裏切りですか…
119話
ダメだ。状況が理解できない。
彼女は偽名を使っていたと言うのか?
でも、なんで、そんなことを?
わざわざ偽名を使わずとも本当の名前で接してくれても良かったのに…
「あの〜?どうせ『何で偽名なんか使っている』とか思っていましたよね?
それも大事なんですけど、他に大事なことありますよね?」
「はっ??」
「やっぱ分かりませんか。ショック…
この声に聞き覚えないですか?」
そう言われ、俺は過去を振り返る。
こんな声したやつ、、、、
いた。
つい一週間前に聞いた。
美咲の何かを盗んで行ったあの女だ。
顔は見えなかったが、声は確かに聞いた。
でも、ユリちゃん・・いやユリの時とは声が違ったが?
「なぁ?本当にユリと同一人物なのか?声が違うような気がするんだけど…」
「え〜?何で、『ユリちゃん』って呼んでくれないんですかぁ?
・・・まぁ、別に偽名だから、
どーでもいいんですけど。
それより何でしたっけ?声が違う?
一緒に過ごして思ったんですけど…
あなたバカですねぇ?
ほんと、つい笑ってしまいそうなところがいくつもあるんですよ。それを堪える私の気持ちも察してくださいよ。
あ、脱線しましたね!
普通声ぐらい変えますよ〜。だって、
よりにもよってあなたが来るとは思いませんでしたもの。唯一私の声を聞いた、あなたが。もう、ヒヤヒヤでした!!」
今の言葉を聞いて、よくわかったことがある。
もうこいつはユリの様な優しさは微塵もない。
性格がまるで真反対だ。
「なぁ?目的を教えてくれよ。
偽名まで使って何がしたかったんよ!」
「それ?言っていいですか?」
「はぁ?!!」
「これを聞いたらあなた絶望するかも知れませんよ?そしたら、ボスの言ってた
『カンジョウニノマレル』みたいな事が起こるかも!!!
・・・・楽しそうだから、言おっと。
私たちの目的はこの町の混乱です。」
「混乱?何でそんな事を・・・・」
「理由までは言いません。ボスの許可がないので。でも、私はそれに賛成してます。だって、この町すご〜く退屈なんだもの。混乱が起これば、人と人は疑い合って、いずれ殺し合いが起こる。
それを実現するために
わざわざ偽名まで使って潜入みたいな事してたんです。」
こいつ本当にそんなこと言ってんのか?
しかも、
そいつらのボスも同じようなことを考えているんだろ?
「・・・・・・・」
「あれ?もしかして、もう感情に!」
「な訳ないだろ。でも、
お前らはふざけてる!!絶対に!!
だから、俺はそんな事をさせない。
俺の居場所。俺の仲間たちを失わせる訳にはいかないんだよ!!」
だが、彼女は苦虫を噛み潰したような顔をしながら、
「うわぁ〜…
なーに主人公見たいなセリフ言ってんですか?そういうの私嫌いです。なんか気色悪い…」
そう言った後彼女は何かを思い出したのか、
突然笑いながら
「そうそう!!あのギルドの受付の人
自殺なんかしてませんよ」
「え?!!
ん?ちょっと待て!おまえ、なんで
そんな事を・・・」
「だって〜、あれ私が殺しましたから。
なので私が犯人でーす!!」