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聖印×妖の共闘戦記―神話乃書―  作者: 愛崎 四葉
第十二章 真実を求めて
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第百四十五話 正体を暴いて

 柚月を殺そうとした成平であったが、柚月に防がれてしまう。

 これは、成平にとって予想外だ。

 成平は、体を震わせたまま、柚月を見ていた。


「き、貴様、謀ったのか!!」


「いいや。そうではない」


「何!?」


「少し、考え事をしていただけだ!」


 戸惑いながらも、柚月に問いただす成平。

 柚月は、騙したつもりはなく、考え事をしていただけだと、答え、成平の霊刀をはじき、さらには、異能・光刀を発動して、成平が、発動していた術を全て切り裂いた。


「術が!!」


 術から解放された朧達。

 だが、試練は、まだ、終わっていない。

 柚月は、異能・光刀を発動したまま、成平に斬りかかる。

 成平は、柚月の光速移動に反応し、柚月の斬撃を全て防ぎきり、柚月と成平は、刀をぶつけ合うようにつばぜり合いを始めた。

 斬撃を全てはじかれたというのに、柚月は、冷静な反応だ。

 彼は、何を知ったのだろうか。


「この程度で、私に勝てると?」


「いいや、思っていない。試しただけだ」


「何?」


「俺の聖印能力は、異能・光刀。光の刃を身に纏い、光速で敵を斬る。この能力を持っているのは、俺一人だ。ゆえに、鳳城家であっても、同じ聖印能力を持つ者はいない。ましてや、俺の光速移動に反応できるわけがない」


