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世界異世界物語(改稿前版)  作者: ウサギ様@書籍化&コミカライズ
変わる世界と変わらぬ貴女。 正しいのはどちらでしょうか。 分かりはしないけれど、私は変わらぬ貴女を愛しています。
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ターン制RPG


 ボロボロ、自分の身体が崩れていくのを感じる。

 自分の身体が崩れていく。 その不快感に顔を歪めたくなるが、もう僕には顔がないので歪みることは出来ない。


 嫌な風が吹く。 僕が流される。


■■■■■■■■■■■■


 夕空に光の柱が突如輝く。 どうしてそれが現れたのか、僕には分かりはしないが、目の前にその光景を生み出したであろうそれを見つける。


 ーー先輩が、黒魔術の儀式をしていた!


 新入生の勧誘方法を一緒に考えようと呼び出されたと思ったら、先に来ていた先輩が黒魔術の儀式をしていた。 何を言っているのか分からないだろうが、たぶん僕にも同じ気持ちだ。


 まさか先輩は……全然部活の見学や仮入部に来ないがために、闇の力に手を出してしまったのかもしれない。


「先輩! それ止めてください! 超絶目立ってますから!」


「すまん新! でもこうすればオカルト好きな新入生が寄ってくるはず!」


 ボードゲーム部に黒魔術師志望の新入生が来たとしてどうすればいいのだ。 困るだろう、結構困るはずだ。

 僕と先輩だけで既に二分の一が黒魔術師なのに、これに他の黒魔術師が混ざったらボードゲーム部ではなく学校の裏組織になってしまう。


 僕はだらだらしたボードゲーム部を残したいだけで、裏組織はそんなに魅力的に感じない。


「先輩ーー」


 黒魔術が発動してしまったのか、夕空は真っ白に染まり僕は気を失った。



 目を覚ます。 いや、目を覚ました訳では、元々眠っても気絶してもいなかった。

 突然、目の前の光景が変わったので、気を失っていたと誤認しただけだ。 僕の体制は、先輩の黒魔術を止めようとしている時のままだ。


 変わった目の前の光景。 先輩はいつも通りの制服で、夕空の薄明るい光ではなく華美な光で照らし出されている。

 一般的には格好いいらしいが、そのふざけた笑みと余裕ぶった態度は気に入らないと感じることが多々ある。


 こんな馬鹿げたことをやらかしたのには、部長として一言言わねばならないだろう。 部長と言っても二人しかいない部活だが。


 そんな怒りは、鈴のような声に止められる。


「ようこそ、お会いできて光栄です勇者様」


 どういうことだろう。 ふわふわの服を体に纏い、ふわふわの声色でふわふわの言葉を発した、金のふわふわな髪型なふわふわ少女が目の前にいる。


「えっと……入部希望者でしょうか?」


「マジか。 さすが俺だぜ……適当にやっただけで新入部員を召喚出来るとは」


 ふわふわ少女が首をふわふわ捻る。 何を言いたいのかよくわからないようである。


「先輩、これどういうことですか?」


「おそらくだが……これは大魔王が現れてピンチな国が、戦争の駒として異世界の人を召喚した感じかな」


 何を言っているのかよくわからないが、それは正しかったのかふわふわさんは驚いたように先輩を褒める。


「さすがです、勇者様!」


 それに喜ぶかと思ったけれど、先輩は表情を変化させることはなく言葉を続ける。


「なるほどなるほど、つまりこのふわふわさんはお姫様で、俺が勇者で、新は幼女。 そういうことだな」


「その通りです! さすが勇者様です!」


 少なくとも一つは間違いがある。


「恐らくではあるが、ふわふわは頭の中がふわふわで、勇者召喚をして俺と新を呼び出してふわふわしてるわけだな」


 先輩と同じような思考回路をしている自分に不快な感情を抱く。 いや、同じような思考回路だからではなくお姫様がふわふわしているから悪いのだ。

 僕と先輩の発想が同じ訳ではない。


「なんて頭脳……さすがです、勇者様」


 なんでもありか、このお姫様。


「えと、先輩……ちょっとよく分からないんですけど」


「なんでも俺に頼るんじゃなくて、少しは考えるべきだな。 そうじゃないとここ先の世界ではやっていけない」


「それでどういうことですか?」


「あれだよ。 異世界なんだよここ」


 異世界。 その言葉には聞き覚えがある。

 先輩が、そういうファンタジーな話が好きらしくよく僕にそんな話をしていたような。


「いいか、新。 異世界において事前知識として必要なのは三つ。

オーク、エルフ、女騎士だ」


 その聞きなれない言葉を耳にし、三つの単語の意味を思い出す。

 オーク、豚人間的な何かだったはず。

 エルフ、耳が長いあれだったはず。

 女騎士、女性でプロの将棋する人。


 どうにも共通点が見当たらない気がするが、先人の知恵は聞いて置かないといけないことは分かっている。 ここは素直に聞いておくべきだろう。

 僕がその言葉に頷くと、先輩は満足そうに言葉を続ける。


「まぁ、三つとは言ったが、オークとエルフのセットとオークと女騎士のセットでの二組なんだが」


 新たな情報が追加されてより僕の頭が混乱する。


「えっと、エルフと女騎士には直接的な関係はないんですね?」


「そうだ。

まずはオークとエルフの話なんだが、エルフの里はオークに侵略されるんだよ」


「触りの部分から侵略されるんですね」


 エルフ弱いよ。


「んで、エロいことされるわけだ」


「展開早いです」


「次は女騎士とオークなんだが、エロいことされるわけだ」


「早いです、展開が」


 何が言いたいのかが理解出来なかったが。 どういうことなんだろう。

 異世界はエロいことされるから気をつけろってことかな。


「オークが」


「あっ、オークがされるんですか」


 結局よく分からない。 意味を考えていると、ふわふわお姫様と先輩が何処かに行くようなので二人に付いていく。


 オークがエッチなことをされる……。なんだかんだ言っても先輩は僕のことを心配して教えてくれたようだし、何より先輩は「少しは考えろ」と言っていた、何かしら深い意味があるのだろう。


 ひたすらオークと女騎士とエルフのことを考えていると、先輩が木の棒と三百円を王様からもらっていた。


 どういうことなんだろうか。 先輩はやはり不思議そうにしていないので何かしら意味があるのだろう。


 

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