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21 王家の事情

「私の、家族? ……そうだなあ。あまり楽しくない話だけど、いい?」


「勿論」


 うーん、とか、えーっと、と何度か口ごもった後、マックスが話してくれた国王一家の話は、確かに楽しいとは言えないものだった。


「一の兄上ダーヴィドは二十五歳で、二の兄上ニクラスは二十二歳。そろそろどちらかを王太子に決めてもいいはずなのだが、父である国王陛下がどちらにするか決めかねている」


「……それが、どちらも優秀で決められないっていうなら、あたしら平民としては喜ばしいことだけどね」


 あまりそうは思えないけれど。


「父上は、前も言ったけど元々は気が弱い方なのだ。それでも王になるしかなくて、王位に就かれている。大切な案件の判断は、妻である王妃陛下に確認してから決定されているのだが、最近は父抜きで宰相たちが直接王妃陛下に話を持っていくこともあるようだ」


「へえ。じゃあ王様は少し気が楽なんじゃない?」


「ところがそうでもないんだ。ご自分抜きで話が進んでしまうと、それはそれで面白くないらしい」


「えー! わがままだね、それって」


 自分で決定するのも嫌だし、自分抜きで決定されるのも嫌だなんて、子供みたい!


「そう言ってくれるな。自分の生き方を、自分で決めることが許されなかった方なのだ。多少は大目にみて欲しい」


「そうやって周りが甘やかすから、いつまでも自分で決められないんじゃないの?」


「耳が痛いな」


 笑うマックスを見ながら、ふと気になって質問する。


「マックスは? 自分の生き方を自分で決められるの?」


「……そうだな」


 マックスはまだゆったりと笑っている。

 彼は笑っていることが多い。

 そしてあたしは、マックスの笑顔を見るとなんだか安心するんだ。


「確かにそれほど自由ではないかも知れない。でも父上や兄上たち、それに王妃陛下に比べれば、ずっと自由だと思うよ。皆、家柄や血筋によって、物心がつく前から進むべき道が決められてしまっている。私はいざとなれば、そこから抜け出すことだってできるからね」


 抜け出すこと……。

 それって多分、王族から外れるってことだよね?

 それを自分で選べるのはいいけど、こんなポヤポヤした箱入り殿下が王室を出て、ちゃんと生活できるんだろうか。


「お兄さんたちって、どんな人なの? ちゃんと次の王様に相応しい人?」


「……難しいなあ」


 はは、とマックスはまた笑った。

 困ると笑うよね。

 つまりお兄さんたちって、どんな人か話すのに困るタイプなんだな。


「一の兄上、第一王子のダーヴィドは、剣の使い手だ。体も大きくて、よく鍛えている。あとは、そうだな。尊大でプライドの高い方だ」


 一生懸命、言葉を選んでいることは伝わった。


「二番目のお兄さんは?」


「二の兄上、ニクラスは、ダーヴィドに比べると頭脳派だな。王立学院での成績もトップだったと聞く。背もすらりとして高く、女子学生には人気があったらしい」


 こちらも、言葉を選んでいることがバレバレだ。


「三番目のお兄さんは?」


「エシィは、すごくいい人だよ!」


 おっと。はじけるように表情が明るくなる。

 第三王子の話題になったら、反応がガラッと変わった。


「エシィっていうの?」


「本当はエスビョルン。私と一つしか違わないのだけど、いつも優しくて落ち着いていて、誰に対しても親切な方だ。頭だっていいんだよ」


 第一王子や第二王子に対するのと、態度が違い過ぎるぞ。

 でも、三番目のお兄さんのことを話すマックスは嬉しそうで、見ているこっちもホッとする。

 よかった、ちゃんと家族らしい家族がいたんだなって。

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