悪魔
91話
今見えている視界は暗いというより、ぼやけている感じだった。
だが、どちらにせよ、よく前が見えない。
このことは美咲と話したほうが良さそうだ。
よく見えない中で、必死にドアノブを探し、壁を使いながら階段を降りる。
何段降りたか分からない。あと何段あるかもよく分からない。
そんなことを考えていると
「!!」
突然体が崩れ落ちる。
「まずい踏み外した」
そう思ったのだが、結構近いところから落ちたので痛みはそれほどなかった。
だが、さすがに多少痛みはある。
痛いところを手で抑えながらリビングまで歩く。
すると誰か人がいるのを確認した
俺は美咲かと思い
「あ、美咲おはよう」
「・・・・・」
彼女から返事はない。俺はてっきり不機嫌なのかと思い話を続ける
「なぁ、俺今日なんか変なんだよ。
視界がよく見えないし、今は少し身体痛いし。ほんとさんざ・・」
俺が話している最中その人影は俺に近づいているような気がした。
いや、違う近づいてきているんだ。
「おい、お前ほんとに美咲か?」
「・・・・・・」
返事は無い。ではこいつは赤の他人だ
「おい!!お前一体誰だ?彼女はどこにいる?」
「・・・・ソイツハコロシタ」
はぁ?何言ってんだこいつ?
美咲が死ぬわけ無いだろ?
ましてやここの住民相手に。
「おい、おい、おい。嘘言うなよ。
彼女が死ぬわけ無いだ?あんな強いんだぞ!!」
「オマエガソウオモウナラバソウレバイイ」
「はっ!!そうかじゃ信じない」
美咲が死んでいるのは嘘だ。
だが、こいつは絶対にここで仕留める。
そうしないといけない。
今は人に刃を向けるなんて余裕言ってられない。こいつはやばい。
目がはっきり見えない俺でもわかる。
腰に手を当てる。だが、俺は今まで気づかなかった。武器が無い。
まずいなぁ。取りに行くか?
だが、ここから自室まで行けるか?
「フッ。ドウヤラナニモデキナイラシイナ。」
そう言うとそいつは俺から遠ざかり家を出た。
「ぁ・・・・・」
そして、今家には俺しかいない。
くそ!クソクソクソ!!
何にも出来なかった。言葉も出なかった。あいつなんなんだよ?
だが、今はこの目をなんとかしないと
ギルドに行けばフォリアがなんとかしてくれるかも!
俺は必死の思いで、階段を上がり武器を取る。
そして、階段をおりる。
今はローブなんて着ている暇は無い。
だから俺はドアを探して家を出た。
外に出た途端、何か鼻をつく臭いを感じた。
「この臭いは?どこから?」
気にもなるがギルドに向かう。
目がぼやけていても道はわかる。真っ直ぐ進めばつけるからだ。
たまに人とぶつかったりもしてつまづく事もある。だが、立ち上がりギルドを目指す。
だが、歩けば歩くたびに臭いは強くなり、煙なのかよく分からないが視界が見えなくなる。
呼吸も出来なくなるほど辛い。
一体何があったんだ?
そう思った時突然。
「えっ!!どうして?見える。見えるぞ!!」
俺の目のぼんやりは消えはっきりと見えた。
歓喜だ。
だが、瞬間的に
「はぁ?何これ・・・」
あたり一面が火の海になっている。
絶望。
煙で全てが見えるわけでは無いが、火の海になっているいることは分かる
「まさかギルドも!」
そのまさかであった。
ギルドの目立つ看板も建物の外観も火の海に飲み込まれている。
「うそ、、、だろ?
ハッ、ハッハ。」
その手は自然に剣の方へ伸びていた。
「美咲すまない。」
そして、首に向けて思いっきり剣を振りかざした。俺は絶望した。
もしかしたら絶望させるために視界を戻したのかもな。
火の海が飲み込む町のなかで街道鳴海は息を引き取った。
・・・・・だが、本当にそうだろうか?