運命の日
72話
野菜だけというなんとも偏食なオーダーだ。さすがに何か言おうとしたが、
「おい、それってど・・・」
「はい、スタート」と言葉を遮られた。
絶対わざとだろ。
そして、キッチンに行き、とりあえず
料理本と睨めっこをする。
まぁ、もちろん野菜だけのメニューなどあまり書いてなく、特にメインディッシュになるものなど皆無だった。
なので、昔テレビで見た肉の代わりになりそうな、
豆腐を使ってみる。
そして、デザートも多分作らないといけないので野菜のゼリー?らしき物も作ってみた。
そして、一通り作り終わり、彼女の元へ運ぶ。
「おぉ!!凄いねほんとに作れたんだ。
いやぁ〜、一週間でここまで上達するなんて人って分からないもんだね。」
と褒めてくれた。だが、肝心は味だ。
俺は比較的満足だったが、俺と彼女の
味覚は全く別物だ。
「それでは"我々は今から・・・
(省略)・・・くださいませ。
ふぅ、よし頂きます。」
彼女これ言うのだんだん疲れてきてるよな。だって、「ふぅ」とか言ってたし。
彼女は黙々と黙って食べた。
表情一つ変えないので
美味しいか美味しくないかが全くわからない。
俺も同じメニューを食べているが
まぁ、美味しい方だとは思う
そして、彼女は食べ終わり
「ごちそうさまでした。」と言った。
俺はそう言った時、凄く緊張した。
これでここに住んでいいのかが決まる。
でも、何分か経っても何も言わないので、あまりそんなことはしたくないのだが、「で?どうだった?」と自分から聞いた。
「うん。合格」
えっ?結構あっさりと言ったが今合格って言ったよな。
・・・・・よっしゃーー!!!これで
この家残れるぞ〜。と心の中で大変高揚していると。
「あっ、でも、メインがあんま美味しくなかったから、これからも私も料理担当させてもらうね♪」と訳の分からないことを言ってきた。
「はぁ?ちっと待って!何それ?俺の
努力は?今まで夜寝る時間まで削ったあの努力は?」
「大丈夫、私メインしかやらないから、
あとは全部任せるから。」
うーん、ならいいのか?でも、そんな
不味かったか?俺は美味しいと思ったんだけど
「いや、豆腐を使うところは良かったわよ。でも、大きさや火加減が酷いのなんの。だから、上手くなるまで私がするから」と俺の心を読んで言ってきた。
酷いのなんのって…なんか悲しい
「まぁ、結局立ち位置は変わらないけど
私の家に住むことになっておめでとう。
これからもこき使うからよろしく下僕君♪」
まぁ色々と、もちろん腑に落ちない結果だが、彼女の家を出ることにならずに済んだので良しとしよう。