お父様の婚約が破棄なんて許しませんわ!
初投稿 いわゆるデビュー作 見ていきな
「あなた様との婚約破棄させていただきますわ、アルフォード侯爵様。後日正式にお伝え致しますので本日は失礼致しますわ」
「そ、そんなぁ。マリア考え直してくれよ…」
シャンデリアの柔らかな光が白い大理石を煌々と照らしている。そんな美しい空間で若い女と形容するには少し年を取っている女は、残酷な告白を突きつける。
ど、どうしてこうなってしまいましたの~~!!
数日前、王都にある私の侯爵邸にてお父様とその婚約者のマリア様の定期茶会が行われた。そこには初めてマリア様のご子息のヒュースがやってきた。その婚約は、お互いに再婚相手を望んだ故の物であった。
私は、お父様の開いた茶会でヒュースとボール遊びをしていた。何故か最初は遊んでくれなかったが
何度も誘うと遊んでくれるようになった。
「ヒュース、早くこっちに来て~、おいて行ってしまいますよ~?」
「ま、待ってくれよ~レティ。レティは僕より大きくて速いんだからさ。」
二人はボールを投げあいながら春の日差しに包まれる。草木が日光にさらされた広場で
小鳥達は歓喜するように囀りながら飛び回り、二人は駆け回っていた。
「ヒュース受け取って!」
「レティには負けないぞーー…あっ」
ヒュースの投げたボールが宙を舞う。
私の頭を通り過ぎ噴水を通り過ぎ、そしてボールはあるところに落ちていく。
「お父様ボールが、」
そう言い終わる前に、お父様の持っていた紅茶めがけてボールが落ちてきた。
ボールはカップを地面へ落とした。
カップは地面と衝突するとともに砕け散る。床に散らばったカップの中に紅茶はなかった。
代わりに床の絨毯に紅茶が染み込んでいく。
「スペード侯爵様!何処か火傷しておりませんか?」
「ああ、大丈夫だぞ。だからそう慌てなくていいマリア殿。こんなの洗えば済む問題なのだからな。」
マリア伯爵が私達に視線を向ける。
その眼つきはとても鋭く、小動物が怯えて逃げ帰るくらいだった。
「ヒュースちょっとこっち来なさい、お話があります。」
「は、はい分かりました。お母さま。」
マリアはヒュースのカーディガンを掴み、私とお父様から少し離れた場所で連れて行こうとズルズル引きずり込む。
私はそれが見るに耐えられずつい声をかけた
「ま、待ってください!お父様もそこまで深刻に物を捉えていません。
私もヒュースもまだ遊び始めたばかりですわ。どうかそこまでお気になさらないでくださいまし。」
そこに私のお父様がヒュースを助けようと席を動かす。そして立ち上がりマリアに声をかけた。
「まあまあマリア殿、落ち着いてください。この通り私はピンピンしております。
ヒュースさんも悪気があって、このようなことをしたわけではありませんし、どうかここは
矛を収めていただけませんか?」
マリアは顔をしかめつつヒュースを私のもとへ優しく送り返してくださった。
「ありがとうございます!マリアお母様」
マリアお母様は私の目線に合わせ頭を撫でる、その目は慈愛に満ち溢れており、先ほどの目つきが噓のようであった。
「ごめんなさいレティお嬢様、私ったらはしたない真似をしてしまいまして、誠に申し訳ございませわ。」
「いいえ大丈夫ですマリアお母様、私は何も気にしてはございませんわ。」
その後私の笑顔を見て安心しきった表情を見せた後、マリアお母様は立ち上がりスタスタと立ち去った。
次にマリアお母様はお父様のところに向かい謝っていた。お父様は少し驚きながらもマリアお母様の謝罪
を受け入れているのを少し遠くから眺めた。
「良かった。私もお父様やみんなで笑顔でいるのが好きだもの。」
私が安心しきっていると後ろから少し怯えた声でヒュースは話しかけてきた。
「ご、ごめんなさい。レティ侯爵様。遊んでて忘れて侯爵様ってつけるのを忘れてちゃってたし、レティ侯爵令嬢様のお父様に迷惑かけちゃったしあのお母様から侯爵の家では厳粛に過ごしなさいって言われてたのに…僕は本当にダメな奴だ、本当にごめんなさい…」
声がだんだん弱弱しくなったヒュースの言葉を私は最後まで聞き入れていた。風が吹けば今にも吹き飛ばされそうな姿に。
