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聖印×妖の共闘戦記―神話乃書―  作者: 愛崎 四葉
第九章 神々の解放
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第百三話 信じて進め

 柚月から、突飛だが、希望が持てる作戦を聞かされた綾姫、瑠璃、夏乃、景時、透馬、高清、春日、要、初瀬姫、和巳、柘榴、真登、美鬼、和泉、時雨は、柚月の指示で、神聖山に来ている。

 これも、神々を復活させるためだ。 

 綾姫達は、かつて、神々が眠っていた宝玉を握りしめていた。


「着いたっすね」


「うん。真登、敵はいる?」


 真登に、敵はいないか、と確認する柘榴。

 真登は、じっと、周りを見ている。 

 視力のいい真登は、遠くまで、見ることができるのだ。

 もちろん、敵の気配も、感じ取ることができる。

 彼のおかげで、準備を整えることもできるであろう。


「いないみたいっすよ。今なら、突入できるっす」


「了解」


 真登曰く、敵はいないようだ。

 妖も、聖印隊士も、いないということになる。

 神聖山に突入するには、今しかないという事であろう。

 いや、今が、絶好の機会と言っても過言ではない。

 柘榴は、うなずき、振り向いた。

 後ろには、綾姫達が、いた。


「じゃ、行こうか」


「うん、そうだね~」


 問題ないとわかって、景時は、穏やかな表情をしている。

 と言っても、油断しているわけではない。

 穏やかな表情を浮かべていても、警戒は怠っていないのだ。

 柘榴は、綾姫達を連れて、神聖山に入ろうとする。

 だが、綾姫と瑠璃は、立ち止まり、うつむいていた。

 それも、不安げな表情で。

 何かを心配しているようだ。

 夏乃と美鬼は、二人が、立ち止まっている事に気付き、立ち止まり、振り返った。


「綾姫様、瑠璃、いかがなさいましたか?」


「ごめんなさい。柚月達の事が、心配で」


「うん。大丈夫かなって」


 綾姫と瑠璃が、立ち止まり、うつむいた理由は、柚月達の事を心配しているようだ。

 そう、光城に残っているのは、柚月、朧、九十九、千里、光焔のみだ。

 もちろん、撫子も、牡丹もいる。

 これも、柚月の作戦だ。

 だが、不安なのだ。

 少人数で、残って大丈夫なのかと。


「確かに、心配ですね。ですが、わたくしは、信じています。柚月の作戦は、必ず、成功すると」


「どうして?」


 美鬼は、瑠璃の気持ちが痛いほどわかる。

 もし、朧の身に何かあったらと思うと、不安でたまらないのだろう。

 だが、美鬼は、柚月が考案した作戦は、うまくいくと信じているようだ。

 不安に駆られている様子はない。 

 瑠璃は、不思議でたまらなかった。

 なぜ、そう言いきれるのかと。


「わかりません。そんな気がしただけです」


 美鬼は、なぜ、そう言いきれるのかは、自分でもわかっていない。

 だが、柚月の作戦を聞いた時、間違いなく、成功すると感じたようだ。

 その理由もわからない。

 ただの勘なのだろう。

 それでも、柚月の事は信じられる。

 瑠璃に、そう、伝えたかったのだ。


「夏乃、貴方も?」


「はい。私も、美鬼と同じで、そんな気がしただけなのですが……」


 綾姫は、夏乃に尋ねた。

 美鬼と同じ意見なのかと。

 夏乃も、否定せず、うなずく。

 不思議な感じだ。

 成功するという根拠は、どこにもない。

 だが、自分は、心の中では、成功すると信じている。

 これも、ただの勘なのだろう。


「……そうだよね。朧達なら、大丈夫だって、私達が、信じないと」


「そうね」


 綾姫も、瑠璃も、不思議と不安が取り除かれた気がした。

 いや、信じようと決意したのだろう。

 自分達が、信じなければ、この作戦は、成功しない。

 そんな気がしてきたからだ。

 綾姫も、瑠璃も、前向きな気持ちを抱き、進もうと決意した。


「ほら、どうしましたの?早く、行きますわよ!」


 遠くから、初瀬姫の声が聞こえる。

 綾姫達が、来ていない事に気付いたようだ。

 心配をかけてしまったのだろう。


「行きましょうか。初瀬姫を怒らせたら、怖いから」


「うん」


 初瀬姫の声が聞こえ、綾姫達は、急いで、柘榴達の後を追い始めた。

 理由は、初瀬姫を怒らせると怖いからだと茶化す。

 茶化すことができるという事は、余裕が持てるようになったのだろう。

 夏乃も、美鬼も、そう感じ、安堵した様子で、綾姫達と共に、柘榴達の後を追ったのであった。



 なぜ、彼らが、二手に分かれて行動しようとしたのか。

 それは、さかのぼる事、一時間前の事である。

 光城にて、柚月が、綾姫達にある指示をしたことから、始まった。


「二手に分かれる?」


「ああ」


 柚月は、二手に分かれて、行動すると宣言する。 

 透馬も、驚きを隠せないようだ。

 もちろん、二手に分かれた方が効率がいい。

 だが、戦力を分散すれば、それだけ、危険になるという事だ。

 柚月は、どうするつもりなのだろうか。


「綾姫、神々を復活させた宝玉は、持ってるか?」


「え、ええ。もちろん。持っているように、言われたから」


 柚月は、綾姫に、宝玉を持っているか、確認する。

 その宝玉は、かつて、神々が眠っていた宝玉だ。

 復活すれば、宝玉を所持している必要はない。

 だが、綾姫は、その宝玉を所持していたようだ。

