写真
文学カテゴリーで良いのかいまいち不明。
私は写真が大嫌いだ。
といっても、写真というもの自体が嫌いなわけではない。
人物写真だって見るし、昔のアルバムだって見れば普通に懐かしく思う。
風景写真だって、綺麗な風景とかだったら素直に感動する。
ただ、そこに自分の姿が写り込んでいると、とてつもなく嫌な気持ちになるのだ。
写真で自分の姿を見る度に、羞恥心で頭が沸騰しそうになる。いや、それ以前に嫌悪感が沸き起こってくるのだ。
正確に言うなら、写真ではなく、そこに写った醜い自分の姿を見せられるのが嫌なのだろう。
――私は写真ではなく、自分自身が嫌いなのだ。
だからと言って、集団生活の義務付けられた学校に通う間はそうそう写真を断る事なんか出来ない。
ましてやそれが、ようやく得た親友からの誘いとあらば尚更――……
「ねぇねぇ、一緒に撮ろうよ!」
「えー……でも、私、写真撮られるのが嫌い……」
「いーじゃん、記念だよ! もう二度とこの瞬間は残せないんだよ!!」
文化祭も終わって、強制的に撮らされる集合写真も乗り切り、ホッと一息を吐いた頃。
カメラを片手に構えた友人の姿に、せっかく緩んだ緊張の糸も再度張り詰めてしまう。
「ごめん、私無しで撮ってき――」
「だーめっ!」
そっけなく返そうとしたのに、途中で遮られてしまう。
友人は逃がさないとでも言うように、私の腕をガッチリと捕えた。
「あんたがいなきゃ意味ないじゃん! 私が今日、ここで一緒に頑張ったのはあんた! あんたがここにいたって証をずっと残していたいのよ!!」
「……」
私を必要としてくれていると解る、私を大事だと言ってくれている言葉。
今まで、苛められて貶されて、そうして自分の存在価値を疑っていた私にとっては救いの言葉。
「……あははっ、もう……仕方ないなぁ」
不意に込み上げた嗚咽に喉が震えそうになるのを、正反対の明るい笑い声で誤魔化した。
――こうして彼女の言葉に折れてしまったのは、もう何度目になるのだろう。
「いくよー。ハイ、チーズ!」
フラッシュの目映い光。カシャリと鳴るシャッター音。
カメラに向けた自分の笑顔は、相変わらずぎこちないものだったけれど。
デジタルカメラで撮った写真を見せて貰えば、こんな風に彼女と並んで写る自分は、それほど嫌いじゃないなって思えた。
3年前に書いた作品をちょっぴり手直ししたくらいです。
最近ネタが思いつかないなーってことで昔の作品に何かインスピレーション感じれば……感じなかったけど。