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聖印×妖の共闘戦記―神話乃書―  作者: 愛崎 四葉
第十二章 真実を求めて
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第百四十六話 幻を打ち消すほどに

 幻帥の本体と分身が一気に柚月達に襲い掛かる。

 柚月達は、分かれて、各個撃破となったが、相手は神だ。

 しかも、それぞれの個体が、同じ戦闘の力を持っている。

 ゆえに、何人もの幻帥が、一度に現れたと言っても、過言ではないのだ。

 柚月達は、苦戦し、劣勢を強いられていた。 


「これ、まずい状況、だよね……」


「これでは、皆、全滅してしまう……」


「どうしたらいいのだ……」


 柚月、光焔、柘榴、真登、春日、初瀬姫、時雨、透馬が、幻帥の本体と死闘を繰り広げていたが、戦力が分散され、連携がうまく取れない。

 幻帥の幻術にかかっているわけではないが、幻帥に斬りかかるが、空を切ったような状態だ。

 斬りかかる直前に、幻帥は、幻影を生み出し、回避してしまうのだ。

 まるで、分身と相手をしているような感覚に陥る。

 このままでは、全滅してしまう。

 柘榴も、春日も、光焔は戸惑いを隠せず、柚月達は、不安に駆られていた。


――本体を倒さないことには、どうにもならないっすよ!!


