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8.~黒い壁~

俺が血まみれで倒れていた?


一通り浩平がから話された情報を整理してみる。


元康が死んだ夜からひと月が流れている、一週間前に俺を発見した。

俺は元康として生きていた、思い込んでいた。が多少覚えがある。


そして現実を逃避するように始まりを繰り返し語っていた。

浩平に会うまでの三週間どうやって生きていたのか…。

うろ覚えながらも語った。


「感染者どもを狩りながら食料を集めていたと思う、少し覚えているよ。」


浩平が驚いた顔をしていた。


話を続けた。


「途中からの記憶なんだけど、俺の中では元康は自分自身だったから存在しない。だから元康を殺した時、ただのサラリーマンと認識していた。現場で野次馬に見えた人集りは奴らが集まっていただけなのかもな、それから家に帰り再び現場に行き殺したサラリーマンの死体を確認したが、死体は居なくなっていた。もしかしたら元康は生きているかもしれないし、奴らと同じく変化しているかもしれない。」

「あと、あまり今の身体は不思議と痛みを感じることがない。」

目の前の友人は眉を潜め、きいてきた。

「だが、俺がここに来たときのお前は怪我で凄く苦しんでいるように見えたぞ?」

「それこそ分からない。」

俺は答える。

「毎晩夢を観るんだ、友達を殺した俺は自身が何者なのか分からない自責の念に駆られたのか分からない。今はあいつらを殺せという声しか聞こえない。」

「毎日毎日同じようにあふれ出るあいつらを殺し続けるのが日課になっていたよ。ところで、お前、ここに来るまでに1度鍵を開けてくれって言ったことなかったか?」浩平に尋ねる。


「あぁ、先々週くらいかな?ここまで来た時があった。が鍵がかかってて入ることが出来なかった。」

「そうか、すまん、誰かに言われた気がして開けては居たんだけど…そんなに前だったのか。」

ということは。

「開けたままの状態だったから入って来れたのか?」

浩平は首を横に振って言った。


「いや、俺がここに入って来た方法は単純だ。よじ登って来たんだよ」


今、何て言った?

ここは8階だぞ?普通の人間ならわざわざそんなことしない、馬鹿なのか行動力があるのか、俺は呆れた顔をしていた。


「とりあえず彼奴らは地べたを這う位しか身体の使い方をわかっちゃいない。地上に居る方が安心出来ないと思ったのさ。お前らが心配だったのもある。」


それにしてもどうやって登るんだ?

疑問に思っていると浩平は言った。


「手すりやベランダの取っ掛かりを見れば後はよじ登る程度造作もない。」


こいつはどっかの軍隊にでも居たのか?

犯罪じみているぞ!


「人の事は言えないけど、お前もおかしいと思うわ」

とこぼすと浩平は言った。


「俺に覗けないマンションはない、覗きは任せろ。」

親指を立てて言う。

キャラが変わり過ぎだ!

こいつは先週に俺を発見したんだろ?

よじ登るコトが出来たならどうして先々週に来なかったんだ?


「覗きは良いんだが、先々週の時点ではこの部屋までは来なかったのか?」


「あぁ、その時はまだ感染者の数が多かったし、同行者も居たしな。」


「同行者?仲間じゃなくて?」


「まぁ、仲間の様なもんは出来たな、俺たちの立て篭もる場所まで案内してたんだ。その時はついでに寄っただけだ。」


「仲間がいるって事は遼や晴もそこにいるのか?」


「いるな、俺らはそれぞれ食料や武器集めなんかの役目があるんでな。ただ、人が一箇所に集まり過ぎると色々不満が溜まってくる。」

浩平は何かを考え言った。

「だから籠城に向きそうな場所も探している。」


「だったらこのマンション自体を貸すってのはどうだ?感染者の排除は俺がするし、良い加減あったかい飯も食いたいんだが」

と笑ながら言った。

「まぁ、住人が居ない場合に限るがな。」と付け加えた。

浩平はすまんと一言言った。


「とりあえず、さっきの続きを話すぞ。後はこの身体か少し特別になってるコトだ。」


電話機の横のペンたてからカッターを取り出す。


取り出したカッターを腕に突き立てた。

赤い液体が流れ落ちる。


いきなりの事にびっくりしたのか浩平は絶句する。


「お、おい!」

「良いから良いから、ちょっと見とけよ。」


カッターを抜き取り、ティッシュで血を拭う、しばらくして血が止まり傷後がうっすらと残った。


「なんだ、これは?」

と浩平の顔色が変わる。

コロコロと忙しいやつだ。


「コレが俺が奴らを狩れる理由の一つだ。正気じゃ無かったからな、いつからかは分からんがこんな身体になってしまった。コレに気が付いた時から俺はこの辺一帯の、感染者?かあいつらを軒並み殺したよ。」


浩平は合点がいった!という顔をして言った。

「だからか、ここに来るまでに結構な死体があったが、動いてる奴らは少なかったな。お前だったのか。」


「あと食料は近所のクワオーから取って来たのがあるぞ。」

浩平は成る程と頷き言った。

「それだけ出来ればうまく生活は出来るか…。」

一頻り考えたあと浩平は言った。


「さっきの貸し出しの話だが辞めておこう。もし他の住人が残ってる場合トラブルが増えるし、何より頻繁に人と接触するとお前の体質がバレる危険もある。」


「その位は俺の方は許容範囲だぞ」

と言ったところ

すかさず浩平は言う。


「今から酷いことを言うぞ。噛まれた奴は大抵は下の奴らみたいになる。こんな環境下でお前の状態がバレてみろ、袋叩きにあうぞ!」


俺は少し考え、言った。

「ならここをお前らの休憩所にしろ、鍵も予備なら後二つあるから渡しておく、一つ足りないが持ち回りで3人で回して使ってくれ。」


予備の鍵を探しにいく。

確か本棚の引き出しに…あった。


二つの鍵を渡したところ。


「悪いな。」


と浩平は一言言った。


「それと…」


兼ねてより聞きたかった質問をする。

「そこのベランダから見えるデカい壁の様なものなんだが…アレはなんだ?」

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