「いいのよヒュース!気にしないで、これからもレティって気軽に読んでくれると嬉しいわ。そう呼ばないと怒っちゃうわよ?」
私は出来るだけ満面の笑みでヒュースの暗い気持ちを晴らす。ヒュースは嬉しそうに私に抱き着き涙を流しながら私はヒュースの背中を撫でていた。
「まったくもう、ヒュースったらしょうがない子ね。」
私がヒュースを宥めて泣き終わった後、何事もなかったかのように穏やかなお茶会は続いた。
「ヒュース、今度は鬼ごっこよ。私を捕まえてごらんなさいな!」
私はヒュースのことなんかお構いなしに広場を走り回る。ガゼポを遮蔽代わりにしながらヒュースを困らせていたところ、お父様が立ち上がり。
「娘は元気がいいなぁ、だがそろそろお開きの時間になった。レティよマリアお母様と
ヒュースさんにご挨拶しなさい。」
お父様は私に視線を合わせながら、二人に挨拶するよう促したが、私の気持ちは固まっていなかった。
「え!?もうですかお父様、もう少し遊びたかったのに…」
「あ、あの、悲しまないでレティ、僕たちはまた会えるんだからさ、だからその、今日は楽しい時間を過ごせたよ。ありがとうレティ。」
少し落ち込んでくれている私にヒュースは声をかけて励ましてくれた。そうですわよね、ここで悲しんでいたら侯爵令嬢の名が泣きますわ。
「ありがとうヒュース、さっきとはあべこべね、ありがとう。ねえヒュース、また会った時も遊んでくれると嬉しいな」
二人を玄関まで送り私は改めてお別れの挨拶の言葉を贈る
「マリア・フェルメス伯爵様、ヒュース・フェルメス伯爵令息様、本日はお越しいただきありがとうございました。またお会いできることを心からお待ちしておりますわ。」
私がお礼を申し上げるとマリアお母様とヒュースはお礼を申し上げた。
「いえいえ、こちらこそ息子と仲良くしてくださっていただいてありがとうございました。また会えることがあれば楽しみにしてますわレティ・アルフォード侯爵令嬢様。そしてスペード・アルフォード侯爵様、本日も楽しいお茶会にお誘いいただきありがとうございました。ヒュースも挨拶しなさい。」
「あ、あの今日は本当にありがとうございました。レティ・アルフォード侯爵令嬢様、スペード・アルフォード侯爵様、また会える日を楽しみにします!」
私の隣にいたお父様が優しい笑顔を二人に向けながら声をかけるそんなお父様が私は誇らしかった。
「いえいえ、こちらこそありがとうございました。マリア・フェルメス伯爵殿、ヒュースフェルメス伯爵令息殿、またお会いできる日を心からお待ちしておりますぞ。」
私とお父様は二人の姿が見えなくなるまで手を振り続けた。
二人の姿が見えなくなった後。お父様と一緒に侯爵邸に戻り、次に会える予定が気になり
「ねぇお父様、次に会える日はいつですの?私もう待てませんわ。」
その言葉を聞いた父は少し困った表情を浮かべながら私を抱き上げる。
「うーん、実を言うとまだ決まってはおらぬのだ、だが会おうと思えばいつでも会える、レティがいい子にしてたら早く会えるかもね。」
「わかったよお父さん、いい子にしてるね。」
その日はお父さんの絵本の読み聞かせを聞きながら深い眠りについた、その日は猫のニャーという鳴き声がやけにうるさかったのを覚えている。
あれから数日間がたった。わたしは侯爵邸で遊んでいた。階段を滑り台代わりにヒューと滑り落ちてお父様に叱られたり、チェスで遊んだり、侯爵邸を探索していたある日、予定にない来訪者が現れた。お父様は立ち上がり私に語りかける。
「あれはフェルメス家の馬車だな、何かあったのだろうか?私はソラリウム室でマリア殿の相手をしているからいい子に待っているんだよ。」
お父様は私をハグした後、お父様はソラリウムに向かった。お父様の言う通り最初は溜まっていた本を読んだりしていたがなかなか帰ってこない。
「お父様帰ってこないなぁ、もうあれから1時間も経ってるよ~……よし」
私は意を決してお父様の居るソラリウム室に向かった。私は扉に聞き耳を立てながらお父様とマリアお母様の話を聞いた。
「そ、そんなマリア殿、なぜ婚約破棄などと、考え直してください。私が何か不備を犯しましたか?」
悲しみに満ちたお父様の声が聞こえてくる、って、え!?婚約破棄!!??
