表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/43

第4作品目:女子高生策士達による、文化祭リアルメイド喫茶の計

 俺はしがない公務員をしている。若くして結婚して、高校生の娘がいる。    

 今日のお楽しみは、何と言っても娘の通う高校の文化祭だ。娘のクラスはメイド喫茶をやるそうだ。


 これは是非とも参加したい。娘の友達に格好いいお父さんだね、そう言わせたいがために文化祭へ行こうと思ったのに拒否られたのだ。


 仕方ないので招待カードを持ち出し、俺はこっそり遊びに行く事にした。




 企画投稿時はヒューマンドラマ〔文芸〕作品でした。


・作品についての思いやお話しなどは後書きに掲載します。


 ────待ちに待った、ついにこの日がやって来た。


「ファ〜ハァハッハッ」


 すまない興奮のあまり笑いが止まらなくなった。


 ……俺はしがない公務員、三十八歳の既婚者だ。今日は娘の通う女子高の文化祭に招待され……てはいないが勝手にやって来た。


 娘はテレ期に入ってしまい、俺が遊びに行くのを嫌がった。後で写真だけ見せてくれる約束だったが、そんなもので俺が満足出来ると思うか?


 あれはひと月以上前だったか……

 



「キモいからお父さんは来なくていいよ」


 ────ずいぶん遅い反抗期だな、娘よ。そして心底嫌そうだ。ツンデレの棘が鋭利な刃物のようだ。


「照れ屋さんめ。若いお父さんは、あまりいないから自慢したいはずだ」


「その考え方がキモいの!」


 これが世代間ギャップか。まあ仕方ない。こっそり行くとしよう。


 幸い招待カードに、身分証があれば有効だ。カードは確保してある。ああ言いながら、わかる所にカードを置く娘心が愛おしいものだ。


 さて娘よ。文化祭で格好いいお父さんが友達に騒がれる様を、歯噛みして悔しがるがいい。



 ……まずは娘のクラスの催し物へ先に行く必要がある。勝手に学校までやって来たというのに、娘のクラスへ寄らないなどあり得ないからな。三日は口を利かなくなる案件だ。


 我が愛妻に良く似た娘に育ったものだ。まあメイド喫茶目当てなので、俺も強く言えないのが辛い。


 誤解がないように言っておくが、全ては愛娘の為なのだ。娘はお父さん若くて格好いいねとチヤホヤされ、俺はデレ照れる娘の珍しい姿を、メイド服というレアな姿で見られるわけだ。


 まさにWinWinの関係。


「────待ってろよ、愛しの娘よ」



 娘のクラスがやっているメイド喫茶までやって来た。当たり前だが学生が多い。さて娘よ、いま行くぞ。



「────パスワードが必要です」


「えっ?」


 娘のクラスは確かにメイド喫茶をやっていた。しかし、眼鏡っ娘に入り口で止められた。


「娘さんの承認コードの用紙がなければ入れないのです」


 マジか。そんな話しは聞いていないぞ。思い当たるのはあの激しいツンデレのデレ……



「勝手に来てもどうせ入れないけどね」


 あの時の娘のニマッとした微笑みはデレ笑いではなくて、これか。小悪魔のいたずら笑いかよ!


「一回千円で、イベントクエストに挑戦しますか?」


 メガネっ娘が俺の憤りなど無視して、淡々とお店の売りを紹介する。


 ゲーム料金が高い気はするが、入店に必要な物のヒントが貰えるそうだ。仕方ないので、料金を払う。


「では、小枝チョコ、碁笥(ごす)雨合羽(レインコート)、ビー玉、アサリの貝殻をお持ち下さい」


「はぁ?!」


 渡されたメモを見て、俺はかぐや姫かよ、と嘆く。


 よく見ると、眼鏡っ娘の背中の青い看板には『愛のチャリティーイベントクエスト付 メイド風喫茶 かぐや姫』と書かれていた。


 さらによく見ると、緑の文字で『募金協力していただいた方々にもれなくイベントクエストをプレゼント致します』 ────そう書かれていた。


「詐欺だ」


 俺は涙目で訴える。しかし眼鏡っ娘は動じない。


「違いますよ。ほら、後ろの入口は自由に入れますから」


 ────何ですと??


 雑な外装脇を通り、中へと入ると普通に文化祭らしいメイド喫茶だった。


 可愛らしいメイド服姿の娘が愛らしい笑顔で迎えてくれた。天使だ。来た甲斐はあったようだ。


「……お父さんなら引っかかると思ったよ」


 悪い娘だ。何も言い返せない。珈琲とシフォンケーキにクリームをつけて持って来てくれた娘が説明する。


 娘の奢りだそうだ。うぅ、抱きしめたいが、俺だって自制心はある。


「一応さ、クエストアイテムを集めると料金半額チケットが貰えるんだよ」


 ────女子高生達に手玉に取られてばかりで悔しいから、俺は文化祭の終了までに、クエストをこなしてやった。


 娘に呆れながら勝ち取ったチケットは二度と使われる機会はないが、大切にしまっておいた。

 お読みいただきありがとうございます。


 キモいウザい勘違いお父さんと娘の駆け引き。欲情ではなく愛情であることの証に、かぐや姫のエピソードも挟みました。


 かぐや姫のアイデアは、この後でかぐやん姫として別なキャラクターにも使われました。


 加筆再掲載版とはいえ、千文字が五千文字になるような加筆ではありません。サクッと読める量となると、一応プラス千文字くらいまでが良いかなと思って書き足しています。




・かぐや姫の幻の秘宝五品


 蓬莱の玉の枝、火鼠の皮衣、仏の御石の鉢、龍の首の珠、燕の子安貝。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