「けど、こんなんで、倒せると思う?」


――そ、それは……。


 柘榴に憑依した真登は、本体を倒さなければ、長期戦になり、全滅も免れない。

 そう感じているのであろう。

 だが、この状況では、幻帥に打ち勝つ方法が、見いだせないのだ。

 柘榴は、冷静な反応で、真登に問いかける。

 真登は、口ごもり、答えることができなかった。


「こやつは、分身を倒しても、生みだすはずじゃ……なんとかせねば……」


 今は、朧達が、幻帥の分身の相手をしてくれている。

 幻帥は、二柱しか、分身を生み出せないようだ。

 だが、分身を倒しても、幻帥は、分身を生み出してしまうであろう。

 本体を討伐しなければ、勝ち目はない。

 柚月は、神威空浄・光刀を発動し、光速移動で、幻帥に斬りかかるが、幻帥は、斬られる直前に、幻帥を生み出し、回避してしまう。

 しかも、幻帥は、柚月の背後に回った。


「柚月!危ない!!」


 透馬が、とっさに叫び、柚月が振り向く。

 だが、回避する間もなく、幻帥が、錫杖を刀に変えて、柚月を貫こうとしていた。

 その時だった。

 泉那の幻が、幻帥に向かっていき、幻帥は、とっさに回避したのは。

 そのおかげで、柚月は、助かったのだ。

 誰が、柚月を助けたのか、全員、気付いており、柚月達も、幻帥も、振り向いた。


「あ、あれは……もしかして……」


「んもう、遅いですわよ!!」


「本当だぜ」


 透馬は、驚きを隠せず、初瀬姫は、腰に手を当てて怒っているようだ。

 時雨も、やれやれと感じながらも、嬉しそうに呟く。

 それほど、苦戦していたという事なのだろう。

 だが、同時にほっとしているはずだ。

 なぜなら、泉那が、復活したのだ。

 綾姫と瑠璃のおかげで。


「ごめん、待たせたわね」


『ごめんなさい。けど、綾姫達を怒らないであげて』


 綾姫と泉那は、謝罪しながら、駆け付ける。

 瑠璃は、朧達の方へ加勢しに行ったようだ。

 綾姫達も焦燥に駆られていたのだ。

 早くしなければ、柚月達が、全滅してしまうと。

 だが、冷静さを保ちながら、治療に取り掛かったため、泉那の傷は、ふさがった。

 時間は、かかってしまったものの、彼女達のおかげで、完全に復活を遂げた泉那は、柚月達を守るように、前に出た。


『ほほう、復活なさいましたか』


『ええ』


 幻帥は、笑みを浮かべながら、泉那に語りかける。

 神が、増えたところで、状況は変わらないと言いたいのであろう。

 こちらは、三柱の神が、相手なのだから。

 だが、泉那は、焦燥に駆られた様子を見せない。

 冷静さを保っているようだ。

 たとえ、不利な状況であったとしても。


『ですが、貴方は、私に勝てません。先ほども、私の分身を前に、敗れたではありませんか』


『そうね。でも、彼らとなら、負ける気がしないわ』


 先ほど、泉那が幻帥に敗れたのは、幻帥が、変幻出没で二柱の分身を生み出し、泉那は、それに、ほんろうされてしまったからだ。 

 だが、今回は、柚月達がいる。

 連携をうまくとれば、分身さえも、打ち破り、幻帥に勝てるはずだ。

 そう、確信しているのであろう。


『あなただけで、私を倒せないとは』


『なんとでもいいなさい。過信すぎても、足元を救われるだけよ』

 

『負け犬が!』


 幻帥は、神である泉那が、人間の力を借りて、自分に勝とうとしている事をあざ笑っているようだ。

 だが、罵られても、冷静さを保っている泉那。

 彼女に対して、幻帥の方が怒りを露わにしたようだ。

 自分が、泉那と人間に負けるはずがない。

 これは、戯言だと。

 幻帥は感情任せに、泉那に襲い掛かった。


『これなら、どうかしら?』


『やりますね。さすが、と言ったところでしょうか?』


 泉那は、明鏡止水で幻を生み出す。

 幻達が一斉に現れ、二柱の分身へと向かっていく。

 これで、朧達の状況は変わるだろう。

 そして、柚月達にとっても、状況が変わっていくはずだ。

 泉那が、味方となってくれるのだから。


「泉那、助かった」


『私こそ、助かったわ。ありがとう』


 柚月は、泉那にお礼を言う。

 彼女のおかげで柚月は、救われたのだ。

 もしかしたら、命を落としていたかもしれない。

 だが、それは、泉那も、同じ。

 柚月達が、駆け付けてくれたからこそ、殺されずに済んだのだ。


「今度こそ、幻帥を倒すのだ!!」


「そうだな!!」


 柚月達は、構える。

 今度こそ、幻帥を討伐するために。

 柚月達は、泉那と共に、向かっていった。


『甘い!!』


 幻帥は、衝撃波を発動する。 

 だが、泉那が、鏡花水月を発動して、泉の盾を生み出し、衝撃波を防ぐが、それでも、防ぎきれず、衝撃波は、分散されながらも、柚月達に襲い掛かろうとした。

 柚月も、八咫鏡と八尺瓊勾玉を駆使して、衝撃波を跳ね返し、吸収した。

 さらに、続けざまに、光焔が、神の光を発動する。

 神の光を浴びた幻帥は、目がくらみ、目を閉じてしまう。

 その隙に、柚月が、神威空浄・光刀を発動するが、幻帥は、とっさに回避する。

 どうやら、幻を生み出す間もなかったようだ。

 やはり、泉の神がいてくれるだけで状況は変わる。 

 心強いと感じる柚月達であった。


「甘いのは、お前の方なのだ!わらわ達は、負けるはずがないのだ!!」


『ちっ!!』


 神が参戦した所で、状況が変わるわけがない。

 勝つのは、自分だ。

 そう、確信していた幻帥は、追い詰められている。

 光焔の言う通り、甘かったのだ。

 たかが、人間ごときと思ったのであろう。

 連携さえ、崩せるはずだと。

 幻帥は、錫杖を刃と化し、柚月達に斬りかかろうとする。

 だが、幻帥は、背後から、槍で貫かれてしまう。

 何が、起こったのか、状況を把握できな幻帥。

 なんと、柘榴が、霧脈を発動して、姿を消し、幻帥の背後に回っていたのだ。


「残念。見えなかったね」


――神でも、柘榴の霧脈は、有効みたいっすね!!


