「Shadow attack」
姉さんが無事復帰して三日後、俺は仲間を喫茶店に集めて緊急会議を行うことにした。急な出来事に姉さんでさえざわついていたがその胸騒ぎはあたりだ。
何か一週間居なかったらしいが俺には関係無いな、姉さんの野望を叶える為に少しだが事を急ぐ。
「どうしたんだ急に集まれなんてよ?」
仕事終わりに集まったせいか多少疲れが出ているが俺には関係無いな。
「集まって早々悪いが来週の土曜に姉さんが負けた奴の所へ潰しに行くぞ」
俺が淡々と語ると雰囲気が一気に変わる、メリハリよくしたのは姉さんの教育のお陰だろう。
「その前にユウガの情報と照らし合わせる為に姉さん単独で闇星にいる情報屋とコンタクトを取ってもらう」
まさか姉さんが負けるとは思っていなかったが奴は熱が籠もると周りが見えなくなり暴走する癖がある、そこを疲れたと思ったら納得だ。どんなに戦闘経験が高く殺しのプロだろうが殺されるのは一瞬さ、奴等が何を考えているかは分からんが恐らく研究データから推測するに“姉さん”が欲しいのではなく姉さんの中身が欲しいと見た。だから殺して奪おうとする魂胆かもしれん、最悪姉さんが死んでもいいように身投げ覚悟で情報屋に行き帰って来れれば吉だ、あの場所の治安悪さはアリアンロッドお墨付きだからな。
だがそれには面倒臭い奴をどうにかしないといけない。
「ま、待ってよ何でゆいゆい単独なの?」
茶髪のボブカットにルビー色の瞳をしたサクラユカリだ、彼女は姉さんに対しての想いが強く過剰に反応しやすい。
「今回は特に思い入れがある奴なのだが問題なのは闇星に潜む情報屋の奴等が研究員側に肩入れしているという情報がある、そいつ等は一応面識があり恐らく俺等の情報も売っただろうからな」
「それを情報ついでに殺していけって訳ね?」
言葉を言い終える前に姉さんが核心を突いた。
「でもそれって危険なんじゃないの?」
だがそれと同時に不安を募らせるだろう、闇星に居る奴等なんざロクでも無い奴等の巣窟、それを突っつけば藪蛇ともなる。姉さんを全力で殺しに行くことも視野に入れて今回の計画を立てているのだからな。
「最悪死ぬかもな」
俺は単刀直入に告げると姉さんは嬉しそうだ、他は啞然とする中“死”に対して感情が欠落しているようだ。
「ふふ〜ん、殺されるね・・・すっごく楽しそうじゃない?」
「だろ?」
「お姉さんは裏では物凄い大金叩いて依頼してくる奴等もいるしもしかしたら良い情報も有るってことよね?」
「それは分からん、だが殺しといて価値はある」
二人で淡々と語るもサクラは姉さんの腕を掴んだ。
「あ、危ないよ!!せめて誰かを付けるとか」
「大丈夫、お姉さんはその道のプロよ?何百何千来ようが私の資金になってもらうからさ♪」
姉さんは追い剥ぎしてその身を売り飛ばすからな、人殺しというより狩りに近いだろうな。
「それでも駄目だよ!!」
だがそれでもサクラは危険だと言葉を放つとそれに同意するかのように他の奴等も口が開く。
「そうね、流石に一人だとあの場所は危険ね」
「何があるか分からなねぇしせめて付添い人が必要なんじゃねぇのか?」
「ユイお姉様がお強いのは承知です、ですが仮にイレギュラーの事があればいくらプロではあれど厳しい状況に晒されることもあると思います」
便乗する割には保守的だな、いつから俺等は安全第一の集団に成り下がったのだろうか。
「確かに一理は有る、だがしかし危険承知で飛び込むのはいつもの事だろ?安全性皆無で突っ込む事も必要だ」
問題なのは発言した所で返ってくる言葉は徹した守りなのだが。
「うーん、前のアタシなら突っ込んじゃうけどちょっとキャパオバじゃん?その時その時考えないとユイが強くても負けるよ?」
「ユイちゃんを買い被り過ぎるのは僕は反対だな、ユイちゃん自身一度熱くなると中々冷静に戻れない記録もあるみたいだしちょっと荷が重いけどユカリちゃんを付添い人にしたらどうかな?」
サクラか、確かに一番姉さんが力を発揮できる女かもな。こいつ自身雑魚に等しいがいざとなれば死を恐れず勇猛果敢に突き進むが基本的に負け試合になるのも事実か。
「なら試してみるか」
姉さんの補佐役兼付添い人として抜擢するとサクラは案の定おどおどしていた、だがアイツ等はサクラの背中を押すと少しだけ緊張が解れたようだ。
俺もつくづく面倒臭い奴等の輪に入ってしまったようだな。




