1/25
プロローグ ~『天寿をまっとうした主人公』~
短編版とはストーリーを変更して進める予定です。連載版も楽しんでいただければ嬉しいです
(私の人生もここまでですね……)
商人として王国を発展させてきたシンシアは、齢八十を超え、その長い人生を老衰で終えようとしていた。
壁一面が白で塗られ、薬品の匂いが漂う病室には、大勢の人が集まっている。王国を治める国王や大臣、帝国からは皇帝までもが足を運んでいた。
(商人としての務めを果たし、王国を発展させることができました。良き人生でした)
臨終を見送りに来た見舞客の顔ぶれに視線を巡らせ、家族の姿を探す。息子のルドルフは、凛々しい顔に涙を浮かべている。大人になって泣く彼を見るのは初めてだった。
(ルドルフはしっかりしているから、きっとすぐに立ち直るはずです……)
息子はシンシアの後を継いで、これからも商会を盛り立てていくだろう。
(唯一の心残りは……)
ここにはいない孫娘のクラリスの存在だ。優しい娘だが、最近、ふさぎ込むようになり、自室に引きこもるようになったという。力になりたかったが、身体が動かせないシンシアにできることは何もない。
(クラリスを任せましたよ)
ルドルフに目で訴えかけると、その視線に気づいたのか、彼は何度も首を縦に振る。安堵がシンシアの視界を白く染めていき、人生の終わりを迎えるのだった。




