山奥の恐怖体験
今までは会社の友人の話でしたが、これは私が体験した中で一番気味の悪い話です。
それは、晩秋のある日の事で、なんとも言えない怖い体験をしました。
これまでに何度も訪れている廃村の奥にナビでは2つほど地名が載っていた。
普段はナビの縮尺を小さくしているので今まで気が付かなかったこの地名、知ってしまえば行ってみたくなる。
1つ目はここから凡そ3~5キロと近く、道も1本で簡単に行けるような気がした。
簡単に行けるといっても、そこは廃村の事で現に今居る道も地道に草が茂りわだちができている程度の道で、良いのは道の凹凸が無いだけ。
奥に向かって進んでいくと最初は行く道さえ見当が付かなかったもう1つの地名がナビに現れてきた。
それと、比較的簡単に行けると判断した方の地名が次第に車の進む方から微妙にずれていき、今では車の進行方向とは全く逆になってしまった。
どうも最初に簡単に行けると判断した地名は、進行方向の左側ひと山越えたあたりにあるように思えた。
そこで、目的地を変更してもう1つの地名を目指す事にした。
まぁ、行けりゃどっちでもいいのだけど。
そろそろ目指す廃村に近くなった、と感じる辺りで急カーブを回るとそれまでの開放的な景色から一変し桧木立が続く薄暗い道になった。
その分車のバンパー近くまであった雑草がなくなり移動はしやすくなったのだが、かすかに私1人で来るには時が遅すぎる感じがなんとなくしてきた。
それでも、せっかく来たのだからと、薄暗い中「遅すぎると」感じる気持ちを奮い立たせ奥に向かって進んでいく。
途中桧木立が開けたところに住宅の跡と2つの土蔵が見えた。
ここは、帰りに撮影する事にしてとにかく今は奥を目指すことにした。
実は、引き返したくても道が狭いので簡単には車の方向が変えられないのが痛いところだった。
そこから先は、道の片側は立派な石崖が延々と続き、もう一方はというと、4~6メートル下に見事な棚田の跡地に手入れをされた樹齢30~40年といった檜が生えている。
途中よく気をつけてみると石崖のの間の道とその奥の椿などの庭木で、ここが住宅跡と確認できるところがいくつかあった。
小さい谷川を渡ったところで石崖と棚田跡が突然終わり山道に変わって、車では奥に進む事ができなくなりこの先が気になる私はどうにか方向を変えることが出来る平地に車を置いて歩いて奥に進んでみた。
奥に進むと山道が工事中の道に変わり、重機で山肌が削られていた。
何処から重機を運び入れたのか?
不思議だ。
そもそも、何の目的で道をつけているのか?
帰り道に途中で気になった住宅跡と思われる場所を撮影するつもりで、土蔵が2つ残る場所まで帰ってきた。
道から遠い方の土蔵は、途中からロープが張ってあり関係者以外は立ち入り禁止といった状態になっていた。
「最近は盗難も多いと聞くからか?」と、納得して時間も既に3時を大きく過ぎていて、この時間からの日暮れは早くなるので、杉木立の中にある土蔵を中心に撮影して帰ることにした。
土蔵に近くには住宅跡もあり、当時の洗濯機やかまど跡も見ることが出来た。
さぁ、次は土蔵の方だ。
初めに土蔵の正面を撮影し横に回ってみると、錆びたプロパンガスのボンベが2つも有り、それに配管が蔵の中へ伸びていた。
これは、つい最近まで誰かが住んでいたような形跡です。
「まぁ、土蔵は比較的頑丈なので期間限定で住む事はできるだろう」とその時は安易考えていた。
それでもここは、これまで見慣れた土蔵とは何処かが変、何かが違うのです。
暗くなりかけた中をまた正面に戻って土蔵の入り口を中心にした写真に撮った。
そこには年代物の掃除機と茶色く錆びた中華鍋が放置してあるその奥、丁度土蔵の入り口には石油ストーブと敷いた布団が見える。
この布団は盛り上がっていて、まるでついさっきまでまで誰かが寝ていて、それが起き出たような感じがした。
ここは、場所が場所だけにかすかに感じた嫌な予感が大きくなって、「直ぐにこの場を立ち去れ!」もう1人の私が警告する。
でも、その奥が妙に気になってカメラと三脚はその場に置いて、私は土蔵の入り口まで行って中を覗いた。
入り口に立っていた時間は長くても3分少々だったが、暗い奥の方にはには確かにはだか電球と調理道具1式があるのを見ることが出来た。
問題は、調理道具を置いた直ぐ下にもう1組布団が敷いてあり、これも、布団の中央が膨らんだ誰かが起き出た跡の様に思えるのだが、こっちは手前の布団とは違い赤色の柄をした掛け布団がシミで黒く変色しているところが見えること。
良い様に考えると、初めはこの土蔵も結構古いので雨漏りで布団にシミが付いたのだと思っていた。
何気なく足元を見ると、そこにはこの地方の総合病院の薬の袋が2つ落ちていた。
それと、大量の注射針が散乱している。これは注射器が正しいのか?
これが、何の病気に効く注射なのかわたしは知らないが、よく観察してみると使用済みで中身が空なのがある中に未使用のも少なからずある。
これらから判断すると、奥の布団には病人が寝ていて注射が間に合わずに死んでしまった。
で、敷布団の黒いシミは、死んだ人の体液の影響なのか?
と、考えると薄暗い杉木立の中が急に不気味に感じ、後は早くこの場を離れる事にした。
誰か後を付けて来やしないかと、車に戻る時も何度も振り返って見たし、運転しながらも何度もバックミラーやルームミラーで確認した。
国道に出るまでこの事は地元の駐在所に届けようか、と悩んだ末に届ける事にした。
警察の方も今から行くにはさすがに怖いのか、多分暗くなるからだろう。
明日に本署の人と行ってみると言われた。
評価よろしくお願いします。