「そうですわスペード・アルフォード侯爵様、私マリア・フェルメスはあなたとの婚約を破棄しますわ。」
そ、そんな、聞き間違いなんかじゃなかった…
「た、頼むそれだけはやめてくれ、今からでも話し合おう、な?」
「何度でも申し上げます。あなた様との婚約破棄させていただきますわ、アルフォード侯爵様。後日正式にお伝え致しますので本日は失礼致しますわ」
「そ、そんなぁ。マリア考え直してくれよ…」
ど、どうしてこうなってしまいましたの~~!!ってそんなこと考えてる場合じゃない!!
「なんで、マリアお母様とお父様は仲良かったんじゃないの?どうしてお別れしようとするの!?」
扉を開けて姿を現した私にお父様とマリアお母様は少し驚いた表情をしマリアお母様は私達家族に申し訳なさそうにし、
「ごめんなさい、ただ私は別にあなた達アルフォード侯爵家に不満があるのではありません、むしろご厚意にしてくださったことに感謝しています。誠にありがとうございます。」
お父様は少し不思議に思いながらマリアに尋ねる
「で、では何故婚約破棄をなさろうとしているのです?」
お父様は震える声にマリアお母様は優しく聖母のように答えた。
「私は気付いてしまったのです。私のような教育者として未熟者のような人間に貴方様とは釣り合わないのだと。だからこのような判断をいたしましたわ。………では失礼しました、さようなら。」
な、なんで?マリアお母様は教育者として立派だよ。いつもいつも私にお勉強教えてくれたよね、お外の世界のこと、野草の知識や魔法、それにお絵描きについて色々教えてくれてたのになんで………マリアお母様もお家に帰っちゃったし、お父様大丈夫かな?
「お父様大丈夫?落ち着いて、私も復縁協力するよ。だからお父様お願い、元気出して。」
お父様の背中をさすりながら私は席に座らせて落ち着かせる。
「ハァ~~……娘よ助かった、しかしこれからどうしよう。もう結婚式の取り決めまでしようとしていたのにすまんなぁ、レティよまたお前を一人寂しくさせてしまうしてしまう時間が増えるな、苦労をかけさせる。」
お父様かなり参っちゃってるなぁどうしよう。
「いやぁにしても時が経つのは早いなぁ、もうレティも13歳か。フェルメス家のヒュース君も今年で10歳だからレティにはちょうどいいと思ってたんだけどなぁ。」
どうしたらお父様元気出してくれるかな?うーーん……よし!
「お父様、私ちょっと出かけてくる。お父様はそこで安静にしてて、明日にはすぐに元気にさせてあげるから!!」
出かけようとするとお父様は私の肩に手を置いた。
「待て待て、もしかして一人でフェルメス家に交渉しに行く気か?確かにここからフェルメス家は徒歩で40分位で歩けなくはないが遠いぞ?それにこれは大人の役目だ、このことは私に任せなさい。さて出かけるか、馬車の用意を。」
私は最初それでもいいかと思った。でも、
「お父様、私歩いてフェルメス家にどうしても向かいたいですわ、確かにそちらのほうがいいのでしょうね。だけど私が興味本位で深く考えず聞いてしまった私の責任でもありますわ。だからここは私に任せてくださいまし。あと私に馬車は必要ありませんわ。」
お父様は少し困惑した表情を見せ、少し考え縦に首をうなずけた
「わかったよ、ただし条件がある、まずメイドを連れて行きなさい。最低でも1人だ。あと挨拶代わりの菓子代出すから道中で買っておきなさい。オススメはケーキ屋さんだぞ。さあ行きなさいレティよ。無事に帰ってくるのだぞ。」
やった、お父様からの許可が出たぞ。早速出かける準備だ!!えーっとまずお財布でしょう、それにお父様とのツーショットが付いたロケット、あとハンカチだね。フェルメス家からはここから歩きでも問題ないか、近いし。
じゃあ皆、私今からフェルメス家に行ってきます!
