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幻影道 第六巻   作者: Saki
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「不吉な戦争」その3

 外に出てその場に座り込み、耳栓をする。私はどうしてもグロいのが駄目でゆいゆいの行う“解体”を一切手伝えない。肉が裂ける音やぐちゃぐちゃと滴る音、大量の血飛沫や抉る音が脳裏に焼き付いて吐き気が止まらない。何度も見てきたのに私は駄目だった。


 私はその場に座り込むこと数十分、廃墟からゆいゆいが戻って来るのを見て駆け寄るとその手は何故か赤く染まっておらず服装も綺麗だ。


「ユカリちゃんが嫌がると思って最近水魔法のバリアを習得してみたんだけどこれなら汚れないしユカリちゃんも嫌じゃないでしょ?」


 何時ものように先読み的な発言だがなんとゆいゆいは私の為に水魔法の派生を加えて防御に転用できる魔法を習得していたらしい。


 どう考えてもゆいゆいには必要ないと思うのに何だか申し訳ない。


「う、うん、ありがとう…そう言えばその後は女の人何か喋った?」


 私の言葉にゆいゆいは溜息を吐いた、この様子だと口を割ることは出来なかったみたい。


「まぁ仕方無い、大方訊けたし収集はまちまちだからユカリちゃんに怪我をさせたのはやるせないけど撤収しようか」


 ゆいゆいはそう言って帰ろうとすると何故か途中で足を止めた。


「ゆいゆい?」


 私はゆいゆいの顔を見ようと回ろうとしたがまた歩き出しだ、一体何を考えてるのかは分からない、ゆいゆいはそんな人だ。


「ユカリちゃん、今回の復讐・・・気を付けた方が良いかもね」


 するとゆいゆいはいつもののんびりとテンション高めの話し声とは真逆の冷たくて低めの声で私に告げた。


「ほえ?」


 いきなりどうしたのかと呆けた声で言うとゆいゆいは何でも無いといつもの天真爛漫な笑顔を見せる。さっきの言葉、ゆいゆいは何かを察したのかな、単純にあの人が送ってきた刺客としか判断してはいけないのだろうか?私は大丈夫だと胸に伝えるも心の不安を拭えなかった。


☆★☆★ ユイ 凉涅家


 今回の復讐ターゲットは勿論炎の研究員幹部【イグニス】確か本名は・・・忘れた。


 奴は研究員というより戦闘員の印象が強い、現に苛つくが私の戦闘スタイルの大部分は奴の作法が主だ。私は奴に殺しの才能を学び私でしか出来ない動きを極限にまで引き上げた張本人であり大の戦闘狂だ。


 奴は狡猾で残虐性を秘め恐らく研究員最強の戦闘員だろう、アイツラの幹部は何処かしら凶悪な力を持っているが前回殺した奴等は“生きる触手”と“無限に再生する身体”だがイグニスは“凶悪な戦闘兵”だった気がする。


 私は何度もイグニスに戦闘を叩き込まれたが一度も勝てたことの無いぐらい猛者だ、どれだげ被害が出るのかは未知数でローグちゃんから聞かされた計画をアヤちゃんがまとめて資料を帰宅後に受け取り確認する。


 作戦は簡単にまとめるとこうだ。


・決行時間は変更して来週の土曜日にする。


・場所は炎星最北端にある火山付近にある山岳地帯の中枢に大きく建てられていて階層は三階だが一階ごとの広さは計り知れないが恐らく最上階にターゲットが居座っている。


・序盤はローグちゃんが研究所の裏から侵入、私も単独で上空から飛んで三階を奇襲する。以下のチームはそれぞれ一階、二階、三階に潜む敵を撃滅させる。


 一階:サナエちゃんがリーダー・カイトちゃん、アヤちゃん、アスカちゃん。

 二階:ユカリちゃんがリーダー・ノアちゃん、プレアちゃん、ユーゴちゃん。

 三階:私。

 情報を抜き取る役兼敵の殲滅、研究施設破壊担当がローグちゃんと中々ハードなスケジュールとなっている。


 その他の情報は目が痛くなるぐらいに敷き詰められた字を熟読したが正直イラストみたいなのが欲しいと嘆いてしまいそうだ、光星に行って持ち前の最先端技術で情報を依頼しようかしら。


 私は取り敢えず見終えると端の方に小さくローグちゃんの文字だろうと思える文字が刻まれていた。


【気を付けろ、今までとは何か違う。ユーゴから別の情報屋と交換して照らし合わせて見たがまるで俺達の洞察を知っているかのように兵器や研究員達が乗じて動いているらしい――― 】


 と読み終えると私は最後の一文だけ数秒だけ見ると私直視するのは止めて自室の机に叩きつけるように資料を置きその日は寝ることにした。


 俺達の身近に()()して漏洩させている奴が居る。

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