 それは、泉那に持っているようにと言われていたからである。 

 今後の戦いに必要らしい。


「私も、持ってる」


「俺達も、持ってるよ」


 瑠璃も、和巳も、宝玉を見せる。

 どうやら、皆、神々の宝玉を所持していたようだ。

 この宝玉が、今回も、封印を解く鍵となるのだろう。

 神々は、自分達が封印されるのを見越していたのかもしれない。


「わかった。じゃあ、綾姫達は、神聖山に行って、神々を復活させてほしい。復活の方法は、先ほど話した通りにやれば、問題ないはずだ」


 柚月は、綾姫達に、神聖山に向かうよう指示する。 

 神々を復活させる方法も、綾姫達に話していたようだ。

 戦魔達に接触しなくとも、神々は復活できるのだろう。

 これで、危険度は、かなり、低くなるはずだ。

 しかし……。


「ちょっと、待つでごぜぇやす!」


「どうした?陸丸」


 高清は、慌てて、制止する。

 制止と言うよりも、反論に近い。

 朧は、驚きのあまり、目を見開き、高清に尋ねた。

 高清は、何か、不安に駆られているようだ。


「あ、あっしらが、神聖山に行くってことは、ここに残るのは……」


「そうだ。俺と朧、九十九、千里、光焔だ」


 神々を復活させるには、自分達が所持している宝玉が重要になる事は、わかった。

 だが、光城に残るのは、宝玉を所持していない柚月、朧、九十九、千里、光焔のみと言う事になる。

 もちろん、撫子、牡丹、凛、保稀、智以もいるのだが、それでも、高清は、不安に駆られてしまったのであろう。


「ちょ、ちょっと、人数が少なすぎると思うんですが……」


「いや、ちょうどいい人数だ。静居達を欺くためにはな」


 時雨も、不安に駆られているようだ。 

 当然であろう。

 光焔が、強力な結界を張ったと言っても、静居は、何をするかは、読み取れない。

 もしかしたら、聖印一族を向かわせ、襲撃させる可能性だってある。

 そうなれば、いくら、柚月達でも、苦戦を強いられることは、間違いないだろう。

 だが、柚月は、少人数の方がちょうどいいと発言した。

 どうやら、柚月は、静居を欺くつもりらしい。


「つまり、五人で、深淵の鍵を奪還するのか?いくら何でも、無謀じゃ!」


 春日は、柚月が何をしようとしているのか、察してしまった。

 柚月は、自分と朧、九十九、千里、光焔の五人で、深淵の鍵を奪還しようとしているらしい。

 春日の言う通り、いくら何でも、無謀すぎる。

 自殺行為と言っても過言ではないだろう。

 綾姫達は、不安げな表情で柚月に視線を送っていた。


「いや、心配は無用だ。静居達をうまく誘導すれば、いいんだから」


「本当に、大丈夫でござるか?」


「さすがに、心配だよ」


 柚月は、静居達を誘導しようとしているようだ。

 確かに、柚月は、誘導作戦を得意としている。

 だが、相手は、静居だ。

 簡単に、誘導できるとは、到底思えない。

 それなのに、その自信はどこから来るのであろうか。

 要も、和泉も、不安に駆られていた。


「大丈夫だ。俺を信じてほしい」


 不安に駆られ、反論しようとする綾姫達に対して、柚月は、信じてほしいと懇願する。

 柚月は、後さき考えずに、指示をしているわけではない。

 綾姫達も、理解しているのだが、心がそれを受け入れられないのだ。

 柚月達を危険な目に合わせたくないと願って。


「兄さんが、言うんだ。大丈夫だと思う」


「うむ、わらわも、そう思うぞ」


「俺達なら、心配いらねぇよ」


「必ず、深淵の鍵は、奪還する」


 朧、九十九、千里、光焔は、柚月の事を信じているようで、綾姫達を説得する。

 彼らは、不安に駆られた様子はない。

 本当に、柚月を信じているようだ。

 この作戦は、成功すると。


「……わかったわ」


 綾姫は、不安を取り除けないまま、承諾し、光城を降りて、神聖山に向かった。

 柚月達が、無事であってほしいと心の底から、願いながら。



 聖印京で、静居と夜深は、目を閉じている。

 柚月達の動向を探っているのだろう。

 何かを知ったようで、静居と夜深は、ゆっくりと目を開けた。


「あらあら、城は、手薄になったみたいよ、静居」


「そうか。なら、ちょうどいいな」


 静居と夜深が、目にしたのは、綾姫達が、光城を降りたところだ。

 行先は、神聖山だと踏んでいる。

 だが、綾姫と初瀬姫が、結界術を張り、姿を消してしまった為、動向を探れなくなってしまった。

 と言っても、向かう先は、山頂のはずだ。

 あとで、隊士達を向かわせればいい。

 それに、彼女達が何をしようとも、自分達には、もう、抗えない。

 なぜなら、光焔を手に入れれば、完全に、打つ手はなくなるのだから。

 綾姫達が、光城を降りたという事は、光城は、完全に手薄状態だ。

 光城を奪うには、絶好の機会と言ったところであろう。


「光焔を奪うぞ」


「ええ」


 静居は、光焔を手に入れることを決意する。

 夜深も、妖艶な笑みを浮かべ、うなずいた。


「頼んだぞ、お前達」


 静居は、ある者達に、指示をする。

 その者達は、なんと、勝吏、月読、虎徹、矢代であった。

 彼らを向かわせれば、柚月達は、抵抗する事は困難になると静居は、みている。

 確実に、光焔を奪うつもりのようだ。

 静居は、不敵な笑みを浮かべていた。

 

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