第2章「アカネ」 君は弱虫なんかじゃない!2
どれくらい時間が経っただろうか
完全に形勢逆転
一方的に殴られ続ける
身体の感覚もなくなりつつある
薄れゆく意識の中、小金は昔を思い出してた
(ああ…この圧倒的で…手も足も出ないで
一方的に攻められて…
どうしようもなく悔しくて…
でも何処か懐かしい感覚……
そうだ…先生か
……あぁ…先生…元気にしてるかな…?
教えて下さい…俺は…どうしたら…)
「いいかいコガネ…どんな生物も生きてる以上は
呼吸をしてるんだよ。
吸っては吐いて。長さはバラバラだし変則的に
呼吸をする奴も居るけど
必ず息継ぎをするんだよ。そこが狙い目さ」
「じゃあ、呼吸をしない奴が現れたらどうすんのさ」
「ハハハッ!その時は逃げな!
ばか正直に付き合わなくていいのさ。
そんな奴は生物じゃない。私達じゃ敵わないナニかだよ」
(そういえば、こんな会話したなぁ…
ああ、先生…ありがとう。試してみるよ)
俺は薄れた意識をなんとか戻す
とにかく今は防御に徹する
動きが見えない以上、下手に動こうとはしない。
(俺は…まだ生きている!
この作戦がダメなら…いや、勝機を掴むさ!)
彼女の猛攻は止まらない
だけど俺もまだ倒れていない
今はじっと
攻撃を受けてる箇所を把握して
流れを読む。1つずつ。
そして彼女の呼吸をする音を聞き取るんだ
集中するんだ…見えないなら見なくていい
目を閉じる、身体中の神経を研ぎ澄ませ
耳で感じとるんだ。
そしてついに、その時はやってきた
見えない彼女から聞こえた小さく
本当に僅かな息継ぎの音
…カハァ!
「今だあ!先生感謝するぜ!そして貴方の技借りるぜ!」
彼女の場所は正面、地上から役80!
距離、役100!俺の距離だ!
「飛燕!剛炎拳!!」
全身から赤く輝く闘気を解放
それは本来なら一部にしか見えないオーラ
ここの観客席にいる奴らにもハッキリと見える程に
強く発する
身体を捻らせ回転させ突進する
全身全霊の拳を彼女の腹に命中させる
捉えた腹と背中から赤い炎が噴き出す
「ガハァッ!」
彼女は真っ直ぐに吹き飛び壁にめり込む
「はぁ…はぁ!…も、もう起き上がるなよ…!
こ、これがダメなら…俺は…もう…!」
しかし、彼女は動いた
素早さはすっかりなくなったが
一歩ずつ、一歩ずつ小金に近づいてくる
「く…くそ…も、もうダメだ…」
小金はバタりと床にうつ伏せに倒れる
(ち…ちくしょう…もう、動けない…!
こ、殺される…!確実に…!)
少しずつ近づいてくる彼女
同時に恐怖も近づいてきてる
そして小金の所にたどり着く
倒れてる小金の首を鷲掴みにして
70kgはある彼を片手で持ち上げて
確実に仕留めてくる
「!!…ッ…!…ァッ!」
振りきれない…!なんという力…!
悲鳴を上げる事も許されない…!
「そこまでです」
声と同時に2人の男が現れ、2人を引き離す
暴れる彼女を一発で沈め、
会場から連れ出した。
「勝負は決まりました。
ここは闘技場です。戦場ではありません
よって、あなたを戦闘不能とみなし
試合を終了させていただきます」
男の言葉は小金には聞こえていなかった
「ふむ…負け続きですねマスター。
そんなマスターに質問がきてますよ」
Q.小金君は結局強いの?弱いの?
「う…それは俺が答えなきゃダメなの…?」
「それでは私がお答えしましょう」
A.弱くはないです。
並みの人間、魔法使いを除けば対人戦なら
成人男性20人を同時に相手にしても負けません
彼が負け続きなのは相手が同等か格上だけを
相手にしているからです