一緒なら、どんなことも怖くない
時間が止まる
それは、まだ誰も知らない 科学的解明できない現象であり、
体験したものの体感やなんらかの病によって誤認しているにすぎない。
そう向けられるであろう。
わたしの行っていた大学は、解明されない不思議な現象や実験
未確認生物や超能力まで、謎を徹底的に模索する 部活があった。
わたしも...その部員の一人だった。
心霊系は、自己責任として
誰も責任の取れない取材や肝試し
結局何も起こらなかったのに対して、一つきになることはあった。
同じ部活の部員に、オカルトが大好きな 幽霊を信じない変な人がいた。
その人は、心霊スポットに行ったきり
戻って来ることはなかった。
聞いた話によると、別の理由だったらしい。
心霊スポットには連絡をしながら行ったため
知るものは多い
だから、行かずにサボっていたらみんなにバレている。
彼は、
彼の戻らなかった理由は、他の部活の先輩からのいじめ。
大好きな部活どころか、大学にも行きたくなくなるようなひどい仕打ちを受けていたと、彼の残した日記に記してあったらしい。
実際彼はどうしたか?...
彼は、日記を残して海外へ移住。
同じオカルトが大好きな人たちと集まって、楽しく研究をしているとのこと。
朝の7時
佐「なんで、大学時代の夢... あぁ...昨日...」
実は昨日...勝八が帰った後、
部屋がやけに散らかっていて、片付けなきゃと
まとめていたら、写真が出てきた。
そう、大学生の頃の写真が数枚 挟まっていた何かから出てきたのだろう。
それで、昔の事を思い出した。というかつい最近な気もする。
なぜ大学生じゃないのかというと、途中でやめた。
学費を払うのも大変だし、家族にも迷惑はかけられない。
特に夢があったとかやりたい仕事があったとかでもなく、勉学のために
行っただけで...そこから就活をはじめた。
佐「勝八?...」
朝イチで勝八からの着信。
佐「もしもし...どうしたの」
勝「ごめん、寝てたよね」
佐「今起きて...大丈夫だよ、どうしたの?」
勝「実は...大切な話があって。 すぐ伝えたいから
早めにと思って...今夜、時間ある?」
佐「あぁ、うん。大丈夫 バイトだけど夕方だからすぐ終わるし。」
今夜、勝八と約束をした。
わたしの家で、勝八から、大切な話がある と。
バイトが終わって、
約束した通り 外で勝八が待っていた。
佐「ずっと待ってたの?中に入って待ってた方が...」
勝「ううん。大丈夫(^-^)
バイトおつかれ 行こうか」
道中も、普通に話して
今日は お客さんが少なかった事とか
最近眠れてる?とかそんな話をしながら帰った
家に着いてから勝八は、前みたいに ポーカーフェイスな面持ちで...
まるで知らない人みたいに、空気が変わった。
道中は、あんなに楽しく話していたのに
そんなこと 微塵も感じられなくなるくらい
シーンとした時間が流れる。
勝「あのさ..、真面目な話になるんだけど
心の準備 いい?」
佐「は、はい。大丈夫です」
今から、何を話すんだろう...?
わたしは、何を聞くことになるのだろう って
それだけが気がかりで、このまま会えなくなるんじゃないかって
なぜだかそんな気がした。
勝「じゃあ、単刀直入で悪いけど...
俺... 時間を操る能力があって、るいが泣いたら時間が止まるって
説明したけど、あれ 俺がそうさせた。
そうなるように、仕組んだ。」
わたしは黙って、驚かずに
ただただ勝八の話を最後まで聞こうと
真剣に耳をたてていた。
勝「で... なんで、俺がこの能力を持ってるか
そこから説明すると長くなる。」
佐「いいよ、最後まで聞く。だから話して
勝八の事知りたい! 」
勝八が静かにうなずくと、そのままはなしをつづけ
能力の説明から話してくれた。
勝「俺がこの能力を持つようになったのは、高校生の時だった。
うちは、母親が一人で俺を育てたから 俺は何もできなくて、悔しかった...
寝る間も惜しんで、夜遅くまで働いて、家計簿とにらめっこしててさ...
あるとき、母さんに言ったんだよ。俺、卒業したら働くから 金貯めて母さんを楽させるからって...口先だけになるのが嫌ですぐにでもバイトをはじめた頃だった。
けど、母さんは笑ったんだ
『心配しなくていいから、自分のやりたいことやって、諦めちゃダメ!母さんはあなたが幸せならそれでいいの!』そう言われた時、ああ、この人はいつだって
俺の事しか考えてない 自分の事は後回しで、自分の服ですら買おうとしなかった。」
勝八のお母さんはきっと、自分の子供のために働いて...
苦しくても たった一人の息子のために遅くまで。
勝「そんなときだった、うちに取り立てが来た...
借金してたんだよ。子供の一人のために、病気しても大丈夫なように
偉い人と契約してた... 借金は返せたけど、休み無く働き漬けだった母さんは過労で結局 体を壊した。
そんな俺も、バイトを掛け持ちして 母さんを病院につれてくために
働いて、働いて 時間の余裕もなくなって 寝ればあっという間に次の日で
あぁ...いつまでこんな日が続くんだろう いっそ消えたら楽になるのにって
それができないのわかってたから、せめて時間があればって
そしたら、突然止まったんだ。周りの何もかもが... 時計だけじゃない
窓の外の鳥も、歩いてた人も車も全部!! 夢見てるみたいだった...
