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幻影道 第六巻   作者: Saki
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「プロローグ」

 楽しかった夏は時間と共に過ぎ去りまたぼちぼち学校に羽目になる。夏休みの宿題は前の月に殆ど終わらせてあるから楽出来るかと思ったらユーゴ君は夏休み終わる直前で私に宿題を手伝ってくれと頼み込んできた。正直門前払いしてやろうと思ったけどユーゴ君は私の足にしがみつくまで助けを求められ断りきれず終わるまで一緒に手伝うことになった。


 何とか終えて翌日新学期が始まろうとする。


「んーーー」


 昨日はノアちゃんと夜遅くまで話していて少し夜更してしまった。カーテンは閉めっぱなしで朝の光が差し込んでこない、しかもその日は寄りにも寄って目覚まし時計をかけるのを忘れていた、これは遅刻かなと悟り中々起きられない時に不意に伸ばした手に柔らかい感触が当たる。


「ふふ♪」


 私はきっと幸せな夢でも見てたのかその感触が心地良くにぎにぎと心地よい感触に浸る。


 マシュマロのような揺らすとプリンみたいで美味しそう、何だか既視感を感じる。私は漸く瞼を開けるとそこには天使が微笑んでいた。淡い桜色をした綿飴のような繊細な髪に桃色に熱る可愛らしい顔立ちに私はそのまま意識を刈り取られそうになる。


「こ〜ら、そろそろ起きなさい♪」


 優しく頬をスリスリされると本当に消えてなくなってしまいそうだ。どうやらこの感触はゆいゆいの巨峰である胸のようだ。前より大きくなってる気がするけどまだ成長するもんなんだと驚いていた。


「ひゃ!!も〜エッチさんめ〜♪」


 このままでもいいかなと頷くとついに怒られてしまった、胸に抱かれて起こされるなんて幸せ過ぎるよ。


「後は夜にしようね♪」


 ご飯だよと先日お嫁さんとなった私の婚約相手は母性の塊でその見せてくれる天真爛漫な笑顔が大好きだ。


 私は制服に着替えて支度を済ませると私の部屋二階の扉向こうで待ってくれていたみたいで一緒に一階に降りると既にノアちゃんが髪をボサボサにしてダイニングにある食事スペースで椅子に腰を降ろしていた。


 黄緑の髪に片方に眼帯を付けたこれまた美少女と呼べる少女が私を待っていた。


「おはようございます」


 礼儀正しくちょっと腹黒の毒舌な所もあるけど普段は物静かな恋愛好きのピュアな女の子だ。


 私は寝ぼけた顔で挨拶を返すとゆいゆいは今日の朝ご飯を用意した。


「今日は和食よ♪ノアちゃんは野菜沢山の焼きサンドに野菜ジュースね、二人のデザートはレモン仕立てのヨーグルトだよ」


 ゆいゆいはこの家の家事全般だけでなく喫茶店の店長を務めているお姉さん、大人に対しては尊敬できない程冷たいけど子供には最高の愛を饗す人だ。


 私達はゆいゆいの仕事に感謝して元気に過ごさせてもらっている、たまに二人で買い出しに出掛けたり掃除は分担しているのにゆいゆいは全然仕事を振ろうとしない、ゆいゆい曰く【お姉さん任せて子どもはのびのび生きて欲しい】という欲求を振りかざしダメ人間にしようとするのが目的らしい、私が正直に断ると我儘言って拗ねてしまうのでそこら編は頑固な気がする。


 朝食を終えて名残惜しくも学校に行く時間だ、バッグを持ち玄関に移動するとゆいゆいはついてきた。そして振り返るとゆいゆいはまたいつものように身嗜みをチェックしてくる。


「髪は良し、ネクタイ良し・・・可愛くて良し」


 最後だけチェック項目に違和感を覚えたがとりあえず審査は通ったみたいでさてさて早く行こうとしたが何故かそのまま顔面を引き寄せられた。


「んっ………えへへ♪」


 引き寄せられると待っていたのは柔らかい唇だった、突然のキスに私達の関係を呼び起こしてしまう。


 私達はこの前、“婚約”を結んだ。


 私には運がないと思っていたがまさかのハプニングから始まった恋愛、人としての禁忌を破ってしまったかのような罪悪感にその後もどうも恥ずかしくてゆいゆいの顔を見るのが苦手だった。


 だが一週間が立てばそれは次第に減っていきいつもの日常が送られるようになった、若干違和感は残るけど私の大好きな人は今はお嫁さんとして生きているんだ。


「行ってらっしゃい♪」


 本当に私はこんな完璧な人と婚約して良かったのだろうか?元はお姉ちゃんの親友から始まり、姉妹として関係を築き、気付ばお嫁さんになっているなんて・・・平凡に施設で暮らしていた時はこんな幸せは無いと思っていたのに。


「何だか新婚さんみたいですね?」


 二人の空間にボソリとノアちゃんが言葉を挟むと私達は一気に赤面して互いに後ろを向いてしまった。


「えっ、えっと!行ってきます!!」


「うっ、うん!行ってらっしゃい!!」


 でもやっぱりまだ違和感が勝ってしまう、いつもの日常に戻るのにはもう少し時間が必要なのかもしれない。

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