そうして一人で歩こうとするとお付きのメイドが現れた。
「何おっしゃってるんですか、私を忘れてはなりませんよ。」
「やっぱりしれっと一人で行くことはできなかったかぁ残念。」
私は頬を膨らませたがメイドは慣れた手つきで私に付いてくるのだった。
私はメイド1人を引き連れて貴族街を練り歩く、私はこの長い道のりに少しだけうんざりしてきていた。が、めげずに歩こうと気合いを張っていたところ、道中他の貴族達が私と仲良くなるためにお話しようと声をかけてきた。
「ねぇねぇもしかして、あの侯爵家アルフォード侯爵のご令嬢、レティ・アルフォードかい?良かったら僕とおちゃ」
言い終わる前にメイドの一人が高速で亀甲縛りにしもう一人のメイドが男を晒し上げ見世物にしていた。
「大丈夫でしたかお嬢様?脅威は排除いたしましたのでご安心ください。」
うちのメイドすごい!!どうやったの!!
「ねぇねぇメイドさん、どこにそんな縄しまってたの?どうやったらそんな素早く縛り上げられるの?」
メイドは唇に人差し指を当てて
「秘密です。」
「教えてくれたっていいのに、ケチ!」
メイドは何故か微笑みながら私のエスコートをする。仲良くなったら教えてくれるのかな?メイドさんにもケーキおごったら教えてくれるのかな?
「物で釣っても教えませんからね?お嬢様は顔に出やすいのでわかりやすいから助かります。」
私の心が見透かされてしまった。にしても佇まいも綺麗だなぁ私も大人になったらあんなにすごい人間になれるのかな?
「お嬢様、スペード侯爵様からの菓子店候補であったケーキ屋が見えてきましたよ。」
私が将来についてものふけっているとお父様からオススメされていた店が見えてきた。
「ねぇねぇメイドさん、あそこのお店のおススメのケーキって何かわかる?」
「えーっとそうですね、私あまり趣向品を食べないのでわからないです。お嬢様のお力になれなくて誠に申し訳ございません。」
私は何でもできると思っていたメイドの意外な弱点に少し驚いた。そこに綺麗に腰を曲げるメイド、ってそんなに謝らないで!
「大丈夫だよメイドさん。寧ろメイドさんにも弱点みたいなのがあって少し安心しちゃった。」
メイドは少し照れ臭そうにしながら私の手を繋ぎケーキ屋に向かっていった。
「すみませーん、おススメのケーキってありますかー?」
店員さんは私の姿を見るや否笑顔で私とメイドを手厚くもてなしてくれた。
「いらっしゃいませ。どのケーキをお求めになられますか、当店のおススメはショートケーキとモンブランケーキとなっております。如何いたしましょう?」
私はガラス越しに並べられたケーキを眺めていく、ショートケーキ、チーズケーキ、モンブランにチョコレートケーキ。ほかにも色々並べられて選びきれないわ、どうしましょう。
「ねぇ、メイドさんから見て食べたいケーキはあるの?私はねぇこの白いショートケーキがいい、でも他のケーキもとてもおいしそう、どうしましょう?」
私の横でメイドは少し真剣に悩みながら、
「そうですね、私もあまり詳しくはありませんがこのモンブランがとてもよさそうに思われます。
私はもう少し悩んだ後ショートケーキ2つとモンブラン1つ、チョコレートケーキ1つを注文した。
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております。」
私とメイドは店を出てしばらく歩いているとまた私に声をかける貴族が現れた。今度は背をかがめて私に話しかける。
「下がってくださいお嬢様、今からこの下種を縛り上げますので。」
「君、良かったらあそこの飲食店でゆっくりしないかい?そこのメイドさんもブデェ!?」
メイドが何もしてないのに男は前のめりになって倒れていた。不思議に思い、メイドと目を合わせていたがメイドもよくわからないと首を横に振っていた。そして男の体で隠れていたシルエットが姿を現した。
「あ、あの大丈夫だった!?君がその、絡まれていたからあの、助けたくて。あ、そこの男大丈夫かな?
