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作者: とろろ

この作品は創作仲間とSkypeで互いにお題を出し合いワンドロ形式で書いた小説のうちの一つとなります。


今作品のお題は「40歳/旅」です。

「今までありがとう。」


俺は、1か月前にこれまで18年間務めてきた会社をリストラされた。

会社の都合上で、人件費削減などの様々な事情があるのだから仕方がない…。


「…なんて、割り切れるかよバカヤロー!!」


妻はリストラされた俺に愛想をつかし、娘を連れてとうにこの家を出た。

40でほかの仕事なんて、見つかるわけがないからな。

無一文のオヤジとなんて、一緒にいたくなかったんだろうな。


会社から半分を負担してもらって借りて住んでいたこの賃貸の一軒家。

そこにももう、住めなくなる。


仕事も、家族も、家もない。

こんな俺に、生きる価値はあるのだろうか…?

ふと、そんなことが頭をよぎってしまう。


「俺には、何も、ない。」


言葉に出してみると、虚しさが増した。

とにかく俺は、この家をしばらくしたら出なくてはならない。

もう俺には何も残っていない。

それなら…。



「旅に出よう。」


そう思い立って実に1週間。

俺は今、北海道にいる。

美味いもの食って、ちょっといいホテルに泊まってみて。

色々な名所にも行った。

キツネ村に小樽、ノースサファリ、夕張にも行ったし、江別にも行った。


悪いことなんて忘れて、気楽に、気ままに…。

俺が求めていたのは、こういう癒しなんだと思う。

俺が今いる場所は「地球岬」。

冷たい風が吹くこの岬の上空では、ハヤブサが悠々と空を舞う。


「いいなあ、お前らは自由でよぉ。」


俺もハヤブサになれたらなぁ、なんてくだらない考えが浮かぶ。


俺は北海道の中をこれまで旅してきたが、それももうおしまいにしようと思う。

何故なら、財布の中身がもうそろそろ危ないんだ…。

豪勢に金を使って旅したんだ、仕方あるまい。

だがしかし、俺はこの旅にとても満足している。

この旅は、俺に安らぎと癒しをくれた。

全てを忘れさせてくれた。


「愛おしい我が旅よ、共に朽ちようじゃないか!」


自分でも笑ってしまうようなくさい台詞。


俺は高さ100m近い絶壁へ足をのばした。


さあ、これで終わり。

本当に最後。


さようなら、俺が愛した妻子達よ。

さようなら、この自然の大地よ。


そして祝ってくれ。


これからの俺の、「死出の旅路」を。


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