漫画じゃあるまいし こんなことはじめて体験したし、最初は混乱した。」
(なんで時間が止まって、なんで急にそうなったのか訳もわからず
隣の部屋で寝ていた母さんの声も
風どころか、呼吸音さえ聞こえなかった...
自分の荒ぶった呼吸だけが聞こえて 俺は、すべてがどうでもよくなった)
勝「そんなときだった。
人の家に勝手に入ってきた、変な人がいて」
佐「それって...」
勝「そう。まさしく俺が君に出会った時と同じシチュエーションで
謎の人物が表れた。
ただ、俺と違うところは 若くもなく、老けてもなく、男女どちらでもない。
それは、神様と呼ばれるオーラをまとった 全身真っ白の姿で
声は、中音くらいの高くも低くもない真ん中あたり。
その人は、名は明かさず 俺に『時間が欲しいか?』と聞いてきた。
俺が、二つ返事で はい。と答えると その人は消えた。
一瞬 我に返り やっぱりあれは夢だと思った。
隣で寝ていた母さんの寝息も聞こえるし、時計だって正常に動いていた。
俺は働き過ぎたんだと思っていた。 けど... 次の日から時間の動きが変わったんだ。」
わたしの時と同じ出会い方で、質問も同じ。
けど、唯一違う点は、神様だったかもしれないこと
おそらく、わたしの、想像だけど
母親のために必死な勝八を見て、時間を操る能力を与えた...って事?
勝「次の日から、俺が時間があればって考えると
急に止まったんだ。あのときと同じように周りのすべてが止まって
俺は自由に歩き回ってみた。
普段入れないような場所へ行ってみたり、偉い人のそばでふざけてみたり笑
満足したらさ、なんかすっきりして 重荷が消えたような、そんな感覚になって
家に帰ったら、時間が動き出した。 まだ、仕組みとかわかってなかったけど
久し振りに楽しかった」
佐「神様がくれた、自由って事?」
勝「さぁ...笑 その人はしばらく現れなかった。
ただ、ひとつの手紙を置いて行った。
『時間を操る能力は、人生に置いて あってはならないものだ。
本来、人は生まれてから死ぬまで、不幸も幸もそれぞれを背負って生きていく
もちろん、時間の流れにそって寿命を終える。そしてまた生まれる
お前は、その力で誰かを救い いつか自分の身を預けられる人が現れたとき
能力は徐々に失っていくだろう。
そのときは、お前の人生に大きな変化が訪れる 大切にしなさい』ってさ...
だからかな...最近、操る時間が短くなってる気がして 」
佐「それって、わたしの時間も止められないって事よね...」
勝「多分...そうなるかもね。まだわかんないけど」
わたしの時間が止められない
普通の時間が流れて、いつも生活になるだけ
佐「いいよ 勝八と一緒なら怖くない!
時間、止められなくたっていい!!止まんなくてもいい...」
勝「うん...(涙)俺も、もういい。
るいと一緒に居たい... 能力が消えたっていい」
はじめて勝八の本音を受け止めた。
二人して涙を流しながら、抱き締めあって、もう大丈夫!なんだって
一緒なら、どんな困難も乗り越えられる。
カチッカチッカチッカチッ カチッカチッカチッカチッ
(時計の針の音)
ガチャン!!
(時計が止まる音)
アラーム音
佐「ん...朝? あ!バイト!!...って今日休み...」
勝「ぅん?......おはよ るい(´・_-)z」
佐「おはよ 勝八(´д⊂)‥」
わたしたちは、同じ屋根のしたで
一緒に住む事になりました。
わたしの家に勝八が住むという形ですが、
同棲をはじめ、友人にも報告。
さっそく、おめでとうと連絡をもらい
勝八と一緒にいられる時間が幸せで
今、一番 嬉しい瞬間。
勝「え?俳優のdさんって結婚してたの?」
佐「ね...知らなかった。」
テレビを見ながら、朝御飯を食べて
休みだからこそ、一緒に出掛けた。
行き先は、駅の近くに見える海。
潮風が少ししょっぱくて、はしゃぐわたしを
走ると転ぶよって笑ってる勝八の顔が
どこか吹っ切れたような そんな気がした。
勝「ねぇ、海の塩って なんでしょっぱいか知ってる?」
佐「えぇ、なんで?(^-^)なんで?」
勝「海に住む妖怪が、人間を食べるために
塩を入れて味付けしてるって~!!」
佐「絶対嘘じゃん!!」
勝「妖怪 塩シェフじいさん」
佐「なにそれ笑 っていうか
塩シェフじいさんってなに?
じいさんなの?」
勝「俺の、想像!」
佐「ほら~やっぱり嘘じゃん!
で、ほんとは?ほんとは?
ねぇ~教えてよ~」
この幸せな時間がいつまでも
続けばいいのに。
時間が止まって、二人だけの秘密を
味わたら...独り占めできたらいいのに。
でも、それも大切な思い出だ。
止まって欲しくない
わたしたちの幸せを、流れる時間に身を任せて
明日も、どこかで笑っている。
きっと...
※これらの登場人物やストーリーはフィクションです。