わたしが泣いたら時間は止まる...らしい
わたし、佐々城涙が現在働く、バイト先のコーヒーショップカフェ
二日続けてご来店されたお客様がいて、若い、顔立ちが整ったスタイルの良い男性
なぜか...わたしは気になっていた。
恋 という訳でもなくて、どこかで会ったような...見たことあるような顔。
つまり、誰かに似ていて、それが誰なのかわからず。
結局は、わたしの勘違いかもしれません。
今日は、シフトはお休みの祝日。
録りためていたドラマを見ながら、お菓子を食べる。
グスン)泣く声
佐「やばい...(涙)何回見ても感動する。ここまでよく頑張ってるよ!
もう、つらい思いしてほしくない~」
カチッカチッ)時計の音
カチッ!)
止まる
ピーンポーン)チャイムの音
佐「!え?今、涙が...やばい吹かないとバレる!回覧板かな?
はーい!」
開けると、そこには 謎男が立っていて「やっほー!」と言ってきたので、
すぐさまドアを閉める。
謎男「えーー!ちょっと、ちゃんとチャイム鳴らしたのに~閉めるってひどくない?」
ドアの向こうから、話してくる。
正直家にいれたくは無いが...ご近所に迷惑がかかる...だって...
大きな声で話してくるんだもん!
仕方ないので、入れることに
謎男「どうも~! もう、この前はちゃんとチャイム鳴らすからって言ってたのに...閉め出す事無くない? まあ、毎度毎度 君が泣くからさ...俺も来るの大変なんだよ?」
佐「 だったら 来なければいいじゃないですか。」
謎男「 そうもいかないんだよ..、決まりだからさ。」
佐「 何の決まりですか...。」
ごちゃごちゃと会話しながら、お茶を出す。
謎男「いや~ね、君にも話しておこうと思ってさぁ...
君が泣くたびに、俺が来るのって 俺的には別にいいんだけど
君は、よくわかってないんでしょ?」
そう言われると、毎日来る訳じゃない...
それに、わたしがテレビを見てるときとかに限って この人は来る。
謎男「とりあえず、涙吹いて。」
ハンカチを渡されて、優しさは素直に受けとる事にした。
佐「どうも。ちゃんと洗って返すので...」
謎男「おかまいなく~。お茶いただきます」
いつもへらへらと現れては、土足で入ってきたのに
言った事は守るし、丁寧だし 口調は優しいけどたまにからかってくる...
悪い人じゃないのかな?
佐「あの...さっき言ってた 決まりとか、泣くたびにあなたが来るって
どういう意味なのか、わからないんで説明してもらえますか?」
謎男「あっ!いいんだけど、まさか君の方から聞いてくるとは
てっきり、[からかってるんですか?]とか言うのかと思ったから」
佐「だって、ちゃんと有言実行しましたし...優し...
悪い人じゃないってわかったので」
謎男「そりゃあ、どうも(^-^)」
彼は、お茶を一杯ごくりと飲んで一息漏らすと
じゃあ、説明していい?って さっきまでのやわらかな表情が消えて
真面目な低いトーンで説明してきた。
謎男「まず、君が泣くと時間が止まるのは 気づいてる?」
佐「いえ... 最近、たまにですけど 時間が止まる?というか
壊れたはずの時計が動き出すことがあって...なんでかなぁ
とは思ってたんですけど...」
謎男「なるほど...きっかけとかもわからなそうだね。
ちなみに、今も動いてるけど 気づいた?」
そう言われて、時計を見ると
動いていた。現在時刻を示している上に、正確に針は動いている。
普通の時計みたいに...だってこの時計は壊れてるんだもの。
佐「じゃあ、この時計と、時間が止まるのは関係あるんですか?」
謎男「うーん...時計はなんでもいいんだよ。これだからって訳じゃない
ただ、泣くと止まる、俺が君に会いに来る。これは関係ある」
ますますわからなくなってきた...とりあえず、メモを取りながら話を聞く。
まるでインタビューみたいだ...
佐「その、なんでわざわざわたしに会いに来るんですか?」
謎男「話聞いてた?w だから、君が泣いたら時間が止まって
俺は、泣いてる君に会いに来る。
そうだな...泣いてる人なら誰でもいい訳じゃない。
君さ、なんかつらいこと抱えてない? たとえば、上司にパワハラ受けたとか
いじめ受けたとか。色々あるけど。」
この人はどこまで知ってるのか、顔色が変わったわたしをみて
フッと笑い、知ってるんだよ。って言わんばかりの顔でわたしを見る。
謎男「社会の中で生きてるとさ、普通に生きるよりも縛られるものがどうしても出てくる。それは、人かもしれないし 言葉かもしれない あるいは、時間。
余裕をなくして、隙間がなくなると呑み込まれるんだよ。闇に」
佐「(すべてを理解するのは、簡単じゃない。けれど、この人の言ってることは
なんとなくだけどわかる。元々縛りなんかないはずなのに、勝手に追い詰めて苦しめたのは自分。それ以外の例もあるけど、わたしは自分なのかも...)」
謎男「で、話戻すけど 君が、何かに感情移入したり、何かの拍子に涙が流れる状況があったり、精神的につらくて泣いたり。それぞれの理由でも涙は涙。
君が泣けば時間は止まる。能力を授けたのは俺であり、俺は君に興味を持った
社会を変えるために、少しでも、現実を忘れさせるために」
佐「(涙) (わからない...止まらない。なんで泣いてるのわたし...
この人の言ってることがどこか、自分の気持ちを聞いてるようで
わかってくれてるようで うまく言い表せない感情が追い付かない言葉に
ただ、流されていく)」
謎男「ほんとに、君は泣き虫だね(´・ω・`)」
彼は、そういいながら涙を拭い
優しく抱き締めてきた。
身を預けるように、彼のぬくもりに包まれて
なんだか...安心した。
落ち着いた頃、彼はもうひとつ説明してくれた。
謎男「ちなみに、もう一度泣いても 時間は動かないからね!
俺が操ってるから、動かすのは俺だから。
まあ、まだ君はコントロールできてないからね~
泣いちゃうもんな~」
佐「それ、バカにしてます?(*`ω´*)」
謎男「してない!してない!
ほんとだって! あっ、そうだ...教えようか?名前」
佐「え?...なんで..、今まで頑なに教えてくれなかったのに」
謎男「いいよ。俺も、不審者扱いされるの嫌だからさ~」
いや、それは間違ってないんじゃ。って思った
ここに来て、ようやく彼は自分の名前を教えてくれた。
「俺の名前は...勝八、普通に、かつ に はちって書いて勝八。
んじゃ、また来る。次も、ちゃんとチャイム鳴らすから!
破ったら、何か奢る!約束! じゃあ、」
佐「うん。また... 勝八...かぁ。
またって...(´・∀・`)
あ!!!思い出した!誰に似てるか...
えっ、勝八って...」
眠ったら忘れてしまいそうな温かな時間が、心地よかった。
こんなにも笑って泣いた日は久し振りだった。
気づかなければ、わからない。
わたしが彼を気になった日だって...
※これらの登場する人物や、ストーリーはすべてフィクションです。