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幻影道 第六巻   作者: Saki
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「何てことない日常」 その2

 学校だから当選ユカリちゃんは家にいない、そしてノアちゃんも今日はお仕事だからいない、完全に暇となった私は記憶している仕事の日程を思い出しとある人物を招き入れた。


「こんにちは、ユイちゃん」


 それは家族一セクシー担当のアヤちゃん、歳はまだ未成年だけど大人びていて焦げ茶色の長髪に服装は胸を大きく開いた肩出しセーター、どう見ても下は履いていないようにしか見えないが真実はどうなんだろう?


「今日はどういったご要件で?」


 部屋に入るなり私に質問を呼び掛ける。


「要件というか暇だったから呼んだだけなんだ〜」


 私の率直な言葉にアヤちゃんは驚くもすぐに微笑んだ。


「そう言えば出歩き禁止だったわね」


「そー!だから構って欲しくてお呼びしたんだけど」


 そういうことならとアヤちゃんは持参したバッグから何かを取り出す。


「はいこれ、皆ユウガ君に写真の印刷頼んだのに姉弟揃って頼んでなかったから代わりに持ってきたわ」


 小さなアルバムらしき本の中から家族の思い出が刻まれた写真をいくつか差し出した。


「写真ね………」


 思い出を記憶させる撮影機、皆が楽しくワイワイしていた夏の思い出。あの日の出来事がフラッシュバッグする、色んな写真を見る度に口角が上がっていく、幸せな笑顔で見終えると私はそっとアヤちゃんに返した。


「あら、お気に召さなかった?」


 アヤちゃんの言葉に私は首を横に振った。


「ううん、最高に幸せだよ。でも……」


「でも?」


 聞き返すアヤちゃんに私は切ない気持ちを抱きながら笑顔を絶やさず続けてこう答えた。


「お姉さんには勿体かなって」

 

 私にこの思い出は墓まで持っていけない………私は死んでも魂になったりしない、クローンはヒトであって人じゃない。人殺しと実験の為に創られた人工物にこんな幸せは記憶出来ない、目の前の幸せしか私に残されていないのだから。


「そうかしら………ユイちゃんの事本質まで解からないけど持ってても損はしないと思うけど」


 少しショックだったのかなちょっとだけしょんぼりする、それでも私は首を縦に振ることは無かった。


「ううん、お姉さんには必要ないよ♪だってお姉さんは長く生きれる自信無いからね」


 物理的に死ぬかクローンの欠陥として死ぬかどっちが先かなんて分からないし人生塞翁が馬、どんな結末になるか最後まで誰も分からないのだから、私にそんな資格は無い。


「ならせめてこれだけは受け取って欲しいわ」


 それでもめげないアヤちゃんは一枚の写真を差し出す、そこには私とユカリちゃんの水着ツーショット、幸せそうな二人に私は思い出としてではなく手向けとして受け取った。もし死んだら遺影はこれにしようかな。


「ありがとう、そうだ他に家族の写真ある?」


 私は他の写真の提示を求めるとそれは嬉しそうにアヤちゃんは沢山の写真を見せてくれた、皆可愛くて私には勿体無いくらいに幸せな表情を見せてくれた。


 それでもきっと私はロクな死に方しないだろうなと思う、いつかその時が訪れるだろう。


 その時、ユカリちゃんはどんな反応を見せるんだろうな。

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