7.~生き残るのは~
「あれ?何でだ?俺はあの後元康と帰ってそれから…。」
再び部屋に静寂が戻る。
「元康が俺を逃がして…おれ、戻ったんだ、どのくらい経ったのか分からないけど助けに戻ったんだ。あの石階段の所に…。」
俺は優に聞いた。
想像通りの内容だった。
「そこには元康が居たんだ。ボロボロになって血まみれの姿でポツンと立ってたんだ。助けようとしたら俺に襲いかかって来て、正気に戻って欲しかった。何度か噛みつかれたけどグチャグチャに争いながら、最後に俺はあいつを、階段から落と…」
「もういい。」
最後までは言わせない。
この事態だ。隣の者が奴らと同じになるなんて何度も見て来た。
「言わなくてもわかる、仕方ない。生きることを考えるのが普通だ。」
優に落ち着くよう促す。
「違う、俺が死ねば良かった。俺が代わりにあいつを助ければ良かったんだ。俺には何もない、内定だって成績だって卒業だって婚約者だって居たんだ。」
優は震える声で状況を説明し、顔を覆い涙を流していた。
記憶が混乱しているのは何かあったのだろうと思っていたが、
こういうことだったのか、
自分で自分の存在を殺し元康に成り代わることで精神の安定をはかってしまったのか…。
俺は言った。
「なぁ、誰だって友達には生きていてもらいたい。助けられたのならお前は生きなきゃいけないんじゃないか?
元康に成り代わって生きていてもそれは違うと思う。月並みだけど死んでいった奴らの分まで生きなきゃいけないんじゃないか?」
優は真っ直ぐと俺を見て言った。
「ああ、そうだよな、じゃなきゃ生き残った意味がない。直ぐには立ち直れないかもしれない、だけどこれからは…。」
「あぁ、そうだ、そうじゃなきゃな!毎日同じ問答させられるのはもう勘弁だぜ〜?」
俺は昔流行った芸人風の口調で言っていた。
そして中々に滑っていた。
荒んだ気分も少しはマシになっているのか笑顔が見える。
「あ、あと正気に戻ったのなら聞きたいことがある、あの時どうして元康の携帯に出たんだ?」
パンデミックの翌日だったことは確かだ。話を聞いた感じだと元康に助けられた後直ぐ戻り、噛まれた。そして元康だったものを殺した。そのあとで携帯を回収したのか。
「あぁ、石階段の所で見つけたんだあいつの遺品かな?」
優は罰が悪そうに答える。
「そういうことか、元康とお前が一緒にいると思い込んでいたが、元康の携帯からは返事は来たのに、お前からはなかったからな。元康だったお前とは連絡を取ることが出来ていたんだな。」
「そうだったのか、ややこしいことをしたな。」
と優は苦笑した。
「三週間もどうやって生きていたんだ?部屋は荒れている様子は無かったし、外に出ない様に元康の携帯に連絡はしていたけど、お前は血だらけで怪我も酷かったし…。」
あんな怪我の状態でどうすれば生きていられるんだろう?と浩平は疑問に思った。
優自身も記憶が曖昧で錯乱状態だったわけだから分からないのも無理はなかった。