「っ!!」


 柚月は、成平の秘密を見抜いていた。

 だが、その秘密を暴く方法を見つけられなかっただけだ。

 黄泉の乙女と会話を交わしたことにより、柚月は、秘密を暴く方法を見つけた。

 柚月と成平が、同じ鳳城家であり、聖印能力が異なる。

 ゆえに、柚月の光速移動に反応できるわけがない。

 同じ光速移動を成平が発動できるわけがないのだから。

 柚月は、成平が、自分の光速移動に反応できるか試した。

 成平が、本物の成平だとしたら、異能であるがゆえに、光速移動に反応できるわけがない。

 もし、反応したとしたら、それこそ、違和感でしかない。

 つまり、目の前にいる成平は、成平ではないという証拠であった。


「もし、反応できるとしたら、それは、静居と夜深から創造主の力を与えられたものか、夜深に付き従う神々どもだけだ!!」


 柚月は、成平の正体を暴いた。

 彼は、静居側に着いている人間、または、神々だと。

 柚月は、成平の霊刀をはじき、突きを放った。

 光速移動で。

 成平は、すぐさま、間合いを詰められ、反撃する隙さえ見いだせなかった。


「ちっ!!」


「っ!!」


「兄さん!!」


 成平は、衝撃波を放った。

 それは、静居と夜深が発動したものだ。

 成平が、それを発動できるという事は、本来ならあり得ない。

 柚月は、とっさに、八尺瓊勾玉を発動し、衝撃波を吸収し、後退する。

 衝撃波は、吸収しきれたようだ。

 朧達は、慌てて、柚月の元へと駆け寄り、構えた。


『なるほど、知られてしまったようですね』


「やはり、お前だったか。幻帥」


 成平は、不敵な笑みを浮かべながら、正体を明かす。

 なんと、柚月達の前に現れたのは、幻帥だ。

 だが、柚月は、驚きも戸惑いもしない。

 なぜなら、見抜いていたからだ。

 幻帥が、成平に、化けていた事を。


「兄さん、気付いてたんだな」


「そのようだな」


 朧達も、成平が、本物の成平ではなく、幻帥が化けていたと見抜いていたようだ。

 これは、幻帥が、最も得意とする技、変幻自在(へんげんじざい)だ。

 幻術で、別の姿へと化け、相手をほんろうする。

 これを見抜いた者はいない。

 この技を見抜いたのは、柚月達だけだ。

 それでも、幻帥は、驚きはしなかった。

 柚月達なら、あり得ると思ったのだろう。

 自分の技を看破するのではないかと。


『まさか、見破っていたとは、いつからですか?』


「戦えと言った時からだ。お前の目は、俺を殺そうとしていたのは、わかったからな」


『なるほど。表情が出てしまいましたか』


 柚月は、成平から試練を与えられた時に気付いたようだ。

 今、目の前にいる成平は、偽物だと。

 なぜなら、成平の目に殺意が宿っていたからだ。

 本気で、試練を乗り越えさせるためではない。

 殺すためだと。 

 成平は、そのような男ではない。

 柚月は、そう、察していた。

 ゆえに、幻帥が、成平に化けていたのだと悟ったのだ。

 一瞬だったとはいえ、見抜かれてしまった幻帥は、残念がっている。

 感情を押し殺しておけばよかったと。


「成平は、どこだ!」


『その前に、彼女の事は、よろしいのですか?』


「彼女?まさか!!」


 成平の居場所を問いただす柚月。

 だが、幻帥は、答えようとしない。

 それどころか、「彼女」に関して尋ねたのだ。

 綾姫は、「彼女」とは、誰のことなのか、察してしまったらしく、顔が青ざめていくのを感じた。

 綾姫の反応をうかがっていた幻帥は、不敵な笑みを浮かべ、術を解く。

 すると、奥に、傷だらけになって、倒れている泉那が姿を現した。


「泉那!!」


「私の邪魔をしようとしたので、眠らせてあげましたよ。あなた方が、現れてしまったので、殺せませんでしたが」


 どうやら、幻帥は、柚月達が、地下に入る前に、ここへ現れたようだ。

 夜深に命じられたからなのかは、わからない。

 いや、答えるつもりはないだろう。

 おそらく、柚月達が、瀬戸に会いに行くのを知り、瀬戸を殺そうとしたのであろう。

 だが、幻帥の行動にいち早く気付いたのが、泉那だ。

 泉那は、幻帥から、瀬戸を守るために、死闘を繰り広げたのだ。

 幻帥の幻術を見抜けず、倒れてしまったのだろう。

 幻帥は、泉那を殺そうとしたのだが、自分が、予想していたよりも早く、柚月達が、ここへ到達してしまったのだ。

 ゆえに、幻帥は、柚月を殺すために、成平へと姿を変え、柚月達の前に現れたようだ。

 成平の魂が、ここにいる事を知っているがゆえに、その状況を利用したのだろう。

 綾姫は、泉那の元へ向かおうとする。

 だが、彼女の前に、幻帥が立ちはだかり、柚月が、綾姫を守るように前に出た。


『おっと、通しませんよ?』


「幻帥!」


 幻帥は、柚月達を泉那の元へ行かせるつもりはないようだ。

 なぜなら、泉那までもが、戦闘に加われば、圧倒的に、不利になってしまうからであろう。

 いくら創造主の力を授かった幻帥であっても、柚月達の戦力には、敵わない。

 それほど、柚月達は、幻帥にとっても、厄介なのだ。


「許せないのだ!!絶対に!!」


「その通りだぜ」


「なんとしても、こいつを倒すぞ!」


 卑劣なやり方で、柚月を殺そうとした幻帥に対して、光焔は怒りを覚えた。

 そして、泉那でさえも、殺そうとしたのだ。 

 これは、許されないことであろう。

 光焔は、こぶしを握り、体を震わせた。

 九十九も、同じことを思っていたようで、怒りを露わにして、紅椿を鞘から引き抜いた。

 柚月達も、武器を構える。

 幻帥を討伐すると決意したのだ。


『神である私を倒せるとでも?』


「倒さなきゃいけないんだ。和ノ国を救う為にな!」


『戯言を!』


 幻帥は、神である自分を倒そうとしている柚月達に対して、苛立ったようだ。

 人間ごときが、神を倒せるはずがない。

 戦魔は、消滅したが、あれは、制御できない力によるものであり、発動は困難を極める。

 発動される前に、柚月達を殺せばいいと推測しているようだ。

 だが、柚月達は、決して、あきらめていない。

 幻帥を、必ず、倒すと宣言した。 

 和ノ国を救う為に。

 余計に幻帥を苛立たせる。

 下等な人間や妖共に負けるはずがないと。

 

「行くぞ!!」


 柚月達は、一斉に、幻帥に向かっていく。

 幻帥は、幻術を発動しようとするが、その前に光焔が、神の光を発動し、目をくらませる。

 神と言えど、神の光には、耐えられないようだ。

 その隙に、柚月達は、技を発動し、幻帥に向かっていく。

 幻帥は、柚月達の技を錫杖でかき消してしまうが、追い込まれそうになる。

 その間に、綾姫と美鬼を憑依させた瑠璃は、泉那の元へ向かっていった。


『ちっ!』


 いくら神と言えど、柚月達の戦力を防ぐことは、容易ではないようだ。

 一般隊士や聖印隊士達とは違う。

 彼らの戦闘能力は、抜きんでている。

 ゆえに、連携をとられては、幻帥でさえ、一瞬で追い詰められてしまうのだ。

 しかも、幻術が効かないのであれば、尚更なのだろう。

 柚月達は、幻帥を仕留めるつもりで、向かっていった。

 しかし……。


『これならどうです!』


「っ!!」


「こ、これは!!」


 幻帥は、技を発動する。

 だが、それは、幻術ではない。

 変幻自在でもない。

 二柱の幻帥が、柚月達の前に姿を現したのだ。

 柚月達を追い詰めるように。

 柚月達は、立ち止まり、あたりを見回した。

 何が起こっているのか、察してしまったようだ。


『ふふふ、素晴らしいでしょう?私の幻は、実体を生み出せます。ゆえに、この者たちは、私と同じ能力を持っている。簡単には、消せませんよ?』


「ちっ……」


 幻帥は、自分の分身を生み出したのだ。

 その名は、変幻出没(へんげんしゅつぼつ)

 しかも、生みだされた分身は、幻の類ではない。

 同等の能力を持ち、本体と同じ、実体だ。

 つまり、幻帥は、自身をそのまま生み出すことができるというのだ。

 これは、もう、幻を超えている。

 おそらく、創造主の力を利用したのであろう。


『さあ、いかがなさいますか?』


 形勢逆転し、柚月達は、追い詰められてしまう。

 幻帥は、不敵な笑みを浮かべ、勝利を確信した。


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