第一章 ~『破滅への第一歩 ★レオパルド視点』~
『レオパルド視点』
数日後、レオパルドは頭を抱えていた。悩みの種はもちろんクラリスだ。
「クソッ、なぜ俺がこんな目に!」
私室の机に拳を叩きつけ、怒りを発散させようとするが、気が晴れるのは一瞬で、すぐに不安が頭を占める。
「あの女は怪物だ……」
人は強者に付き従う。土下座騒動の後、クラリスは学園で影響力を持つようになった。彼女に媚を売るため、情報提供する者も増えたと聞く。シャリアンテと一緒にいるだけで危険な状況になったのだ。
「失礼しますわ」
「シャリアンテ!」
目の下に隈を作ったシャリアンテが部屋に入ってくる。想定外の訪問だった。
「シャリアンテ、いま俺の屋敷を訪れるのはマズイ!」
どこにクラリスの目があるか分からないのだ。不用意に会うのは危険だった。
「大事な話がありますの」
その言葉を発する彼女に以前のような華はない。むしろ死者のような不気味さがある。本題よりも、むしろ彼女の体調が気がかりだった。
「なぁ、体調が悪いのではないか?」
「ふふ、悪いに決まっていますわ。あの女のせいで私の人生は滅茶苦茶ですもの」
「だから俺は忠告したんだ。あの女は危険だと」
「あそこまでとは聞いていませんでしたわ!」
張り上げた声には恐怖が混ざっている。改めてクラリスの脅威を実感し、レオパルドは固唾を飲んだ。
「あの女が私を土下座させたせいで、派閥の長の立場から追放されましたわ。今の私はカーストの底辺、廊下ですれ違う度に今まで歯牙にもかけなかった生徒にさえ笑われますのよ。耐えられるはずがありませんわ!」
「少しは落ち着け」
「いいえ、冷静になるのはまだ早いですわ。このまま放っておけば、いずれ私たちの関係が露呈するのも時間の問題。破滅はすぐそこですわ」
「それは俺も自覚している……」
あの怪物が本気で調査すれば、いずれ浮気の事実は明らかになる。そうなる前に手を打たなければならない。
「やられる前に手を打つしかありませんわね」
「あの怪物に勝てるのか?」
「ふふ、堕ちたといっても、私にはまだ仲間がたくさんいますの。彼らの力を借りて、あの女を破滅させてやりますわ」
学園での権威を失ったとはいえ、シャリアンテの美貌は健在だ。彼女のためならば、手足となって動く手駒は残っている。
復讐心に駆られた彼女は動きだす。それが自らの破滅に向かう第一歩になっていると、この時の彼女は気づいていないのだった。




