第1話 新たな人生?
サルタナ王国で、私はメイドとして働いていた。
朝五時に起き、顔を洗い、メイド服に着替える。朝食の用意をして、六時半にはこの屋敷の主──フリック伯爵を起こし、着替えを手伝う。
そのあとは屋敷の掃除、庭の手入れ、晩御飯の支度。終われば就寝。
これが、私の毎日のルーティンだった。――昨日までは。
「おはようございます。リベラ様」
(男の声)
暖かく、安らかな声に私は目を覚ました。
目を開けると、見慣れない高級感あふれる天井が広がっている。
周りを見れば、暗いカーテンがベッドをぐるりと覆っていた。まるで主の寝台みたい。
「……にしても、いいベッド。二度寝しちゃいそう……」
メイドの私には勿体ないほど、ふかふかで気持ちがいい。
しかも、どこか安心できる、言葉にできないほどいい匂い。
このままだと……また、眠ってしまいそう――。
そのまま、私は再び夢の世界へと沈んでいった。
「リベラ伯爵。起きてください。でないとご飯が冷めますよ...魔法なんかがこの世界にあれば簡単に起こせるのに」
リベラ伯爵?早く起きないと……二度寝しちゃ……。
「伯爵……?リベラ?私が伯爵……?」
「リベラ伯爵!起きてください!そろそろ起きないと、ご飯どころか王様との会談にも間に合いませんよ!」
王様と会談?
そんなの、メイドの私には関係ないはず……。
リベラ伯爵って誰のこと?フリック伯爵じゃなくて?
「……私が、伯爵!?」
私は飛び起き、着替えを持ってきた執事に詰め寄った。
「どういうこと!?」 「とぼけずに早くお着替えください。馬車もご用意しております」
「っていうか、なんでフリックが執事なのよ!」 「何をおっしゃっているんですか、リベラ様。私は元から執事ですが?」
「フリック様ー、そんな冗談やめてくださいー!寿命が縮んじゃいますよ!(涙)」 「お遊びは結構です。自分で脱がないのなら、私が脱がせますよ」
それだけは勘弁!
女の子……しかも十六歳になった私の服を脱がせるなんて!?
いくら主人でも許しません! そんなことされたら嫁に行けなくなっちゃうじゃないですか!
ここは大人しく従うかないのか。
「……わかったよ。フリック」
「では、リベラ様。外でお待ちしておりますので、お早く」
ガチャ。
ドアが閉まると、あたりは静まり返った。
「……ところで、私、なんで伯爵になってるのかしら?」
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つづく