35 悪い夢
その夜、マックスに自分の寝台を貸したあたしは、ソファで寝る。
暖炉に熾火を残しておいて、その熱で暖をとっていたのに、夜中にこめかみが痛んできた。
――いやだ
――身体が冷えたかな?
――それともなにか、悪い予感……?
なんだか嫌な夢にうなされているような感じ。
その夢うつつの中で、あたしは何かの生き物を見た。
オオカミとか鹿とかじゃなくて、もっと小さいモノ……
何かが、こちらに、向かってくる……!
「うう……」
目が覚める直前の夢の中で、自分がうなされている声に、他の誰かの呻き声が重なって聞こえる。
――マタ ダ
――マタ アノ ユメ ダ
誰の、声……?
――マクシミリアン ト ヤクソク シタノニ
――ダカラ ネムラナクチャ イケナイノニ
――アノ オソロシイ モリノ ユメヲ ミルノガ コワイ……
「ライラや、ライラや」
義父さんの声で、あたしは飛び起きる。
「どうしたんだい? うなされていたよ」
「ああ……」
夢の中同様、こめかみにズキズキと痛みを感じた。
「いやだ、どこかで吸血樹が生えてきているのかしら……?」
悪い予感がするときや、なにか悪いことが起きる前に感じる、こめかみの痛みがひどい。
「とりあえず、頭痛に効く茶でも飲むか?」
「うん……」
ソファから起き上がろうとしたら、ぐらりと景色が揺れた。
背もたれに掴まるあたしに、義父さんが心配そうに顔を覗き込む。
「どうしたね?」
「うん、ちょっと眩暈が……、貧血かしら。なんだかこう、『血が足りない』って感じがする」
「『血が足りない』……?」
その言葉に義父さんは眉を寄せて考え込んでいたけど、あたしは夕べからの疲れもあって、お茶を飲んだ後はまたすぐに眠ってしまった。