『私を欺けるとは!!』


 柘榴の霧脈は、神でさえも、欺けてしまう。

 いや、幻帥は、気付いていなかったのだろう。

 柘榴が、姿を消したことさえも。

 それほど、過信していたのだ。

 一人増えようが、負けるはずがないと。

 ほんろうされた幻帥は、怒り任せに、錫杖を柘榴に向けて、振り下ろした。

 しかし……。


「こいつでどうだ!!」


「まだまだ、行くぞい!!」


 透馬が、聖生・岩玄雨を、春日が、空鳥乃羽を発動し、無数の岩玄と刃と化した羽が、幻帥に向かって降り注ぐ。

 幻帥は、岩玄と羽を全て切り裂くが、時雨が、跳躍し構える。

 先ほどのは、おとりだったのだ。

 それに、気付いた幻帥は、とっさに、回避しようとするが、時雨の葉碌が、幻帥の錫杖に巻きついた。


「こいつで、終いだ!!」


『ちっ!!』


 時雨が、木葉乱舞を発動する。

 刃と化した葉が、幻帥を切り刻む。

 幻帥は、錫杖を振り回し、強引に、葉碌から逃れるが、劣勢を強いられたようなものだ。

 泉那が、加勢しただけで、状況が一変してしまうのだから。


『私をなめるなぁ!!』


「なめてないわ。皆、全力よ!!」


 幻帥が、感情任せに、錫杖を振り上げ、柚月達を薙ぎ払おうとするが、綾姫が、結界・水錬の舞を発動し、防ぎきる。

 もちろん、泉那が、力を送ってくれたおかげで、防ぎきれたのだ。

 これで、幻帥は、衝撃波を発動しても、柚月達に傷を負わせることは不可能に等しいであろう。

 今の綾姫が発動した結界は、今までで、一番強力なのだから。


「行って!!」


「ああ!!」


 柚月、光焔、そして、泉那が、幻帥に向かっていく。

 先陣を切ったのは、泉那だ。

 水を全身に纏って、懐に飛び込み、幻帥を貫く。

 その名は、背水之陣(はいすいのじん)と言う。

 幻帥は、うずくまるが、これで、終わるはずがない。

 光焔が、草薙の剣にふれ、神の光を送り込む。

 柚月は、光焔と共に、神威空浄・光刀を発動した。


『ぐはああっ!!』


「分身が……」


 ついに、幻帥が、絶叫を上げ、片膝をつく。

 柚月達は、幻帥を追い詰めたのだ。

 追い込まれたがために、幻帥が、生み出した分身も、瞬く間に消滅し、朧達は、難を逃れた。

 ここまで、追い込めば、幻帥を消滅に追い込むことができる。

 誰もが、そう思っていた。

 しかし……。


『こ、こうなれば、お前を!!』


「兄さん!!光焔!!」


 幻帥は、力を振り絞り、柚月と光焔に向かって衝撃波を放った。

 朧達は、柚月達を助けようと駆け付けに行くが、幻帥は、変幻出没を発動して、二柱の分身を生み出し、彼らの行く手を阻んだ。

 柚月は、光焔を連れて、光速移動で、回避しようとするが、衝撃波はどこまでも、追ってくる。

 このままでは、光焔を巻き添えにしてしまう。

 危機を感じた柚月は、光焔を強引に後ろへ押し出し、八咫鏡を手にした。

 防ぎきるつもりだ。

 しかし、綾姫が、とっさに柚月の前に立ち、結界・水錬の舞を発動しようとするが、衝撃波をもろに受けてしまい、柚月と共に吹き飛ばされた。


「綾!!」


 柚月は、綾姫を抱きかかえる。

 綾姫は、重傷を負い、意識を失ってしまった。


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