エキストラオーディション
わたしは前職、会社員だった。
でも、自分はあの場所で...違うと感じた
わたし自身おかしくなるって思った。だから退職した。
今は、解放されたかのように 少しだけ時間に余裕ができた気がして、
貯金もある現状、焦らず 次の仕事を探すつもりです。
この事を家族に話すのは、まだちょっと落ち着いてから伝えようと思います。
今日、気分転換に部屋の掃除 整頓。
余裕がなかったからか、掃除もろくにしてなかったせいで
ホコリ、ぐしゃぐしゃになってる紙たち...
ゴミを捨てて、掃除機をかけて 空気の入れ換えも忘れず
すっかり綺麗になって、空気も澄んでる。
いつぶりだろうか、たぶん...引っ越してきたばかりの頃みたいな
そんな感覚。
スマホを見ると時間はまだ、お昼。
いつもなら、片付かないで その辺に散らかして
時間はもうない!って状態だったのに、縛るものがないってこんなにも
自由で解放的なんだ。
そこへ、友人からの電話が。
佐「もしもし?らい?」
保十松 麗 中学の時から仲の良い友人。
彼女は、わたしの良き理解者で つらいことがあったらすぐに駆けつけてくれて
話も、気が済むまで聞いてくれる。こんなめんどくさいわたしを受け入れてくれる優しい友達。
保「やっほー!元気?大丈夫?仕事場でパワハラにあったって聞いたけど。
連絡くれたときはびっくりしたよ... 最低な人間もいるもんだねー」
佐「ごめんね。らいだって忙しいのに...」
保「全然!るいのためならいつだって力になるよ!」
麗は、保育士の仕事をしていて、子供たちのお世話をしている。
だからか...わたしが注意されたときに叱り方とか、褒めるとき 優しい口調で語りかけてくる。職業柄そうだから 自然と対応もそうなるのか。
それはおいといて、今日なぜ らいから連絡があったかというと、
前職を後に、仕事を探している事を伝え、力になってあげる!と
わたしに合いそうな仕事をおすすめしてくれる。
保「やっぱり、るいの 人のために動ける所とか、一生懸命にまっすぐ取り組む所とか、事務系が合いそうな気がするんだけど、どう?時給もまあまあ高いし、
バイトとかパートだと時給変わってくるし、シフトも自由に決められるみたいだし。住所も調べたけど、ちゃんと本社もあるし、詐欺とかではなさそうだよ」
佐「ありがとう。うーん。検討してみるね
すぐにはまだ...」
保「わかった!考えてみて!あっ、こないだ見つけた新作のイチゴパフェのお店
新しくオープンしたらしいからさ、今度一緒に行こう!甘いものでリフレッシュ!」
佐「ほんとー!うん、今度行こうね!ありがとう!」
本当にいい友人だ。
とりあえず、仕事を検討した上で やっぱり違うってなると申し訳ないし...
ゆっくり考えてみよう。
夜、家で お菓子をつまみながらドラマを観ていた。
新人刑事と一般事務勤めの主婦。 二人が密かに抱く恋心、
出逢いのきっかけは、巻き込まれた事件の被害者と刑事。
最初は、被害者とそれを調査する警察という ごく希な出来事に対して
関係は普通。
恋の気配など一ミリも感じられないはじまり。と出逢い...
現在ep5まできて、新人刑事の方は 段々と捜査もできるようになり、先輩刑事の捜査を見学。なにもするな。から成長...
一般事務の主婦は、若くして主婦になって、というのも幼いときに火災で家族を失い。施設育ちで、お金もなかった。
火災事件は放火だった...その時担当していたのが新人刑事の父親。
佐「(ぐすん)やばい...涙腺がやばい...。
苦労してるのに、人を助ける心。ご近所さんも優しい~」
カチッカチッ)
カチッ!!(時計が止まる)
佐「あれ?...止まった。ドラマ...いいところなのに」
ガチャン) 玄関の開く音
また、玄関から誰か入ってきた。
謎男「よ!何?また泣いてんの? 泣き虫だね 君」
るいの頭をポンポンと撫でながら優しい口調で語りかけてきた。
佐「ちょ、ちょっと!何また勝手に入ってきて!しかも触らないでよ」
謎男「冷たいな~ また君が泣いてるから来たのに」
何故か時間が止まった上に、また勝手に入ってきたこの...謎男
しかも、土足で... しかも!頭をポンポン?...?
佐「あの!いい加減教えてくれませんか?名前も、この時間が止まる仕組みも!
というか...なんで時間止まるの...」
謎「え?わからない? うーん。そっか わからないかぁ~」
からかうように、「わからないんだ~」とまるで、時間が止まる事を知ってるみたいで、なんだかムカついてきた。名前も知らない 土足で踏み居る謎男に...
佐「なんなの?」
謎「よし!わかった。エキストラオーディションしよう!」
佐「はっ?」
謎「君が、本当に泣き虫じゃないか。最初はエキストラとして
オーディションしてあげるから」
この男は何を言っているのか。
佐「エキストラ?オーディション?なにそれ...何言ってるの?」
謎「難しくないよ!俺が、君を見極める。
まあ、はじめてだから、エキストラとして喜怒哀楽をコントロールできてるか
見てあげる。」
佐「ちょ!ちょ、ちょっと待って!!それって...なにかのスカウト?
それともからかってる?」
そうだ、どういうつもりでわたしの前に現れて
勝手に家に上がり込んで、さっきから訳のわからないことを言われて...
わたし騙されてる...?訳じゃないよね?
でも、時間止まったとか説明しようがないし...
謎「まさか、からかわないよ。俺は君に興味を持ったから会いに来たんだよ?
そうだな...簡単に説明すると、まず、感情。ドラマでいう演技力とかかな?
君が、ちゃんと切り替えられるか、コントロールできてるか 俺が判断する。
ちなみに、君がさっき言ったスカウトもあながち間違いじゃない。
あぁ...勘違いしないで欲しいのが、これはドラマじゃない!遊びでもない!
希なケースであり、
現実と時空の狭間を巻き込んだファンタジーだ!」
急に空気が変わった。
何かが起こりそうな、少し怖い気持ち。
その先を知ってしまったら わたしは...
謎「はい!じゃあ、説明終わりね!
今日は...もう遅いから、また今度!
俺もいかないと怒られちゃうから、次、泣いたときに来るから!バイバイ~!」
それだけ言い残して、玄関から帰って行った。
カチッカチッ)時計が動く音
また、時間が動き出した。
....あの人は誰なのか?
時間が止まる...現実と時空の狭間...
一体なんなの?
※これらに登場する人物や、ストーリーはすべてフィクションです。