第33作品目:婚約者ごっこから始まる婚約破棄宣言ゲーム 〜文化祭で浮かれていたのは誰なのか〜
隣のクラスに、僕は気になる女の子がいた。
文化祭の日、隣のクラスがメイド喫茶をやると聞いて、僕は勇気を出して入ってみた。
───接客をしてくれたのは、僕が好きな彼女だった。
偶然に浮かれて僕は盛大なやらかしを仕出かす事になるのだが……。
もうすぐバレンタインデー。今回は少し変わった、青春テイストの婚約破棄のお話しをお届けしようかとします。
企画投稿時は現実世界〔恋愛〕作品でした。
・作品についての思いやお話しなどは後書きに掲載します。
───彼女がスマホをいじり出す。これは噂の破局のサイン。
彼女との付き合いの始まりは、二ヶ月ほど前まで遡る。
文化祭の恥死事件。隣のクラスで行われていたメイド喫茶で、僕は盛大にやらかしたのだ。
「……あ、あの結婚してください!!」
彼女が注文を受けに来た時に、本音がだだ漏れどころか、声を上げて叫んでしまった。
シーンとする模擬店の教室。男子も女子もメイドに扮した店内で、僕は御主人様になってしまった。
やらかした僕に、彼女は一瞬目をパチクリさせただけだった。
「……ご注文承りました」
「えっ?」
運ばれて来たのは何の変哲もないコーヒーとシフォンケーキのセットが二つ。
「ちょうど休憩だったから一緒に食べよ」
この娘、強いなと思った。僕が一目惚れしたのは、黒髪ショートの儚げな文学眼鏡少女……ではなかったようだ。
クラスメイトの好奇な眼差しをものともしないクール美人。僕の告白をサラッと流して、メイド役に徹する姿に惚れた。お代も割り勘。
「将来を考えるのなら、同じお財布から出したようなものよ」
あれ? おバカな告白をした僕を助ける為に付き合ってくれたんじゃないのか。
優しく微笑む彼女に、僕はからかわれた────その時はそう思っていた。
僕達は文化祭の縁を機に、将来結婚を視野に付き合う事になった。
いずれ破綻の見えた婚約者遊び。どちらかが飽きるまで続く。
「────あなたとの婚約を破棄させていただきます」
どちらかが相手にそう告げた時点で終了だ。僕はリアル婚約破棄ゲームを、隣のクラスの隠れ美人としているだけで贅沢だと思った。
そろそろ限界かな……そう感じたのが、二人で映画をみた後だ。
喫茶店で、二人ともコーヒーを頼み、映画の余韻に浸る。
僕も彼女も言葉数は少ない。今日の映画のように、シリアスな恋愛を見た時はとくにそうだ。
彼女がスマホを取り出す。喫茶店の綺麗に磨かれたガラスに映る「放っといて」の文字。
────そこまで嫌われていたのか。
僕は二人で静かに過ごす、この時間も好きだったのになぁ……。
僕が始めた婚約破棄宣言ゲーム。たった二ヶ月でも、付き合って貰えて感謝すべきかもしれないな。
宣言するなら僕から……
「ねぇ、今度はアニメを見ようよ」
急に明るい声で彼女は言った。
「えっ、あっ、いいよ」
どうなってる?
僕を嫌いって?
「みてよ、友達からのこれ」
彼女は友達とのやり取りを僕に見せてくれた。
「また夫婦ゲーム?」
「放っといて」
「離婚されろ」
「酷い」
彼女は彼女で告白を真に受けて、僕との結婚を妄想していた。
……どうやらとっくに婚約は破棄されていたようだ。
お読みいただきありがとうございます。
なろラジ企画で投稿したメイド喫茶のお話しの派生作品となります。
ガラスに反射して映る文字が実際見えるには、使用者の姿勢がおかしな体勢になりそうですが、そこはスルーしていただくとありがたいです。




