15 真実の瞳の代償
マックスにそう言われて、なぜかあたしまで後ろめたい気分になる。
今まであたしは、自分ではちゃんと仕事をしていると思ってきた。
ちゃんと自分のシマを探して、占いをして代価を得て。
でもそんなの、炭鉱の奥深くで仕事をさせられている子供たちに比べたら、全然大したことじゃない、と気づいてしまったのだ。
「ねえ、マックス。あんたが吸血樹をどうにかしたいって気分、少しだけわかるよ」
「本当?」
「あんたはさ、あたしのこと仕事をして生活してるって言ってたけど、その炭鉱の子供たちに比べたら苦労のうちに入らない。そりゃ、時々な嫌なこともあるけど、お気楽なもんだよ」
「嫌なこと? 例えば?」
「え、大したことじゃないよ。『占いなんて、魔女みたいなことをするな』って突き飛ばされたり、代金にわざわざツバを吐きかけてから渡されたり、一番ヤバかったのは、個室に連れ込まれそうになったこと、かな」
「……個室に? 一番高い席を奢ってもらったの?」
あ、わかってないな。
さすがに上品な育ちの王子様に、こんなことを言うのも憚られたけど、言いかけたことなので説明した。
「つまり……、二人しかいない個室で、いやらしいことをされそうになったの。服を脱がされかけて、ちょっと胸を揉まれただけ。でも、すぐに張り倒して……」
そこまで言ったところで、マックスの形相が変わった。
「どこの……誰だ! 君にそんなことをした奴は!」
「え……、どこの誰かなんて、わからないよ。それ以来会ったこともないし……。あ、それに殴って逃げたから特に被害はなかったし……」
嘘だった。
大したこと、されてない。
そう自分に言い聞かせてきたけど、脂ぎった顔を近づけられ、服の上からとはいえ胸を掴まれたときの恐怖は、今も覚えている。
「嘘はいけないよ、ライラ。とても怖かったんだろう?」
「どうしてわかるのよ……」
顔を上げて言葉が止まった。
マックスの目は、右が赤、左が青になっている。
「ちょっと、『真実の瞳』を無駄遣いしすぎじゃない?」
「君の嘘を見抜くには、必要だからね。全然無駄遣いじゃないさ」
そう言いながら、そっとあたしの手に自分の手を添えた。
「ほら、手が震えている。声も震えていたから、わかった」
「じゃあ、『真実の瞳』を使う必要ないじゃない! やっぱり無駄遣いだよ、もう」
「それも、そうか」
笑うマックスの手を、あたしは振りほどくことはしなかった。
あの一件以来、実は男の人が苦手だったのに。
あたしは横を歩くマックスの顔を見上げる。
(……細身だからかな?)
確かに、あたしが本気で抵抗すれば、気絶させることくらいはできそうで、圧迫感はない。
でも(怖くない)と思うのは、それだけではないような……
そんなあたしの考えとはかけ離れた言葉が、マックスの口から出てくる。
「ライラ、お願いがあるんだけど」
「なに?」
「城門を出てしばらくしたら、私は気絶するはずだから、そのときは周りの目を誤魔化して欲しい」
「……はあ?」