もしかして、ボボボ僕やっちゃった!?」
右手をジンジンさせていたヒュースだった、見知った顔が現れて私は安心しきっていた。
「…………気絶ですね。たんこぶがあるだけで特に問題はありません。」
それを聞いたヒュースは心の底から安堵した後、私の元へ駆け付けた。私はヒュースをハグし頭を撫でてあげる。全くヒュースが逞しく見えても中身は変わってないなぁ。
「そういえばヒュース貴方どうしてここにいるの?」
私が不思議がっているとメイドは私に問いかけた。
「お嬢様に問題です。ここはどこでしょうか?」
何処と言われても周りには大きな屋敷があって、馬車が音を立てながら駆け回り、メイドが複数人で庭園に水でお世話している……もしかして。
「ここもしかしてヒュースが住んでいるお家!?やっと着いたのね、歩きで来たので疲れましたわ」
ヒュースが驚いた顔で
「ここまで歩きで来たの!レティはすごいね!」
私はヒュースに褒められて意気揚々とヒュースの家にお邪魔したがマリアお母様を見た途端体に緊張が張り巡らせた。
「スペード侯爵の令嬢、レティ・アルフォードです。今日はスペード・アルフォード侯爵様の婚約破棄の解消をしに参りました。まずはこちらをお受け取りください。」
私は先ほどのケーキ屋で買ってきた物をマリアお母様に差し出した。
「ありがとうございます。レティ・アルフォード侯爵令嬢様。私が案内します、ついてきてください。
マリアお母様は流れるようにメイドにケーキを預けた後、大広間へと案内され、私達4人全員に紅茶が配られていく。紅茶に一口手を付け本題に切り込む。
「ありがとうございます。早速本題ですが今回の婚約破棄はマリア伯爵様の教育者として未熟だとお聞きしました。ですが私はそうは思いません。考え直してくださりませんか?」
マリアお母様の耳が少しだけ揺れたような気がする。だがマリアお母様の口が開く。
「私があの時ああいったのは私の息子、ヒュースを見て思ったことなのです。私は貴方を見て自分が如何にこの子を甘やかしていたのかが分かりました。そして仮にも貴方の母親になるのです。私は自分の不甲斐なさを感じ婚約破棄をしました。いえ正確にはしようとしている、ですね。」
その話を聞いたヒュースは酷くうずくまり、私の元へ行こうとしたが、マリアお母様に抱き寄せられヒュースの願いは叶わなかった。私が口を開こうとしたとき、メイドがマリアお母様に声をかける。
「お言葉ですが、ヒュース伯爵令息様はマリア伯爵様が思う程ではありません。私とレティ侯爵令嬢様がほかの貴族に言い寄られているときに身を挺して守ってくださりました。そのような方がマリア伯爵様のお眼鏡にかなわないとはとても思えません。どうか婚約破棄を考え直してくれませんか?」
マリアお母様はその話を聞き、隣にいるヒュースへ声をかけた。
「ヒュース、今の話、本当ですか?」
「…………本当ですマリアお母様」
マリアお母様は真剣にヒュースの話を聞き入れていた。ヒュースもメイドもマリアお母様に語り掛けたんだ、私だって勇気を振り絞らなくちゃ!
