからこそ、葵を助けられたと感じていた。

 その時であった。


「素晴らしい力だ!!」


「父上……」


 突如、瀬戸の父親が、前に出る。

 しかも、今までとは、打って変わって、静居が授かった力をほめたたえているのだ。

 あれほど、恐れ、罵ってきたというのに。

 彼の代わり様には、葵も、瀬戸も、驚いている。 

 だが、静居と夜深は、冷静さを保っているようだ。

 彼が、豹変した所で、何の疑問も抱いていないのだろう。


「聖印と言ったな。その力、我々にも、授けてくれないだろうか……。そ、それと、今までの事を謝罪したい」


 瀬戸の父親は、聖印を授かりたいと申し出た。

 力を欲しているようだ。

 妖達から、身を守るには、家族を守るには、聖印の力が、必要であると感じ取ったのだろう。

 懇願した直後、恐れを抱きながら、瀬戸の父親は、頭を下げる。

 今までの仕打ちに対して、後悔しているのだろう。

 葵は、静居が、どうするのか、心配になりながらも、視線を向けた。

 瀬戸の父親を許すのだろうか。

 それとも……。


「いいでしょう」


 静居は、あっさりと、瀬戸の父親にも、聖印を授ける事を承諾した。

 罵られていたとしても、静居は、何も、感じなかったのだろうか。

 いや、もしかしたら、戦力が必要だと考えたのかもしれない。

 蔑まれてきたとしても。

 静居は、前に出て、城家の者達へと視線を向ける。

 城家の者達は、息を飲んだ。

 静居は、何をするつもりなのだろうかと、不安に駆られて。


「城家の者達よ。聞いてほしい。私達は、かつて、神の一族と呼ばれていた。その力は、薄れていったと言われているが、まだ、眠っているだけなのだ」


 静居は、城家の者達に語りかける。

 神の一族と呼ばれていた自分達には、特別な力をその身に宿していたのだ。

 だが、時がたつにつれ、力が弱まってしまったかと思っていたのだが、どうやら、そうではないらしい。

 自分達の中で眠っていただけだというのだ。


「夜深が、力を与える事により、潜在能力が開花され、聖印が、浮かび上がる。我々は、生まれながらにして、聖印の力を内に秘めているのだ!」


 静居曰く、自分達の身に宿る妖を追い返す力と言うのは、聖印の元らしい。

 元々は、聖印を授かっていたというのだ。

 夜深が、力を与える事により、聖印は、目覚め、開花される。

 つまり、城家の者達ならば、皆、聖印を授かっており、その力を呼び覚ますことができるのだ。


「聖印が浮かび上がれば、聖印を持つ者から生まれた子は、生まれながらにして、聖印を持つことができる。つまり、そなたたちが、聖印を授かれば、親から子へと、聖印が、受け継がれることにもなる!!」


 今後、聖印を持つもの同士の子が生まれた場合は、夜深が、力を与えなくとも、聖印が体に浮かびあがった状態で、生まれてくるというのだ。

 そうなれば、聖印は、受け継がれていくことになるだろう。

 戦力は、拡大するという事だ。


「す、素晴らしい!!」


「聖印が、あれば、私達は、妖に対抗できる!!」


 城家の者は、希望に満ちた表情で、口々に叫ぶ。

 忌み嫌われていた力が、妖に対抗できる力だったのだ。

 もう、恐れるものは、何もない。

 聖印さえあれば、命を奪われる可能性も、低くなるのだから。

 妖を討伐し、戦いに終止符を打つこともできるのではないかと、推測した者もいるようだ。


「さあ、共に戦おう。和ノ国を守ろう。今日から、我々、城家は、聖印一族となるのだ!!」


 こうして、聖印一族が誕生し、城家の者は、喜び合った。

 葵も、瀬戸も、嬉しそうに微笑んでいた。

 皆を守れることが、うれしいのであろう。

 だが、まだ、この時、葵達は、何も知らなかった。

 聖印一族と妖の戦いが、長く続くことも、静居が、和ノ国を滅ぼすという野望を抱いていた事を。


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