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聖印×妖の共闘戦記―神話乃書―  作者: 愛崎 四葉
第十二章 真実を求めて
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第百四十一話 誰も知らない彼の事

 静居と夜深を倒すことを決意した柚月達。

 柚月の出生を知るため、鳳城瀬戸について調べることとなった。

 柚月の父親である瀬戸なら、何か知っているはずだ。

 彼の身に宿った力について。

 なぜ、光焔を取り込むことができたのかを。

 空巴は、静居の行方を探るため、聖印京を離れ、李桜は、平皇京を守るため、結界を張り、泉那は、聖印京を守るために、結界を張った。 

 これで、聖印京も平皇京も人安心と言ったところであろう。

 後は、謎を解くだけだ。

 


 初瀬姫は、書庫にて、鳳城瀬戸に関する書物を読み漁っていた。

 どれも、出鱈目な暗号で記録されているため、高清、春日、要達に手伝ってもらって。

 しかし……。


「うーん、無いですわね……」


「これでも、なさそうじゃ」


 正直に言って、鳳城瀬戸に関する書物は、一切ない。

 千年前の記録を読み漁ってもだ。

 前後の書物にも、載っていない。

 初瀬姫も、春日も、お手上げ状態のようだ。


「お主らは、見つかったか?」


「駄目でござる」


「やはり、詳しい事は、載っていないでごぜぇやす」


 春日は、高清と要に尋ねるが、彼らも、瀬戸に関する書物を見つけていないらしい。

 なぜ、瀬戸に関することが一切載っていないのだろうか。

 静居が、記録を消し去ったのか、あるいは、記録に残さなかったのか、どちらかだと言えるが……。


「鳳城瀬戸、一体どのような方なのかしら……」


「さあの……わしらも、初めて聞いたからの」


 瀬戸の事は、高清達でさえも、知らなかったらしい。

 勝吏の手紙でその名を知ったのだ。

 もし、裏切り者であるならば、この書庫にある書物に記録されている。

 そう、確信し、初瀬姫と共に調べていたのだが、予想に反して、彼に関する記録は、見つからなかった。


「裏切り者、と言う事はわかったでござるが、それ以上、詳しい事は、わからぬでござるなぁ」


「そうですわね……」


 瀬戸に関してわかった事は、鳳城家の当主であり、聖印一族を裏切ったという事のみだ。

 それも、聖印一族に関する書物から、やっと、見つけられたわけであり、それ以上の事は、記されていない。

 瀬戸の事を知るには、まだ、時間がかかりそうだ。

 それでも、彼らは、あきらめてはいなかった。

 柚月の為だ。

 柚月は、過酷な状況に陥りながらも、懸命に、生きようとしている。

 ゆえに、初瀬姫達も、柚月の為に、瀬戸の事を調べようと、書物を読み漁った。



 綾姫は、夏乃から、話を聞いている。

 勝吏の手紙の内容を知った時、夏乃は、父親から、柚月のことについて、尋ねてみたのだ。

 その結界を綾姫達に話しているらしい。

 柘榴も、真登も、呼ばれ、話を聞いていた。


「それじゃあ、なつなつのお父さんも、知らないってことか」


「はい。勝吏様に頼まれて、時の封印を解いたようです」


 夏乃曰く、夏乃の父親は、勝吏に、封印を解くように、命じられただけであり、柚月が、封印されていたとは、知らされていなかったようだ。

 ゆえに、夏乃の父親は、心底、驚いたらしい。

 まさか、柚月が、封印されていたとは、思いもよらなかっただろう。


「柘榴、なつなつは、お止めください。何度も、言ったでしょう」


「え~、いいじゃん」


「よくありません」


 夏乃は、柘榴に、「なつなつ」と呼ぶのをやめるよう、促す。

 どうやら、なつなつは、「夏乃」の事らしい。

 またもや、奇妙な呼び方をする柘榴に対して、あきれている夏乃であったが、柘榴は、やめるつもりはないらしい。

 たまに、自由奔放になる柘榴に対して、夏乃は、ため息をついていたが、綾姫がなだめた。

 気持ちは、痛いほど、わかるのだが。


「けど、どうやって、封印を維持したんだろう」


「そうよね。千年も、封印を維持できると思えないわ」


 柘榴は、気になっていたことがあったようだ。

 それは、万城家が、千年も時の封印を維持できたことだ。

 時限・時留めは、時を止めることができる。

 だが、それは、範囲も限られており、長時間の発動は難しい。

 ゆえに、どのような方法で千年もの間、時を止めていたというのであろうか。

 綾姫も、思考を巡らせたが、答えは出てきそうになかった。


「夏乃、その事については、何か、聞いていますか?」


「父上から、聞いた話なのですが、柚月様は、本堂の地下の奥に封印されていたそうです」


 美鬼は、夏乃に尋ねる。

 封印を解いたとなれば、封印について、少しでも、何か知ったことがあったのではないかと。

 そこから、鳳城瀬戸、または、柚月のことに関して何かわかるのではないかと、考えたのだろう。

 夏乃は、美鬼の問いに静かに答えた。

 柚月は、本堂の地下に封印されていたらしい。

 それも、奥に。


「地下ってことは、千里が封印されていた場所よりも、奥ってことっすか?」


「そうみたいですね。鳳城家の地下から、行ったと聞いております」


 本堂の地下と言えば、かつて、千里が、封印されていた場所だ。

