つないだ命の記録
15分短編です
「あ、本当にあった」
すでにボロボロになってしまった地図をポケットに仕舞って、気を付けながら段差を降りた。
手元にあった数値計で周囲の酸素濃度、毒素などを調べる。問題なさそうだ。邪魔になったガスマスクを外すと、久しぶりの外気を楽しんだ。
「生物兵器だったアンドロイドの傍が、今は一番安全なんて、なんか皮肉」
私は、おばあちゃんの話を思い出していた。
私が生まれるずっとずっと前、とある国の、頭のおかしな科学者が作った、戦争用対人戦闘アンドロイドとの戦争の話。おとぎ話みたいに思っていたけど、実在するんだもんなぁ。
人と同じ形をしていて、でも人間よりも大きくて、歩くだけで建物を壊し、動物も人も関係なく踏みつぶす。内蔵されたタンクから毒ガスを噴き出して、周囲数百キロメートルの生物を一網打尽にできてしまう。
そんな恐ろしい生物兵器が、いま目の前にいる。
おばあちゃんの話では、ある一体のアンドロイドが、バグを起こして、同士討ちを始めたことで、この戦争は終わったんだけど、内蔵された毒ガスが地上に残っているせいで、人間は地下の世界に追いやられてしまったんだって。
人間は存外強かだったから、地下の世界に文明を築いて、今まで生き残ってる。おばあちゃんの時代の戦争だから、私に実感がないのは、まぁ、良いことなのかもしれない。
でも未だに毒ガスの強い場所が多いから、地上での暮らしは当分無理だろうって言われる。
私は地上探索部隊に入って、ガスマスクをつけて地上を探検する仕事を与えられたから、今は自由に外に出られる。まぁ、マスクが無いと普通に息できないし、長くはいられないんだけどね。
アンドロイドに内蔵されたデータを読み込んで、おばあちゃんからの密命は完了した。
帰る前にデータを少し覗いてから帰ろう。
映像データがたくさん残っていたけど、どれもこれも人を殺す映像ばかり。殺伐としてるなぁ。
途中に移った少女がなんとなく気になった。これ、なんか私に似てるな・・・・。あ、この子が持ってるクマの人形、私がおばあちゃんからもらったものに似てる・・・。
この後から、このアンドロイドは、急に動きを止めた。その後、突然、他のアンドロイドを殺し始めたのだ。
結局殺伐とした映像に違いはなかったが、おばあちゃんがこのアンドロイドを見つけ出して、秘密裏にデータを持って来てほしいと言った理由が、少しわかった様な気がした。
そこらで積んだ花で悪いけど、お礼を兼ねて。
——「ありがとう、おばあちゃんを救ってくれて」——
さ、子供たちの為に早く帰ろう




