ヒロイン交代ですか?
107話
美咲が消えてから1週間俺はずっと家に引きこもっていた。
何も考えたくない。何もしたくない。誰とも関わりたくないそう思ってしまった。
たまに色んな人が俺の様子を見に家に訪れたが、「大丈夫だから、ただの風邪だから」と嘘をついて追い返した。
ある日、外に出て気分転換をしようと思い、家を出ると、家の前にフォリアがいた。
「あ!風邪治ったんですか?」
「あ、あぁ。てかどうしたんだ?
俺に何か用か?」
「もちろんそうです!!私は心配してたんですよ」
「別に心配なんて入らなかったけど。
いやされたくなかった。俺に関わっても良いことないのに…」
すると、フォリアは俺の手を掴んで歩き出した。
「そんな鳴海さんは鳴海さんじゃありません。もっと、笑わないと!!」
「なぁ?お前は俺の何を知ってるんだ?」
「知ってることと言えばそんなには無いです。美咲さんと勝負したら余裕で負けてしまいます。、、、でも、鳴海さんはいつも元気で、優しくて、皆から好かれるそんな存在って事は1番知っています。」
やめてくれ…俺はそんな人間じゃない。
みんなと仲良くなれたのは全部美咲のおかげだ。全部全部全部!
でも、今は彼女はいない。だから、今までの俺に元どおり。
家に引きこもって、友達がいなくて…
「頼む。もうほっといてくれないか?
今の俺に存在価値なんて無いんだよ!」
そう言い手を解こうとしたが、彼女は手をずっと握っている
「いいえ!!ほっときません!!あなたは存在しないといけない人なんです。
もし、他のみんながそう思っているとしても私だけは違う。ずっとあなただけを見つめ続ける」
「・・・・・・・・」
俺はそれからずいぶん黙り込んだ
そして、歩いていくうちに目的地についた。
そこは、初めて来た建物だった。
中に入ると中には誰もおらず、窓から射し込む光で明るさを保っているほど薄暗い部屋だった。
「ここは?」
「ここは、私が小さいことからよく来てた場所です。悩んだ時にはここに来て
頭を冷やすんです。暗い空間だから
たまに寝ちゃったりするんですけど。」
そして、彼女に近くにある椅子に座るように言われた。
しばらく、2人は薄暗い部屋の中で黙っていたが、俺が喋る。その声はよく響いた
「なぁ?俺になんでそこまでこだわるんだ?」
すると、彼女は照れながら
「それ、女の子の口から言わせます?
まぁ、言いますけどね。こんなチャンスありませんからね。
・・・好きだからです。大好きだからです。
最初出会った時からなぜだか惹かれる物を感じました。そして、だんだん関わっていくとその気持ちもだんだん大きくなりました。時にはやり過ぎな時もあったと思います。いや、ありました!!
でも、私は鳴海さんが好きです。その気持ちは嘘じゃありません。」
「それって、人妻が言っていいセリフか?」
すると彼女は少し間を空けて
「いえ、もう違います。」
「はぁ?なんで?てか早くないか?」
「仕方が無いじゃないですか〜。
鳴海さんが家に引きこもっていて心配だったから、私も家の前でずっと待ってたんですよ。そしたら旦那が怒って婚約破棄したんです。ほんと短気なんですよ」
へ?今家でずっと待っていたって言ってたよな?
じゃあ、前来た時からずっと待っていたって事だよな。
そんなに俺の事を…
「これで、いつでも結婚できますね。私と鳴海さん!」
俺は静かに頷いた。
「ありがとう。なんだか冷静になったよ」
すると、今までより元気な声で
「良かった!!じゃあ帰りましょっか」
彼女が立ち上がり外に出ようとした時、俺は彼女の腕をつかんだ。そして、彼女の唇に俺の唇を重ねた。
さすがにこれぐらいの礼はしないと。
何も礼が、思いつかなかった俺の必死の考えだ。誰にも何も文句は言わせない。
そして、家に帰るまでの間、俺たちは全く話をしなかった。いや、できなかった。恥ずかしさで。
そして、家に着くと、彼女は
「今日はどうでしたか?私は大満足です。特に最後のサプライズなんて最高ですよ!!またしてくださいね♪」
そう言い、彼女はギルドの方向に歩き出した。
「俺もクヨクヨしてられないな」
そんなことを思いながらドアを開けると
「お帰り〜」と一週間前までずっと聞き続けていた声が聞こえた。