 あの場所よりも、奥に柚月が封印されていたということになる。

 しかし、あの場所から奥に通じる道はない。

 行き止まりだったはずだ。

 どうやって行けば、たどり着けるかは、不明なため、夏乃も、父親から聞かされたときは、半信半疑だったという。

 だが、父親が言うには、鳳城家の地下から、柚月が、封印されていた場所に向かったらしい。

 柚月は、本当に、本堂の地下に封印されていたようだ。

 誰もが、そう思っていた。


「何者かが、術により、封印を維持した形跡があったようです」


「じゃあ、万城家の聖印を発動し続けていたって事?」


「はい。ですが、誰が、どのように維持していたのかは、わからなかったようです」


 さらには、千年も封印が維持されていたのは、術によるものらしい。

 つまりは、万城家の聖印・時限・時留めを発動し続けていたことになる。

 一体、誰が、そのようなことをしていたのだろうか。

 受け継いできたのか、それとも、別の方法で、千年も、維持してきたのか。

 父親曰く、勝吏の命令に従い、聖印を発動しただけで、封印が解けたのだというから、相殺されたのかもしれない。


「相当の術の使い手ってことだね」


「強い聖印を持っていたのもあるかもしれませんね」


 わかった事は、相当の術の使い手、あるいは、強い聖印の持ち主だという事だ。

 そうでなければ、つじつまが合わない。

 だが、それ以上の事は、綾姫達も、不明であった。

 情報が少なすぎるのだ。

 瀬戸に関しても、柚月に関しても、時の封印のことに関しても……。


「もう少し、何かわかればいいんだけど……」


 もう少し、情報が集まれば、自ずと答えは見えてくるはず。

 だが、今は、その情報を集める事さえも、一苦労だ。

 綾姫達は、正直、途方に暮れていた。



 景時、透馬、和巳、和泉、時雨は、蓮城家の屋敷で調べている。

 蓮城家の屋敷には、妖に関する書物、歴史、医学などの書物が取り揃えてある。

 もしかしたら、何か、見つかるかもしれないと思い、調べていたのだ。

 しかし……。


「さすがに、残ってなさそうだな」


「うん、でも、柚月君のお母さんって誰なんだろうね」


「名前も、知らないみたいだしなぁ」


 やはり、瀬戸に関する情報は載っていないらしい。

 それどころか、柚月の本当の母親の名も、知らないのだ。

 勝吏でさえも知らなかったという事は、彼女のことについては、伝えられていないのだろう。

 彼女は、何か、秘密をかけ変えていたようだ。


「裏切り者扱いされたってことは、何か重大な秘密を知ったのかもしれないねぇ」


「そ、それで、静居が、歴史の闇に葬られたってことですか?」


「かもしれない」


 瀬戸に関することは、裏切り者である事以外は、一切載っていない。

 なぜ、裏切り者扱いされているのかも。

 おそらく、重大な秘密を知ったが故の事なのだろう。

 静居に関することではないかと、踏んでいるようだ。

 ゆえに、彼に関する記録は、一切、処分されたとみて間違いないだろう。

 静居なら、やりかねない。

 自分を守るためなら、卑劣な手を使う男なのだから。


「うーん、やっぱり、あの人に聞いてみるしかないかな」


「あの人って、誰だい?」


「人って言うか、妖なんだけどね」


「な、なるほど、あの方ですね!!」


 景時いう「あの人」とは、誰のことなのだろうか。

 和泉は、見当もつかないようで、景時に尋ねた。

 景時は、妖に尋ねようとしているらしい。

 それを聞いた時雨は、「あの人」とは、誰なのか、わかったようだ。

 透馬、和巳、和泉は、まだ、わかっていないようで首を傾げた。

 景時は、誰に聞こうとしているのだろうか。



 景時は、透馬達を連れて、光城に赴く。

 そして、光城で床に臥せっている笠斎の元を訪れた。

 景時が言っていた「あの人」とは、笠斎の事だったのだ。

 景時は、笠斎に、鳳城瀬戸について問いかけた。


「へぇ。それで、わしに聞こうと思ったのか」


「貴方は、神や妖についても知ってたからね。聖印一族についても、わかるんじゃないかって」


 笠斎は、神や妖について、熟知している。

 いや、知り過ぎているくらいだ。

 ゆえに、景時は、聖印京の歴史を深く知っているのではないかと思い、尋ねたという。


「なるほどな。だが、わしは、何も知らんのだ。その男については」


「そっかぁ……」


「知っておるのは、光の神くらいだからな」


 笠斎は、鳳城瀬戸について知らないようだ。

 笠斎さえも、知らないとなると、お手上げ状態だ。 

 光の神が、知っていると言うが、その光の神は、どこにいるかも不明である。

 ゆえに、景時達も、手詰まり状態であった。



 月読は、勝吏の部屋で遺品整理をしていた。

 たった一人で。

 女房達が手伝うと告げたのだが、月読が断ったのだ。

 一人でやりたいと。


「こんなものも、持っていたのか、あの人は……」


 月読は、小包から勝吏の遺品を手にして眺めている。

 扇、書物と言った必需品から、月読からもらった文なども入っている。

 大事にしてくれていたのだと、月読は、改めて感じ取っていた。

 その時だ。

 月読が何かを感じ取ったのは。


「ん?これは……」


 月読は、小包の底に触れる。

 底には、術印が刻まれていた。


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