「マリアお母様、聞いてください。私はマリアお母様は教育者として立派だと思っております。いつもいつも私にお勉強教えてくださりましたよね?お外の世界のこと、野草の知識や魔法、それにお絵描きについて色々教えてくださりました。マリアお母様が思っているほど教育者として失格などしておりません。誰もそんなこと気にしておりません。ですのでどうか婚約破棄の取り消しを何卒よろしくお願い申し上げます。
マリアお母様は私とヒュースを交互にみながら感極まったようでヒュースに抱き着いていた。
「ごめんねぇヒュース、私が侯爵家でいつも緊張してそれをあなたにも押し付けてしまって……レティ侯爵令嬢様、貴方のお父様にも伝えてほしいのだけれど婚約破棄を取り消させていただきますわ。
やったーーー!婚約破棄!これでお父様とマリアお母様が結ばれるのね、ここまで苦労した甲斐がありましたわ。
「ええその言葉を聞けてとても安心いたしましたわ。これからも仲良く家と仲良くしてくださいね。」
「ええ、もちろんですわ。さて、会話をしていたら紅茶が覚めてしまいましたわ。仕切り直して楽しいお茶会にいたしましょう。」
その後新しい紅茶が注がれ、私達が買ったケーキで楽しいお茶会が開かれた。私とヒュースにショートケーキ、メイドにモンブラン、マリアお母様チョコレートケーキが配られていた。ヒュースはショートケーキを食べながら私に声をかけてきた。
「あ、あのさレティ、今日は本当にありがとう。今日もそのレティに助けられちゃったね、……僕さ強くなるよ。強くなってレティに守られるんじゃなくてレティを守ってあげたいんだ。だからさその、今後ともよろしくね、レティ。」
レティからそんな言葉が聞けるなんて、今なら言ってみてもいいかも、期待しているわよヒュース。
「ならヒュース、私と付き合わない?お互いいいコンビになれると思うの」
「え!?いやあの僕でいいのレティ、僕はまだ強くないよ?」
「そんなの付き合いながら鍛えていけばいいのよ、それでだめなのかしらヒュース?」
「うん!!」
私の告白にマリアお母様とメイドが祝言をのべていた。
「おめでとう、これからもうちのヒュースと仲良くしてほしいわ。」
「おめでとうございます、お二人の幸せを心から願っております。」
「ええお母様もメイドもありがとう。」
にしても外がほんの少しだけ騒がしいですわね、何かあったのかしら?
「ねぇマリアお母様、外が少し騒がしいことではありませんこと?何かあったのかしら。」
私がそう尋ねたとき外からドタドタと大きな足音が聞こえてきた。
「レティ!やっぱり心配だからお父さんが交渉しに来たぞ!!さぁマリア殿私とお話を…あれ?」
まあお父様ったらとんでもないサプライズですこと。お父様が肝心な時に動いて、皆のことを大切にしているから慕われているのは分かりますが、その肝心な時は今ではありませんのよ?
「…フフフフ、お父様、もうお父様が抱えていた問題事はもう解決いたしましたわよ?あいにく今はお茶会をしておりますの、お父様の席はないからおかえりなさいましお父様。」
「そ、そんなぁ」
あのドタバタした騒がしくも愉快だったお茶会から数か月後様々な変化が起こっていた、お父様とマリアお母様が結婚し私とヒュースは仲良くデートしたりしていた。
「おめでとうございます。本当にめでたいことですわ。これでもうよそよそしくマリアお母様と呼ばずにお母様と呼んでもよろしいのですわのよね?」
「ええそうよ、今後ともよろしく致しますわねレティ」
「おいおい、お父さんとお前の義理の弟になったヒューイのことも忘れてはならないぞ。」
「そうだよレティ、僕のこと忘れてないよね?」
私のお父様とヒュースが訪ねてきた、まったくもう、私を何だと思っておりますの。
「そういえばまだ私お父様からのお礼の言葉をもらっておりませんわ。誰のおかげでお母様と結婚できたと思いますの?あの時お母様に婚約破棄されていたところを、私が説得に赴いたおかげで今があるのですわよねえ。お・と・う・さ・ま?」
フフフ、お父様ったらわかりやすくビビっておりますわ。
「そ、その何だありがとうなレティ、お前の活躍のおかげで今回マリア殿と結婚出来ることができた。レティには今度ほしいものを一つ買ってやろう。改めてありがとうな。」
もう、最初からそう言えばよろしいのよお父様。お父様の婚約破棄なんて最初から許してませんからね!




