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40 マクシミリアン、ライラの髪を受け取る

 あたしが地下の部屋で蛇と出会っていた頃、マックスはトールビョルン第四王子を追うことにしたそうだ。


 + + +


 ライラが連れ去られてしまった後、私はすぐに城へ帰ることを決めた。


 トールビョルンが行くところと言えば、王城しかない。

 エシィ同様、身体が弱くて外に友人の一人もいなかったからだ。


 尤も、身体が丈夫だったとして、彼が友人を作っていたかどうかは、別の話だ。


 ちなみに、私にも友人はいない。



 城に戻れば私はまた監禁されるだろう。

 抜け出していたことがわかれば、今度は自分の部屋などではなく、地下牢に入れられてしまうかも知れない。


 それでも、ライラを助けるためなら構うものか。

 なによりもライラの無事を優先させなければ……


 そう思い詰めていた私の肩を、マグヌス氏が優しく叩く。


「大丈夫、ライラはああ見えてしたたかだし、栗鼠(りす)()()()がライラを殺すことは、まずない」


 マグヌス氏の栗鼠(りす)()()()、という言い回しが面白くて、こんなときなのに、つい笑ってしまった。


「そうそう、笑って余計な力を抜いて、ね」


 落ち着いているマグヌス氏の顔を見ながら、今回会ったら聞こうと思っていた質問を、再度尋ねる。


「あなたはなぜ、『吸血樹』退治の相棒にライラを推薦されたのですか? 彼女本人は、あまり魔力がないと言っていました」


 引き出しからなにかを引っ張りだそうとしていたマグヌス氏が、動きを止めて振り返った。


「魔女としての力、かね。なるほどライラは、魔力の量はあまりない。しかし他の魔女にはない、大きな力があるのだ」


 そう言いながら、布で出来た小さい袋を私の手に押し付ける。


「なんですか? これは」


「ライラの髪の毛が入っている」


「え……」


 ウリカのことを思い出した。

 正直「髪の毛が欲しい」と言われたときには、少々気味が悪く感じたものだ。


 普通は「髪を受け取る」という言い回しで、親しい人を亡くした意味になることは、詩などの表現で知っている。

 とはいえあのウリカのことだ。たぶん私のことを心配するあまり、ああ言ったのだろう。


 しかしてマグヌス氏まで、なぜライラの髪を持っている?

 そしてなぜ、私にそれを渡そうとする?


 よほど顔に、その疑問が表れていたのだろう。

 マグヌス氏が笑って説明をしてくれた。


「わしら魔法の民にとって、誰かの髪の毛を持つのは、互いの無事を確かめ合う手段なのだ」


「へえ」


「親しい間柄なら、皆互いに髪の毛を持ち合う。ライラもわしの髪を持っているはずだ。それに友人のアンネリとも。魔力の弱いライラでも、自分が持っている髪の毛の相手の安否なんかは感じ取れる」


「なかなか、便利なのですね」


「もう少し魔力の強い者なら、髪の毛の主の居場所を当てて、連絡を取り合うこともできるぞ」


「そんなことも!」


 改めて私たちは魔法のことを知らなすぎるのだと、思い知らされた。


「でも、あなたに渡されたはずの彼女の髪の毛を、私が持っていたら、ライラが勘違いしませんか?」


「それはないな。持ち主が他の誰かに移ったことくらいなら、あの子でもわかる」


「へえー……」


 感心する私に、マグヌス氏は更なるライラの秘密を語りだした。

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