「何てことない日常」 その7
☆★☆★ ユカリ
仕事終わりに私はいつもの帰路へノアちゃんと二人で歩く、そこには変わらない景色と薄暗い世界が広がる。私達は特に会話することもなく真っ直ぐ家へと歩く、いつもの何てことない日常だけど私はそんな日でも退屈だとは思わなかった。
「ただいま〜」
時刻は九時、帰宅すると世界は闇に染まり騒がしい音が消え失せていく。そして門扉を通り扉を開けるとそこには楽しそうな話し声が聴こえた。
「それでさ、ユーゴ達にあげたゲーム機にその翌日にユーゴ特選のゲームに皆熱中しちゃって大変だったのよ〜?」
「あはは♪子ども皆で遊べるヤツだったのかな?」
「アイツ意外と気が利いてアスカがあんなに不思議そうにゲームに没頭するなんて思わなかったわ」
「ユーゴちゃんの情報力と地球ならではの娯楽に長けた所本当に尊敬出来るね!」
確か今日、ゆいゆいから買ってあげたマッサージチェアが一日持たずに壊され家の中が大惨事になったって聞いたけど家の中は至極綺麗だ、靴箱の横にある残骸を見て起きたことなんだろうけどサナエちゃんが手伝ったのかな?
「あらお帰りなさい♪」
歩く足音で私だと知っててお出迎えしてくれた。
勿論ノアちゃんにも触れようとしたが断られてしまった。
「話してたらもうこんな時間になってたわ・・・」
そして時計を見たサナエちゃんははっと立ち上がり急いで帰宅する準備をする。そう言えばシェアハウスってサナエちゃんいないとまともなご飯が作れないって言ってたっけ。
「今日泊まる?シェアハウスならお姉さんに・・・」
ゆいゆいの一声にサナエちゃんはすぐ断った。
「遠慮するわ、彼奴等の面倒見ないといつまでゲームしてるか分からないからね」
成程、多分ゆいゆいは甘やかしちゃうから全部一人でやろうとするもんね、そもそも軟禁してるから行かせるつもりもないし。
「えへへ〜サナエちゃんも立派なお姉さんね!」
「ふん、茶化さないで頂戴」
サナエちゃんはいつも通りのツンツン態度にゆいゆいは素直じゃないと笑った。
「それじゃあ帰るわ、アンタ達お疲れ様」
最後に通りすがりに労いの言葉と共に頭をポンポン撫でてくれてちょっと嬉しかった。やっぱりサナエちゃんは優しくて世話上手な気がする。
サナエちゃんが帰った後の食事は恐らく一緒に作ったであろう中華なメニューが沢山食卓に並べられていた。
「皆さん、ユイさんの事意外と気にかけてくれますよね」
食事の最中にノアちゃんはポツリと呟く。
「確かにね皆何やかんやでゆいゆいの事好きなんだよ」
的外れな言葉だとノアちゃんに突っ込まれたけどゆいゆいはとても嬉しそうだ。
「お姉さんがいつもより積極的だからかな?」
「いつも積極的では?」
「そんなことないもん、お姉さん子どもの事未だに育て方難しくて分からなかったし」
「ゆいゆいにも私達の悩みあったんだ!?」
「それは勿論ね流石に子ども全員面倒見るのは大変だと気付いた所よ?お姉さん、まだまだ青いからノートに書き記してるもん」
ゆいゆいの知られざる努力に驚いた、沢山勉強してもゆいゆいはまだ個人の評価は青い葉程度だという。
「勉強に終わりが無いように努力し続ける事が立派な大人に繋がるんだよ?」
「でもユイさん大人お嫌いですよね?」
ノアちゃんのぼそりと突っ込む言葉にゆいゆいは返す言葉が無かったみたい。ぐぬぬと声を漏らしながら炒飯をかきこむ姿に私は口角が上がった。
私は今沢山の幸せに溢れ返るこの空間が大好き、皆と集まって食べたり話したり喧嘩出来る日常が好き、でもまた戦場に行かないといけない。
ゆいゆいの復讐の為に命を削って生きるか死ぬかの瀬戸際を歩かないといけない、生きる為にまたこの日常を送る為に私達は全力で生きないといけないんだ。




