22 王家の裏事情 2
「ねえ、第一王子と第二王子で王太子の座を争ってるって言ってたよね? 三番目のお兄さんじゃ、だめなの?」
「…………エシィは、体がとても弱いんだ」
「……ああ」
なるほど。それなら王太子争いには加われないか。
「体が弱いって、持病かなにかあるの?」
その問いに、マックスは頭を横に振る。
「原因不明なんだ。小さいころから虚弱体質で、このところますます痩せてしまってる」
「それは、心配だね」
「うん」
頷いて、ションボリと肩を落とす。
マックスっていいかげん顔に、というか態度に出やすいよね。
苦笑しながら、また質問をした。
「四番目のお兄さんは? どんな人なの?」
そこでマックスの態度が再び変わった。
上二人のお兄さんのとき以上に、顔が強張る。
「うー……ん……」
そして眉間にしわを寄せたまま、唸りっぱなしで言葉が出て来なくなった。
腕を組んで俯いたまま、顔も上げてくれない。
「どうしたの? どんな人なの? 四番目のお兄さんって」
「……できれば私は、この場にいない誰かの悪口を、言いたくないんだ」
「つまり、お兄さんのこと悪く思ってるってことね」
「あああ……!」
今度は頭を抱えて寝台に突っ伏す。
見ていて面白いな、この生き物。
「その通りだ……! 何も言っていなくても、悪口を言ったのと同じだ!」
今まで見てきたマックスは、たいていの場面で気のいい兄ちゃんで、確かに今まで「悪口」とはっきり言えることは言っていなかったと思う。
「いいよ、いいよ。悪口を言わないようにするっていう心がけは、いいことだと思うよ。……で、どんな人なの?」
意地悪く詰め寄るあたしを恨めしそうに見た後、視線を逸らしながらボソボソと話し始めた。
「四番目の兄のトールビョルンは、エシィとは双子なんだ。……でも、エシィとは全然違う。なんていうか、その…………得体が知れない」
「得体が知れない?」
あれ? なんだっけ。
つい最近、あたしもなにかに対して「得体が知れない」と思ったような……。
「トールは、何を考えているのかわからない人だ」
眉間にしわを寄せたまま、枕を抱えながらマックスは話す。
時々背筋をブルッと震わせるけど、そんなに怖い人なんだろうか?
「上手く言えないのだけれど、なにか邪悪なものを感じてしまうのだ。エシィとは双子だけれど、まるで聖霊と悪霊ほどに違うものを感じる」
「悪霊って、ずいぶんな言い草ね。なにを考えているかわからないんだったら、そんなときこそあんたの『真実の瞳』を使えばいいじゃない」
「それがわからないんだよ」
マックスは枕を置いて体を起こす。
あたしを真っ直ぐ見ながら、声を潜めた。
「元々『真実の瞳』は、曖昧な問いかけには効かないんだ。だからトールが何を考えているか? みたいな漠然としたことはわからない。……そこで、あるとき瞳の力を使ってみたことがあるんだ。『トールは人間か、否か?』とね」
「……それで?」
人間かどうか確認したくなるほど、妙な人なんだろうか?
「答えはこうだ。『人間でもあるし、人間でもない』」
「なによ、それ!」
前に「真実の瞳」に問いかけたものは、質問者の気持ちに関わらず本当のことを教えてくれる、と聞いたことがある。
マックスがお兄さんのことを「得体が知れない」と思っていようがいまいが、その質問に対しては本当のことを教えてくれるはずだ。
……ということは、本当に「人間であって」「人間でない」存在なんだろうか。
そんなことって、有りえるんだろうか。
そんな思いに耽りかけたとき、窓の外でガン! ガン! ガン! ガン! と割れるような鐘を打ち鳴らす音が響いた。
「え? なにこのうるさい音」
思わず両手で耳を塞いだあたしに、マックスがコートを羽織りながら叫ぶ。
「あの音は、緊急事態が起きた知らせだ!」




