42 血を啜る蛇
「そろそろ、目覚めさせねばならなくなったねえ」
暗い部屋の中に浮かび上がった蛇が、そう言った。
「いやいや、待って。噓でしょ? さっきまでここには、あたししかいなかったはず。なんで、こんな大きい蛇がいるわけ?」
混乱して叫ぶと、蛇が笑いながら――そう、笑っているのがわかったのだ――さらに言う。
「わかっているのだろう? 私はおまえの中にあった。必要な時期がきたので、こうして表に現れたのだ」
そんな、あたしの中にいたなんて、わかるわけないじゃない!
そう反論したかったけど、確かにあたしの内に「その通りだ」という感覚があった。
「ときがくるまでは余計な考えを持たせないため、神話の話はお前の中に入ってこないよう、遮断していた」
「もしかして、神話のことを誰かが話すたびに眠くなったのって、あんたのせい?」
「そうとも」
こうしてその蛇は、あたしに神話の世界のこと、世界樹の根を齧っていたニーズヘッグ、あたしがその血と魂を受け継いでいることを説明してくれた。
「え、じゃああたし、大昔は蛇だったってこと?」
「私は蛇でもあり、竜でもある。世界樹の根を齧り、死者の血を啜るもの」
「ええーっ、あたしは木の根っこなんて齧りたくないし、死人の血なんてもっと啜りたくない! やなこった!」
「黙って話の先を聞きなさい。私から話を聞かなければ、お前はこれからも、フレースヴェルグ、ラタトスク、そして自分自身の関係を知ることができない。即ち、この先フレースヴェルグがラタトスクに相対するとき、正しい判断が下せなくなり、彼の助けになれないのだ」
うう、マックスを人質に取られたようで納得できないけど、ここは黙って言うことを聞くしかない。
「わかった。教えて」




