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第5作品目:たまごの管理人と別荘の番

 私はたまごの管理人である。依頼人の大富豪の御嬢に、雪山にある別荘の管理を頼まれた所だ。


 どうやらたちの悪い窃盗団が別荘を荒らしに来るようで、私に仕事が回って来たようだ。




 企画投稿時はヒューマンドラマ〔文芸〕作品でした。


・作品についての思いやお話しなどは後書きに掲載します。


 雪山に積もり始める雪が細やかになり始める頃私は依頼を受けて、雪山の中にある別荘へとやって来た。


 ────暖炉に火を起こし、ロッキンチェアに揺られながら、(くゆ)らす煙草の味は格別だ。


 なに、それではたまごだけに、燻製になるんじゃないかって?


 ハッハッハッ、心配症だな君達は。私の肌はそんなにやわではないのだよ。たまごだけにタマゴ肌なのさ。何より時代は半熟ではなく固茹でたまごなのさ。


 ────フワぁ〜……、それにしても眠い。冬場の暖炉の暖かさと来たらふわふわのオムレツのような柔らかな温かさじゃないか。


 年季の入った暖炉のなせる業でもあるだろうな。


 ……たまごの管理人をしている私は、退屈に押しつぶされそうになりながら欠伸をする。


 固いとは言ったがそこはたまごだからね、丁重に頼むよ退屈君。



 私へ依頼を出した御嬢は大金持ちで、別荘の番をするように頼んで来た。どうやらタチの悪い連中が留守の別荘に入り込み、金目の物を根こそぎ奪って行くらしい。


 盗られても痛くはないが、ムカつくから調べて捕まえて欲しいそうだ。


 この別荘には自家用温泉もあるし、食料もたっぷりある。この暖炉に使う薪だって、ひと冬過ごせるだけ薪置場に積まれていた。


 セキュリティも万全だ。停電対策に温泉の地熱を利用した発電と、ソーラー発電が組み込まれていて、防犯センサーが侵入者を捉える。


 他にも色々あるのだが、それは秘密だ。手の内を全てさらけ出すわけにいかないからな。


 何より辺り一面の雪景色。雪山の別荘に窃盗団がやって来ようと、足跡を消すのが難しい。


 吹雪の中で犯行に及ぶとも考えられるが……冬の雪山、舐めてかかれば生命という対価が必要になる。


 ────つまりだ。この依頼は日頃何かと忙しい私へ「ゆっくりしたまえ」と言う、御嬢からのご褒美なのだよ。


 それにしても山賊共の現れる気配が全くない。盗っ人は金のたまごに目がないはずなのだが。


 まあ、ここは雲の上ではなく雪山で大男もめんどりもいない御嬢の別荘。現代では強盗は罪、殺人は重罪だ。


 その前に返り討ちにしてやるつもりだが、恐れを成したのだろうな。


 ────たまごの管理人として、私が何事もなくひと冬過ごした事により、以前の管理人の犯行が確定したようだ。


 どんなセキュリティも、管理次第で突破されるというのが証明されたようだ。管理人ならカメラの死角、抜け道も知っているからな。


 ────私ものんびり寛いで遊んでいたわけではなかったとわかった事だろう。


 

 ジャックと豆の木も、そのまま読めばただの強盗殺人と、犯人家族のサイコパスな幸せを見せつけられて終わる。


 だが変に修正し理屈に合わない蛇足を加えるよりも、時代背景を踏まえた幸せの得方への皮肉や警鐘と言う考察の方が私は好きだ。



 ────ああ待て、蛇足などと抜かすのは良くなかった。私にとって、たまごを丸呑みにする蛇はタブーなのだよ。

 お読みいただきありがとうございます。 

 

・作中に少し登場したジャックと豆の木についての考察は色々あります。私がしっくり来たのは童話の誕生した当時の時代背景を鑑みたものでした。


 加筆再掲載版なので、少し暖炉に関しての情景を増やしました。後で生まれる暖炉の魔人の伏線ってやつですね。


 あと書いてて思ったのがどんなにセキュリティ上げても、警備員も警察も駆けつけられるかわからないな、と。


 感覚でしかなかったのですが、おかげで秘密にした部分はそうした考えと後の話しにうまく伏線的に繋がる仕掛けになりました。

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