世界の終わりと手を繋ぎ
空亡の身体を寄せ集めて治した。 赤口はそう言っていた。
身体だけ治して、それに空亡の記憶を詰め込んで、でも魂はそれだけでは治らないから。
まるで粘土細工をするかのような言い草ではあるがそれが事実であるらしく、赤口の言葉に淀みはない。
「そりゃ、そうだろうよ……」
何がいいたいんだ。 引田はそう思う。
何か納得出来るような説明にはなっていない。
「好いてる女に自殺を何度もさせるって……おかしいだろうに」
きっと赤口もそれは理解しているだろうと、説教臭くならないように言葉を選ぶ。
「好きなら、好きで……変わっても愛してやるとか……」
言いたいことはそんなことではない。 説教臭くする必要もないが、引田は赤口に問う。
「いや、違う。 違うな。
そんなことは重要ではないんだ、赤口お前は、変わったこいつをどうしたんだ」
答えは分かっている。 何度も繰り返したと赤口は言っていた。
空亡新ではなく空亡新Bあるいは空亡新2が出来上がったときに、新たな空亡新のためにそいつらをどうしたのか。
「殺したんだな」
その情報は空亡新が言っていた。しかし、彼女がパニックになっていたのもあり情報の信用がなかったがために尋ねたが、赤口は答えない。
黒幕は分かり、少女のためにはこの男をなんとかした方がいいのだと思ったが、少女が頼り縋るのは引田ではなく赤口で、その事実が赤口を糾弾する正当性も、少女を救うという正義もなくしている。
「結局、お前が何をしたいのか分からないよ」
引田の答えはそれだった。
引田は、赤口の心を理解することは出来ないと諦める。
「今回は変わってないんだろ? それでも空亡はまだ生きている。
成功だろ。 俺に手伝うことなんてねーよ」
「……少し、違うんだよ。 新はここまで俺に執着していない」
そう言って。 赤口は空亡の頭に手を伸ばす。
それを止めようと引田は動くが、頭を触られ空亡が嬉しそうにしている姿を見て、躊躇する。 それが勝負を分けたと引田は気がつくが、すでに遅い。
「好きです。 先輩」
世界が真っ黒に染まり、空が亡くなった。
次からまたコメディします